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挨拶状と債務引受の広告・・・
最判昭和36年10月13日(貸金請求事件)
民集15巻9号2320頁
<事実の概要>
Xは、昭和25年にA社に対し合計130万円を貸し付けた。
ところが、翌昭和26年になって、A社はB社・C社とともに、その営業を廃止し、新たにY株式会社を設立して、旧3会社の営業をY社に譲渡した。
Y社は業務の開始に当たり、旧3会社の取引先に宛て「御挨拶」と題する書面を送付した。
書面は、3会社は小異を捨て大同に就き新たにY社を創立し新社名の下に業務を開始することになった、ついては迅速適確な仕切金送付支払をモットーとして荷主の期待に副うよう努力する旨が記述され、さらに旧3会社の従来の売上実績を数字を挙げて示した後、「以上所信の一端を申し述べましてご挨拶に代える次第であります」と結ばれていた。
Xは、A社のXに対するか資金債務をY社から引き受けている旨を主張し、Y社に返還を請求した。
特に控訴審において、Xは予備的に、たとえAY間で債務引受がなされていなかったとしても、上記の「御挨拶」と題する書面は、Y社がA・B・C3社の業務を継承したことを記載して広告したものであり、前商法28条にいう債務引受の広告に当り、Y社には貸金を弁済する義務がある、と主張した。
第1審ではXが勝訴したが、控訴審では、主位的請求である債務引受の事実は認められず、予備的請求についても次のように指摘され、棄却された。
すなわち、上記書面が取引先に対する単なる挨拶状であり、不特定多数人になされたいわゆる広告ではなく、また挨拶状の中には「新会社に業務を継承した3社の実績云々」の文言があるが、これは旧3会社が整理されて営業を廃止し、新たにY社が設立されて旧3会社と同一の業務を開始する趣旨であって債務引受の趣旨とは解されない、とされた。
Xは上告した。
<判決理由>上告棄却。
「右甲第3号証(Y配布の挨拶状)は、A社、B社およびC社(以下旧3会社という)が営業を廃止し、新たにY社が設立されて旧3会社と同一の中央卸市場における水産物等の卸売業務を開始するという趣旨の取引先に対する単なる挨拶状であって、旧3会社の債務をY社において引き受ける趣旨が含まれていないとする原審の認定判断を正当として是認できる。」
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表見支配人の権限の範囲・・・
最判昭和54年5月1日(小切手金請求事件)
判時931号112頁、金判576号19頁
<事実の概要>
Y信用金庫S支店の支店長であったAは、支店長在職中の昭和43年10月、個人的な負債の返済資金を捻出するため、Yの顧客用の当座小切手用紙を使用して、額面200万円及び350万円の持参人払い式自己宛先日付小切手2通を振り出し、同日これを事情を知っているBに交付した。
Bはこれを貸金業者Xの交付し、Xはこの小切手を担保にBに550万円を貸し付けた。
Xは同年11月、本件小切手をY信用金庫S支店に支払呈示したが、支払を拒絶されたため、小切手金の支払を求めて提訴した。
XはAが表見支配人に当たると主張して小切手金の支払を請求した。
原審(福岡高判昭和52、10、26金判576号22頁)は、Y信用金庫では、支店長に、顧客から予め資金の預入があった場合にのみ自己宛小切手を振り出す権限を付与していたが、Aは何人からも資金の預入がないのに、本件小切手を振り出して、先日付で自己宛小切手を振り出すことはあり得ない、とも指摘した。
このため原審は、たとえAが金融機関の支配人に該当しても、資金の預入がない場合に、しかも先日付で、自己宛小切手を振り出す権限は全くない、として、Xの表見支配人の主張を排斥した。
Xは上告した。
<判決理由>破棄差戻し。
「商法42条1項、38条1項によれば、信用金庫の支店の営業の主任者たることを示すべき名称を附した使用人はその営業に関する行為をする権限を有するものとみなされるところ、右の営業に関する行為は、営業の目的たる行為のほか、営業のため必要な行為を含むものであり、かつ、営業に関する行為にあたるかどうかは、当該行為につき、その行為の性質・種類等を勘案し、客観的・抽象的に観察して決すべきである、と解するのが相当である。(最高裁昭和・・・32年3月5日第三小法廷判決・民集11巻3号395頁参照)
