未成熟の子がある有責配偶者の離婚請求・・・

未成熟の子がある有責配偶者の離婚請求・・・

離婚の事案

夫妻には、4人の子がある。

夫は、会社の経営に行き詰まり、家出をして行方をくらました。

そして、夫は、他の女性と知り合い、同棲を始めた。

夫に対して婚姻費用として毎月17万円等の支払を命ずる審判がされ、その後夫は、妻に対して毎月15万円等を送金している。

夫は妻に対して民法770条1項5号に基づき本件離婚請求訴訟を提起した。

離婚の判例

①一審は、未成熟子があり、別居後の夫の婚姻費用の分担も十分でなく、離婚に際しての夫の給付の申出も十分なものではないとして、夫の離婚請求を棄却した。

②控訴審は以下のように述べて夫の離婚請求を認容した。

現在、夫は56歳、妻は54歳であり、双方の婚姻による同居期間が15年であったのに対し、別居期間はすでに14年に及んでいること、4人の子のうち3人まではすでに成人に達し、長女は既に婚姻するなど独立しており、残る三男も未成年であるとはいえ、まもなく高校を卒業する年齢にまで達していること、昭和63年9月以降は、婚姻費用分担の審判の結果とはいえ、夫から妻に対し毎月15万円の生活費が継続して送られていることに加え、離婚に伴う給付として、夫から具体的で相応を誠意ある提案がなされていて、妻が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれるとまでは言い難いこと、夫の所在が判明した後の妻の対応は、離婚にはあくまで応じないとしながらも、夫やその同棲相手に対し執拗に威迫的な電話を掛けたり葉書を送ったりし、直接には夫婦間のいさかいに無関係な同棲相手や両親や前夫にまで害意のある電話をかけるなどして、夫の嫌悪感情を増幅するような言動を取り続け、婚姻関係の回復を真摯に願っているとは受け取れない面のあること等の事情に照らすと、別居期間の経過に伴い、当事者双方についての諸事情が変容し、社会的意味ないし評価も変化したと認められるから、有責配偶者である夫からの本件離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するとまではいえず、本件離婚の請求が信義誠実の原則に反して許されないということはできない。

③上告審も、以下のように述べて、上告を棄却して原判決を維持した。

有責配偶者からされた離婚請求で、その間に未成熟の子がいる場合でも、ただその一事をもって右請求を排斥すべきものではなく、前記の事情を総合的に考慮して右請求が信義誠実の原則に反するといえないときには、右請求を認容することができると解するのが相当である。

妻が今日まで受けた精神的苦痛、子らの養育に尽くした労力と負担、今後離婚により被る精神的苦痛及び経済的不利益の大きいことは想像に難くないが、これらの補償は別途解決されるべきであって、それがゆえに、本件離婚請求を容認し得ないものということはできない。

そして、現在では、妻と夫間の4人の子のうち3人は成人して独立しており、残る三男は親の扶養を受ける高校2年生であって未成熟の子というべきであるが、同人は3歳の幼少時から一貫して妻の監護の下で育てられまもなく高校を卒業する年齢に達しており、夫は妻に毎月15万円の送金をしてきた実績に照らして三男の養育にも無関心であったものではなく、夫の妻に対する離婚に伴う経済的給付もその実現を期待できるものとみられることからすると、未成熟子である三男の存在が本件請求の妨げになるということもできない。

(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

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夫の定年後の妻の離婚請求・・・

離婚の事案

夫は、仕事熱心で、家庭内では無口であった。

妻は、専業主婦で、病気がちで、胃がんの手術を受け、その後体力が低下したこともあり、家事を十分にしなくなった。

長男は結婚して独立し、妻と夫は別の部屋で就寝し、食事も別に取るようになった。

夫は、定年退職し、年金生活に入った。

妻は左股関節臼蓋手術をして退院したが、その頃から妻は夫と会話をしなくなり、妻は2階で、夫は1階で別々に生活するようになった。

妻は、離婚調停申立てをなし、長女とともに自宅を出て、以後長女とともにアパートで生活している。

妻は夫に対して、民法770条1項5号に基づき離婚を求め、離婚慰謝料1000万円、財産分与として6201万円もしくは2922万円及び妻の死亡時まで毎月21万円、財産分与として自宅土地建物の夫の持分2分の1の分与とその移転登記、自宅建物からの退去及び明け渡しを請求した。

