株式の共有 共有者による議決権行使の効力・・・

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株式の共有 共有者による議決権行使の効力・・・

最判平成11年12月14日(取締役会決議無効確認、臨時株主総会決議不存在確認等請求事件)
判時1699号156頁、判夕1024号163頁、金判1087号15頁

<事実の概要>

Y株式会社の株主Aの死亡により、その有する株式はXらの共同相続人が相続により準共有するに至ったが、本件株主総会に先立ち、権利行使者の指定及びY社に対する通知はされていない。

本件株主総会には、Xら共同相続人全員が出席したが、Xが本件株式につき議決権の行使に反対しており、議決権の行使について共同相続人間で意思の一致がなかった。

XはY社の本件株主総会の取り消し等を求めて本訴を提起した。

原審は、総会決議を取消した。

Y社は上告した。

<判決理由>上告棄却。

「株式を共有する数人の者が株主総会において議決権を行使するに当たっては、商法203条2項の定めるところにより、右株式につき「株主の権利を行使すべき者一人」(以下「権利行使者」という。)を指定して会社に通知し、この権利行使者において議決権を行使することを要するのであるから、権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠くときには、共有者全員が議決権を共同して行使する場合を除き、会社の側から議決権の行使を認めることは許されないと解するのが相当である。

なお、共有者間において権利行使者を指定するに当たっては、持分の価格に従いその過半数をもってこれを決することができると解すべきであるが(最高裁平成・・・9年1月28日第三小法廷判決・裁判集民事181号83頁)、このことは右説示に反するものではない。

これを本件についてみると、原審が適法に確定したところによれば、(1)亡Aの有していた本件株式は、Xを含む亡Aの共同相続人が相続により準共有するに至ったが、本件株主総会に先立ち、権利行使者の指定及びY社に対する通知はされていない、(2)本件株主総会には、右共同相続人全員が出席したが、Xが本件株式につき議決権の行使に反対しており、議決権の行使について共同相続人間で意思の一致がなかった、というのである。

そうすると、本件株式については、権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠くものであるから、共同相続人全員が共同して議決権の行使を認める意向を示していたとしても、本件株式については適法な議決権の行使がなかったものと解すべきである。

したがって、本件株式について適法な議決権の行使がなく、本件株主総会決議は取消されるべきであるとした原審の判断は、その結論において是認することができる。」

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共有株式の権利行使者の指定方法・・・

最判平成9年1月28日(社員総会決議不存在確認請求事件)
判時1599号139頁、判夕936号212頁、金判1019号20頁

<事実の概要>

AはY1有限会社及びY2有限会社の全持分を有し、また同社の代表取締役であったが、平成元年11月に死亡し、その法定相続人はAの妻子であるX1(法定相続分2分の1)・X2(同5分の1)・X3(同5分の1)と、Aの内縁の妻Bとの間に産まれたC(同10分の1)の計4名であった。

X1らは平成元年10月開催のY1社、Y2社の社員総会決議の不存在確認を求めて提訴した。

第1審は、X1らが相続によりY社の持分を準共有するにいたったとしても、X1らは旧有限会社法22条が準用する前商法203条2項に定める権利行使者の指定及びその通知をCにしていないため原告適格を有しないとして却下し、原審もその判断を維持して控訴を棄却した。

X1らは、別訴でX1とBとの間でAの遺言をめぐる紛争があり、相続人間で権利行使者を指定するための協議をすることは不可能であったとして上告した。

<判決理由>上告棄却。

「有限会社の持分を相続により準共有するに至った共同相続人が、準共有社員としての地位に基づいて社員総会の決議不存在確認の訴えを提起するには、有限会社法22条、商法203条2項により、社員の権利を行使すべき者(以下「権利行使者」という)としての指定を受け、その旨を会社に通知することを要するのであり、この権利行使者の指定及び通知を欠くときは、特段の事情がない限り、右の訴えについて原告適格を有しないというべきである(最高裁平成・・・2年12月4日第3小法廷判決・民集44巻9号1165頁参照)。