これを本件についてみると、原判決の前記認定によれば、自己宛小切手の振出は信用金庫法53条1項に定める信用金庫の業務に付随する業務としてのYの行なう業務にあたるというのであるから、Aによる本件小切手の振り出しは、これを客観的・抽象的に観察するときは、Yの営業に関する行為であってYのS支店長であったAが有するものとみなされる権限に属するものであるといわなければならない。
前記のように、Aがなんぴとからも資金の預け入れがないにもかかわらず、しかも先日付で、本件小切手を振り出したことは、それが、Yの支店長として職務上遵守すべきを要請されている内部的な禁止事項に違反し又は正当な業務の執行の在り方に反することとなる点において同人に職務上の義務違反を生じさせるものであるとしても、Yの営業に関する行為とみるべきかどうかが前に述べたとおり当該行為を客観的・抽象的に観察して決すべきものである以上、右振出がYの営業に関する行為としてAの権限の範囲内のものであるとすることを妨げるものではないというべきである。
もっとも、原判決は、更に、最初に本件小切手を振り出したものであることを知っていたとの事実をも認定しているのであるが、このようなAの背任的意図についての知情が民法93条但書の類推適用により右Bに対する関係においてYをして本件小切手についての責めを免れさせることがありうること(最高裁昭和44年4月3日第一小法廷判決・民集23巻4号737頁参照)は格別、右知情とAが商法42条1項いよって有するものとみなされる代理権そのものの欠如についての同条2項の定める悪意とは、それぞれ対象とするところを異にする問題である。
そして、以上に説示したところによれば、Yは、Bから本件小切手の交付を受けたXに対する関係では、小切手法22条但書により、XがBの右知情につき悪意の取得者であることを主張立証した場合にはじめて本件小切手上の責任を免れることができることとなる筋合いである。
そうすると、本件小切手の振出行為がYの営業に関する行為にあたるものではなくAの権限を越えた行為であるとした原審の判断は、前記商法の規定の解釈適用を誤ったものであり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。
したがって、論旨は理由があり、原判決中主位的請求(本件小切手金請求)に関する部分は破棄を免れず、更に心理を尽くさせるためこれを原審に差し戻すのが相当である。」
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ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人の代理権の範囲・・・
最判平成2年2月22日(売買代金請求事件)
商事1209号49頁
<事実の概要>
昭和56年11月2日、X株式会社シャツユニフォーム資材部カジュアル課長のAと、Y株式会社物資部繊維課洋装品係長のBとの間で、コール天スラックス等の洋装衣料品を、代金5,000万円余でX社からY社に売り渡す旨の売買契約が締結された。
X社は、同年11月20日及び21日に、Y社B係長の指示に従い、売買契約の履行として約定した商品の大部分を引き渡した。
X社は契約の履行部分として代金約4800万円をY社に請求したが、Y社は、自社のB係長は取引の勧誘及び契約条件の交渉事務を行なうのみであって売買契約を締結する代理権はなく、また、AはBが自己または第三者の利益を計る意思をもっていたを知っていたか容易に知りえた、と主張した。
第1審(東京地判昭和59、12、21判時1154号149頁)は、Bが前商法43条1項に定める手代に該当し、その結果担当職務については裁判外の権限を有しており、Y社がBを係長に任命しながら一切の代理権を制限することは、内部規律上の問題はともかく法の予定しないところであるとした。
また、AにおいてBがY社を代理する意思がないことを用意に知りえた事実もない、とした。
その上で本件は洋装の衣料品の売買契約であり、これがBの担当職務の範囲内なのは明らかであるから、売買契約はXY間で効果を生じるとした。
原審(東京高判昭和60、8、7判夕570号70頁)も第1審の判断に付加して、前43条1項所定の商業使用人に全く代理権を与えないことは許されるとしても、AはY社がBに一切の代理権を付与していなかったことにつき、善意無過失であることを述べ、さらに次のように判時した。
