債権債務の履行場所・・・

債権債務の履行場所・・・

債務の履行場所も定めておく必要があります。

金銭の支払では「乙は甲に対して債務元本金**円をその時までに発生した利息と共に平成**年**月**日までに持参又は送金して支払う」というように規定します。

債権者が債務者の住所に行って集金する場合は取立債務になります。

持参払いであることが契約書上明記してあれば、債権者は債務者の持参又は送金を待つことになります。

取立債務のときは、債務者はお金を用意して待つことになります。

履行期が過ぎても債権者が取りにこなかったり、あるいは手形の満期に債権者が取立に回さなければ、債務者は不履行の責任を負わないことになります。

金銭ならば送金手段が発達していますが、物の引渡しが債権の場合には、引渡し場所は重要になります。

美術品などの貴重品では運賃保険料等の諸経費の負担などもかかります。

運賃などの費用は、原則として債務者の負担となっていますが、この場合も、引渡し場所を債権者の住所地か、債務者の住所地かなどをはっきりする必要があります。

履行の場所は、裁判管轄にも影響します。

裁判管轄とは、裁判を起す場合に、どこの裁判所に起さなければならないかということで、原則としては、被告の住所地の管轄の裁判所に起さなければなりません。

しかし、契約書に債務の履行場所を債権者の住所地としておけば、債権者の住所の管轄の裁判所に起すことができるのです。

契約書に履行の場所を定めなかったときは、法律に定めるところによって履行することになります。

①金銭の支払や、米、砂糖など数量で指定した代替物は、債権者の住所地に持参して履行します。

②特定物である美術品やこれと指定された機械等の引渡債務は、契約を締結したときにその物が存在した場所になります。

(弁済の場所)
民法第484条 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。

スポンサードリンク

登記引渡の履行の定め方・・・

不動産の売買の場合、売主と買主がお互いに意思表示をしただけで契約は成立し、その上契約書を作成し、当事者はこれだけでわかりますが、第三者に対してはこれが本当なのかわかりません。

例えば、土地を買ったような場合、所有権を取得したことを主張できなければ第三者は納得できません。

これを対抗要件といいます。

不動産についての契約の場合は、物件が目的となっているときは必ずいつまでに登記するのかを条項に盛り込む必要があります。

抵当権などはその不動産を占有することなく、その価値だけを把握する権利ですから、もしも登記がなければ、契約の当事者以外の第三者にはその存在がわかりません。

不動産について権利を取得したと主張する第三者に対して、自分の権利を主張するには、登記が必要なのです。

不動産の売買では、残代金と所有権移転登記申請が引換であることを規定した契約条項が必要なのです。

ただし、不動産の賃借権は登記を必要とせず、建物の賃貸借では引渡があればよく、土地の賃貸借ではその地上建物の登記があればよいことになっています。

機械などの譲渡担保契約で、債務者所有の物について債権者が所有権を取得し、改めて債務者に貸与する場合にも、対抗要件として引渡が必要です。

動産についての物件の変動には引渡が対抗要件となっており、譲渡担保の場合は占有改定という手続がとられます。

動産の質権では、動産を債権者が占有することが契約の成立要件となっています。

また、金銭消費貸借契約では、金銭を現実に借主に渡すことが成立要件になっており、これは対抗要件とは違います。

契約書上でお金を貸す契約をし、契約書に記載があっても、お金を渡していない以上は契約は成立しないのです。

スポンサードリンク

元本と利息の履行の定め方・・・

金銭消費貸借契約でなくても、金銭債権は発生し、売買なら代金、賃貸なら賃料、損害賠償債権も金銭の請求権があります。

金銭債権ですと、元本と利息を区別して、それぞれ金額をはっきりさせ、しかもそれぞれ履行期をはっきり契約書に記載することが必要です。

「借主は貸主に対して年**%の割合による利息を付して支払うものとし、毎月末日限りその月分を貸主に持参又は送金して支払う」と明確に定めます。

利息は既に発生した分を支払うのが原則ですから、後払いが原則です。

前払いにする場合には、契約の条文に明記しなければなりません。

「利息は年**%の割合にて、半年分を一括して前払いとし、貸付時はこれを元本より天引し、以後半年分をそれぞれ平成**年**月**日及び平成**年**月**日までに貸主に持参して支払う」と規定します。

利息を元本に組み入れる場合には、重利の規定も必要で「借主が利息の支払期に履行をしないときは、貸主は何らの通知を要せず、これを元本に組み入れることができる」など規定します。

また、債務者が1年分以上利息の支払を延滞したこと、これについて債権者が延滞利息の支払を催告し、それでも債務者が支払わないことが、元本に組み入れることの条件となっています。

(利息の元本への組入れ)
民法第405条 利息の支払が1年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。

利息の定めをしない場合は法定利息となり、2020年4月1日から3年間は民法の法定利率は3%となります。

最高限度は利息制限法によって定められており、これ以上の利率の金利は訴訟上請求しても認められません。

スポンサードリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする