領収書の不正利用・・・
領収書を不正に利用して、個人の支出を企業の経費として計上する場合として、次のような場合があります。
①取引先の接待交際費として計上されていた飲食代が、実は個人的な支出に関するものだった。
②社員の取引先への出張交通費として計上された支出が、実は個人的な旅行に使われたものだった。
経費として使われたように見せかけて領収書を利用して経費を水増しし、脱税をしようとする例です。
領収書の流用などが違法であることは当然で、また会社の信用も落ちてしまいます。
交際費の損金算入限度額は法人税法で規制されており、会社の資本金に応じて差があります。
資本金が1億円以下の企業の場合には、1年間の交際費の支出額を上限400万円として、その90%が損金に算入されます。
10%が損金不算入となり、その分は利益とみなされます。
資本金が1億円以上ある企業の場合には、交際費の損金算入はありません。
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領収書の私文書偽造・・・
私文書偽造罪は、他人の権利・義務又は事実証明に関する文書を偽造、変造したものを罰するとしています。
(私文書偽造等)
民法第159条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前2項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
領収書は「事実証明に関する文書」に該当しますので私文書に当たります。
領収書を偽造・変造した者は、私文書偽造罪になり、罰せられます。
例えば、領収書の金額や宛名、日付などを書き換えたり、空白の領収書を受け取って虚偽の内容を記載したりすれば、私文書偽造罪に問われます。
また、領収書を偽造、変造して行使し、支払を受けた者は、偽造私文書行使罪や詐欺罪に問われます。
(偽造私文書等行使)
刑法第161条 前2条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
偽造私文書行使罪は偽造・変造された私文書を行使した者を罰するとしています。
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領収書で詐欺罪・・・
詐欺罪は嘘をついて人を欺き、金品などの財物を受け取る犯罪で、法定刑は10年以下の懲役です。
また、未遂の場合も罪となりますので罰せられます。
(詐欺)
刑法第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
偽造の領収書を用いて、代金の支払を受け、経費として請求し、金銭を受けたりすれば詐欺罪となり、罰せられます。
例えば、本来より多い金額を領収書に記載してお金を受け取ることも詐欺罪になります。
私的な買い物や飲食をして接待交際費などとして経理に提出して金銭を得たりすることも詐欺罪です。
白紙の領収書をもらって虚偽の金額を記載して実際より多くの金銭を取得することも詐欺にあたります。
領収書を用いた詐欺行為は罪の意識を感じることなく、簡単に行えますが、法的にみれば重い罪なのです。
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領収書と背任罪と業務上横領罪・・・
領収書による不正は、背任罪や業務上横領罪に問われることがあります。
(背任)
民法第247条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(業務上横領)
民法第253条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
ありもしない接待の領収書を会社の経理に提出するだけで、架空の接待費として、金銭を受け取ることができてしまいます。
例えば、社員が個人の買い物、飲食などで支払った領収書を接待費として会社に請求し、金銭を受け取ったとすれば、詐欺罪又は背任罪に問われることになります。
経理担当者などが、架空の接待費であることを知ったうえで経費を支出した場合、業務上横領罪に問われることもあります。
法定刑は、背任罪の場合、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金、業務上横領罪の場合、10年以下の懲役です。