すなわち、前商法43条1項は、営業活動に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた商業使用人と取引する第三者が、その都度その代理権の有無及び範囲について調査確認することを要せず、単に上記の使用人であることを確認するだけで取引できるように、委任を受けた事項に関しては、営業主から現実に代理権を与えられている否かを問わず、客観的にみてその事項の範囲内に属すると認められる一切の裁判外の行為を営業主を代理してなす権限を有するものというためには、単に事実行為の委任を受けていれば足り、法律行為に関する何らかの権限を与えられていることは必要でないとした。
Xは上告した。
上告理由は、原審が前商法43条1項の商業使用人に与える権限が法律行為の代理権である必要はなく、事実行為を含めた何らかの権限であれば足りるとした点について、同条の解釈・適用の誤りであるとするものであった。
<判決理由>上告棄却。
「商法43条1項は、番頭、手代その他営業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、その事項に関し一切の裁判外の行為をなす権限を有すると規定しているところ、右規定の沿革、文言等に照らすと、その趣旨は、反復的・集団的取引であることを特質とする商取引において、番頭、手代等営業主からその営業に関するある種類又は特定の事項(例えば、販売、購入、貸付、出納等)を処理するため選任された者について、取引の都度その代理権限の有無及び範囲を調査確認しなければならないとすると、取引の円滑確実と安全が害されるおそれがあることから、右のような使用人については、客観的にみて受任事項の範囲内に属するものと認められる一切の裁判外の行為をなす権限すなわち包括的代理権を有するものとすることにより、これと取引する第三者が、代理権の有無及び当該行為が代理権の範囲内に属するかどうかを一々調査することなく、安んじて取引を行なうことができるようにするにあるものと解される。
したがって、右条項による代理権限を主張する者は、当該使用人が営業主からその営業に関するある種類又は特定の事項の処理を委任された者であること及び当該行為が客観的にみて右事項の範囲内に属することを主張・立証することを要しないというべきである。
そして、右趣旨に鑑みると、同条2項、38条3項にいう「善意の第三者」には、代理権に加えられた制限を知らなかったことにつき過失のある第三者は含まれるが、重大な過失のある第三者は含まれないとするのが相当である。」
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発起人組合・・・
最判昭和35年12月9日(売掛代金請求事件)
民集14巻13号2994頁
<事実の概要>
Y1ら7名は昭和27年8月10日付で石炭の販売等を目的とするA株式会社の発起人として定款を作成し、設立の準備を始めたが、設立手続は進行せず、昭和28年1月29日い定款の認証がなされた。
その間、Y1らは共同してA社名義で石炭売買をしていたが、昭和27年10月29日、かねて取引関係にあったXから石炭200トンを買い入れる契約を締結し、数日後にその引渡を受けて、これをBに転売した。
XはY1らからこの石炭代金の支払のためにXを受取人とするBに転売した。
XはY1からこの石炭代金の支払のためにXを受取人とするB振出の約束手形を受け取った。
しかし、この約束手形が不渡になったため、Xは、Y1ら7名に対して、石炭代金の支払を求めて本訴を提起した。
第1審ではXは敗訴したが、控訴審ではX勝訴した。
Y1らが上告した。
<判決理由>上告棄却。
「Y1らはA社設立の目的を以て発起人組合を結成したが、右組合本来の目的でない石炭売買の事業を「A株式会社」名義で営み、そのため本件売買取引を行ったものと認定した趣旨と解すべきである。」
「原判決は、本件石炭売買取引の実務にあたったのがY1・Y2・Y3・Y4の4名にすぎないことは当事者間に争いのないところであるが、右売買の法律上の効果は本件組合員たるY1ら7名全員について生じたものと判断した趣旨と解すべきであり、右判断は正当である。
何故ならば、組合契約その他により業務執行組合員が定められている場合は格別、そうでないかぎりは、対外的には組合員の過半数において組合を代理する権限を有するものと解するのが相当であるからである。」
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