期限を定めていない契約書の期限・・・

期限を定めていない契約書の期限・・・

契約書には、債務の履行をなすべき最終の期限を記載します。

例えば、「平成**年**月**日までに支払う。」などです。

しかし、当事者の見逃しにより、契約書に履行期を記載するのを忘れる場合があり、その場合には、請求できないと誤解する人がいますが、民法の原則では、債権者が期限を一方的に定めることができるようになっているのです。

(履行期と履行遅滞)
民法第412条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

金銭消費貸借の特則として、相当の期間を定めて返すことを催促し、請求することができることになっています。

(返還の時期)
民法第591条 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
2 借主は、いつでも返還をすることができる。

相当の期間とは、通常の短期の貸借では、1週間から10日間ぐらいと考えられます。

売買、請負、その他双方が債務を負担する双務契約の場合は、それぞれの契約の性質に従って、原則として期限が定まっています。

請負契約では、仕事の目的物を引き渡すときに、代金を支払うことになっていますが、現在では、契約時に3分の1、中間に3分の1、引渡のときに3分の1とされています。

商品売買では、商品の引渡と代金支払は同時履行です。

民法上では期限が定まっていますが、債権者が請求をしなければ、債務者は払わないかもしれません。

その場合には、一定の期間を定めて、催告し、期限を到来させます。

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契約書の紛失やコピーの効力・・・

契約書は、単に法律行為の存在を証明する文書です。

手形や小切手、株券などの有価証券のように、権利行使のためには、その証券そのものの所持を必要とするのとは異なります。

有価証券の場合はコピーでは権利の行使ができませんが、契約書の場合はコピーでも権利の行使が、裁判上のできるのです。

また、こちらの契約書を紛失したとしても、相手方が契約書を所持していることがあり、当事者が2名の契約書の場合、契約書を2通作成し、各1通を所持することが行なわれています。

このような場合は、訴訟の上で、相手方所持の文書の提出を裁判所に申請することができます。

裁判所が、文書提出の申立を理由があると認めて、相手方がこれを拒否すれば、こちらの主張が正しいとされます。

このような文書提出命令を出してもらうまでに、契約が締結されたこと、契約書を相手方が持っていることなどにつき、契約書以外の文書によって明らかにしておく必要があります。

署名又は記名押印のある契約書のコピーが手許にある場合、相手方は、契約の存在を否認することは困難です。

相手方はそのコピーが偽造である等を主張立証しなければならず、契約が事実であるならば、それはほぼ不可能です。

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会社の債務と代表取締役・・・

代表取締役と会社の関係は、代理人と本人の関係に似ており、完全な代理と同一視することはできませんが、委任契約とみられています。

代表取締役が替わっても、契約の効果に何らの影響も生じません。

契約は会社との契約であって、代表取締役個人との間の契約ではないからです。

手続き的には、請求や催告の通知の宛名は、新しい代表取締役宛にしなければなりません。

仮差押、請求訴訟などには、新しい代表取締役の氏名を表示する必要があり、相手の会社の登記簿の記載に基づきます。

個人商店が会社になったような株式会社の場合は、代表取締役が会社の全株式を所有しているため、代表取締役の変更は重要になります。

また、経営不振のために、社長が替わり、実質上の支配者が替わった場合、旧代表取締役のなした取引上の債務を引き継がないと主張する場合がありますが、債務者は会社ですから、代表者の交替を理由に、それまでの債務の支払義務を否定することはできません。

代表取締役が、会社の債務につき個人保証している場合、代表取締役の地位を去ったからといって、連帯保証債務が消滅することはありません。

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会社の社名変更と債権回収・・・

社名変更は勝手にすることはできず、一定の手続きで、定款中の商号を変更する決議をしなければなりません。

社名とは、商法上は商号と呼ばれ、商号は会社設立のときに登記し、変更したときも2週間以内にその登記が必要です。

当然、商号の変更によって会社の実体が変ることはなく、契約の相手方である会社が社名を変更したからといって、契約の効力、債権の効力について変るものではありません。

社名変更は、相手方会社より通知されるものですが、それがない場合、登記所に会社登記簿謄本を請求し、謄本によって確認します。

債権回収の手続きは、この謄本に記載された商号に基づいて請求します。

通称と法律上の商号が違う場合もあり、例えば、キリンビール株式会社の本当の商号は、麒麟麦酒株式会社である場合などもあります。

債権回収の手続きは、登記簿上の商号を記載してします。

また、契約の相手方が社名変更したとしても、登記簿に記載されないものは、効力を生じません。