そして、この場合に、持分の準共有者間において権利行使者を定めるに当っては、持分の価格に従いその過半数をもってこれを決することができるものと解するのが相当である。

けだし、準共有者の全員が一致しななければ権利行使者を指定することができないとすると、準共有者のうちの一人でも反対すれば全員の社員権の行使が不可能となるのみならず、会社の運営にも支障を来すおそれがあり、会社の事務処理の便宜を考慮して設けられた右規定の趣旨にも反する結果となるからである。

・・・しかしながら、・・・BないしCが協議に応じないとしても、亡Aの相続人間において権利行使者を指定することが不可能ではないし、権利行使者を指定して届け出た場合にY1らがその受理を拒絶したとしても、このことにより会社に対する権利行使は妨げられないというべきであって、そもそも、有限会社法22条、商法203条2項による権利行使者の指定及び通知の手続を履践していない以上、X1らに本件各訴えについて原告適格を認める余地はない。」

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相続による株式の共有 総会決議不存在確認訴訟の原告適格・・・

最判平成2年12月4日(株主総会決議不存在確認請求事件)

<事実の概要>

Y株式会社は旅館業を営む株式会社でその発行済株式総数7000株(本件株式)はすべてAが保有していた。

Aは昭和57年3月24日死亡し、その相続人である妻B、X(長男)、Y社代表者C(二男)、Z(三男・Yへの補助参加人)ほか4名がY社の本件株式を共同相続した。

次いで昭和60年2月23日Bも死亡し、Xほか6名の子が共同相続した。

本件株式については、共同相続人間で遺産分割について協議が調わず、また株式の帰属をめぐってY社代表者として登記されているCとXらとの間で紛争があったため、前商法203条2項所定の権利行使者の指定・通知や名義書換手続は行われていない。

B死亡の翌日である昭和60年2月24日に株主総会が開催され、CDEを取締役に、Zを監査役に選任する旨の決議(本件決議)がなされたとして、同年3月11日に登記がなされた。

Xは、この株主総会が開催されて本件決議がなされた事実は存在しないと主張して、本件決議の不存在確認の訴えを提起した。

Y社は、Xは株式名簿に株主として記載されていない、かりにAの死亡によってXが本件株式を共同相続したとしても、共有持分権者のままで株主としての権利を行使することはできない等と主張して、Xの原告適格を争った。

第1審・第2審とも、Xの原告適格が認められた上で、Xが勝訴した。

Y社は上告した。

<判決理由>上告棄却。

「株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、商法203条2項の定めるところに従い、右株式につき「株主の権利を行使すべき者一人」(以下「権利行使者」という。)を定めて会社に通知し、この権利行使者において株主権を行使することを要するところ(最高裁昭和・・・45年1月22日第一小法廷判決・民集24巻1号1頁参照)、右共同相続人が準共有株主としての地位に基づいて株主総会の決議不存在確認の訴えを提起する場合も、右と理を異にするものではないから、権利行使者としての指定を受けてその旨を会社に通知していないときは、特段の事情がない限り、原告適格を有しないものと解するのが相当である。

しかしながら、株式を準共有する共同相続人間において権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠く場合であっても、右株式が会社の発行済株式の全部に相当し、共同相続人のうちの一人を取締役に選任する旨の株主総会決議がされたとしてその旨登記されている本件のようなときは、前述の特段の事情が存在し、他の共同相続人は、右決議の不存在確認の訴えにつき原告適格を有するものというべきである。

けだし、商法203条2項は、会社と株主との関係において会社の事務処理の便宜を考慮した規定であるところ、本件に見られるような場合には、会社は、本来、右訴訟において、発行済株式の全部を準共有する共同相続人により権利行使者の指定及び会社に対する通知が履践されたことを前提として株主総会の開催及びその総会における決議の成立を主張・立証すべき立場にあり、それにもかかわらず、他方、右手続の欠缺(けんけつ)を主張して、訴えを提起した当該共同相続人の原告適格を争うということは、右株主総会の瑕疵を自認し、また、本案における自己の立場を否定するものにほかならず、右規定の趣旨を同一訴訟手続内で恣意的に使い分けるものとして、訴訟上の防御権を濫用し著しく信義則に反して許されないからである。」

「本件においては、Xが本件決議の不存在確認の訴えを提起しうる特段の事情が存在するものというべきであり、Xの原告適格を肯認した原審の判断は、その結論において是認することができる。」

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授権株式数増加の条件付決議・・・

最判昭和37年3月8日(株主総会決議無効確認請求事件)
民集16巻3号473頁

<事実の概要>

Y社は、発行予定株式総数1600万株、発行済株式総数550万株の株式会社であったが、臨時株主総会において、次の4つの議案を決議した。

①再評価積立金の一部を資本金に組み入れる。

②発行予定株式総数を1600万株から1650万株に変更する。

③発行価額を1株50円として1100万株の新株発行を行い、発行価額中20円は再評価積立金をもって充当するものとする。

発行価額の残額30円については払込金を徴収し、株式1株につき2株の割合で新株を割り当てる。

④発行予定株式総数を1650万株から6000万株に改めるが、この決議は、再評価積立金の一部資本組入れならびにこれに伴う新株発行と同時に効力を生ずるものとする。

株主Xは、②~④の総会決議の無効確認を求めて本件訴えを提起した。

すなわち、②決議は、授権株式の全部が発行済みとならなければ発行予定株式総数を増加することができないから無効である。

また、②決議が無効である以上、その有効性を前提とする③決議も無効である。

そして、決議時の発行済株式総数が550万株であるY社が発行予定株式総数を1650万株から6000万株に増加する④決議は前商法347条に反し無効であり、条件付決議をしたからといって有効となるものではない。

第1審及び原審ともXの請求棄却。

Xは上告した。

<判決理由>上告棄却。

「本件当時の商法280条の2は、・・・会社の定款において定めた会社の発行する株式の総数、授権資本の枠の範囲内においては、取締役会は、経済事情の情勢に応じて適宜新株を発行し、機動的に会社資本を調達することができる旨を定めたものと解するを相当とする。

それ故、未発行株式がなお残っており、従来の資本額に相当する株式の全部が払込済みとなっていなくとも、更に会社が発行する株式総数の枠を拡大しておく必要があるといわなければならない。

また本件当時の商法347条は、会社の発行する株式の総数は、発行済株式の総数の4倍を超えてこれを増加することを得ない旨を規定しているが、右は、会社の発行する株式の総数の限度を発行済株式の総数の4倍以下とすることを定めたものであり、従前からの会社が発行する株式の総数の枠を拡大することができない旨の制限を規定したものとは認められないことは、前記商法280条の2の法意と対照しても、明らかである。

されば、会社が発行する株式総数中に未発行部分がある場合でも、株式総数を増加する旨の定款変更は、それが発行済株式総数の4倍を超えないものである限り、なしうるものと解するを正当と」する。

「本件当時の商法347条は、会社の発行する株式の総数は、発行済株式の総数の4倍を超えて、これを増加することを得ない旨を定めているが、それは、会社の発行する株式の総数の増加が、発行済株式の総数の4倍を限度とするという趣旨であって、右株式の総数増加についての株主総会の決議当時において発行済となっている株式の総数を基準とするものではなく、右株式の総数の増加の時において発行済となっている株式の総数を基準とするものと解するを相当とする。

また、株主総会の決議の効力の発生を条件または期限にかからしめることは、法律の規定、趣旨または条理に反しない限り、原則として許されると解すべきものであって、株式の総数の増加を定める株主総会の決議の効力が、右総数増加の基準とされた発行済株式の総数が現実に発行済となったときに発生するものとされた場合において、株主総会の決議の効力の発生を右のような条件にかからせることは、前記商法347条の規定、趣旨または条理に反する点で何ら認められない。」

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