離婚の判例

①一審は、7年の家庭内別居、妻が自宅を出て別居してから2年近くが経過しており、婚姻を継続し難い事情があるとして、妻の離婚請求を認容した。

そして、離婚慰謝料として200万円、清算的財産分与として、夫の財産のうち5分の2相当にあたる自宅土地建物の夫持分の各2分の1及び1694万円の分与、扶養的財産分与として、今後夫が受領する年金の妻受領額との差額4割相当額として、妻死亡時まで毎月16万円の支払、を命じた。

②控訴審は、以下のように述べて、一審判決を取消し、妻の離婚請求を棄却した。

妻と夫の長年にわたる婚姻生活にかかる前記の事情を見ても、夫には、妻の立場を思いやるという心遣いに欠ける面があったことは否定できないものの、格別に婚姻関係を破綻させるような行為があったわけではない。

妻と夫は現在別居状態にあるものの、これも妻が長女とともに自宅を出たために生じたものであり、妻が一方的に夫との同居生活を拒否しているというべきでものである。

なるほど、妻と夫は、平成9年10月11日以降、別居状態にあり、夫と長女の確執もあって、このまま推移すると、妻と夫の婚姻関係が破綻に至る可能性がないではない。

しかし、夫は、妻と夫の年齢や妻の身体的条件等をも考慮すると、離婚という道はさけるべきであるとして、妻との婚姻関係の継続を強く望んでいる。

また、長男も、前記のとおり、妻と夫の婚姻関係の継続を望んでいる。

そして、長女と夫の間には確執があって、長女の意向が妻の意向に強く関わっていることが窺われるが、長女に今後自立した人生を歩ませるという観点からも現状は好ましいものではない。

右のような諸事情を総合考慮すると、妻と夫は平成9年10月以降別居状態にあり、妻の離婚の意向が強いことを考慮しても、現段階で、妻と夫の婚姻関係が完全に破綻しているとまで認めるのは相当でないというべきである。

(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

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別居6年の有責配偶者の離婚請求・・・

離婚の事案

夫は会社員で、妻は外国人相手の日本語学校の教師をしている。

外国人男性の妻から、妻とその外国人男性が交際しているので、夫に指導・監督して欲しいと言われたこと等があり、夫は妻が外国人男性と親密な関係にあるのではないかと疑念を抱くようになった。

夫は、他の女性と親密な関係になり、家を出て妻と別居し、そこに女性が訪ねてくる生活になったが、週に1回は自宅に帰っていた。

夫は、女性と同棲し、自宅へも帰らなくなった。

夫は離婚を求める調停を申立てが、不成立となった。

夫は妻に対して民法770条1項5号に基づき本件離婚請求訴訟を提起した。

離婚の判例

①一審は、夫と妻の婚姻はもはや修復が困難であるとまでは認められないから、破綻状態にあると評価することはできないとして、夫の離婚請求を棄却した。

②控訴審は以下のように述べて、一審判決を取消し、夫の離婚請求を認めた。

夫と妻とは、もともと会話の少ない意思の疎通が不十分な夫婦であったところ、妻と外国人男性との不倫疑惑で夫婦の溝が大きく広がり、更に夫が女性と婚姻外の男女関係を続けた中で互いに夫婦としての愛情を喪失して別居に至ったのもので、別居後既に6年を越えているところ、その間夫婦関係の改善は全く見られなず夫の離婚意思は極めて強固であることが明らかであって、夫と妻の婚姻関係は完全に破綻し、今後話し合い等によってこれを修復していくことは期待できないものと認められる。

夫は有責配偶者であると認められるが、別居期間は平成8年3月から既に6年以上経過しているところ、夫らは夫婦はもともと会話の少ない意思の疎通が不十分な夫婦であって、別居前も妻と外国人男性との交遊に夫の側からみて前記のような疑念を抱かせるものがあり、そのころから夫婦間の溝が大きく広がっていたこと、二子とも成人して大学を卒業しているなど夫婦間に未成熟子がいないこと、妻は日本語学校に勤務してい相当の収入を得ているところ、夫は離婚に伴う給付として妻に現在同人が居住している自宅建物を分与し同建物について残っているローンも完済するまで支払い続けるとの意向を表明していることなどの事情に鑑みると、その請求が信義誠実の原則に反するとはいえない。

(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

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