再婚相手と養子縁組した場合の養育費・・・

再婚相手と養子縁組した場合の養育費・・・

離婚の事案

妻と夫は、長男の親権者を妻と定めて協議離婚をした。

離婚に際し、長男の養育費として、夫が妻に月4万円を支払うことが約束された。

夫は、妻の要請により、離婚直前に自宅のリフォーム代に充てる趣旨で金融機関から300万円を借り入れたが、そのうち60万円がリフォーム代に充てられたのみで、残金240万円は妻が離婚時に夫に無断で転居資金として持ち出した。

夫は、未成年者との面接交渉を妻から拒否されたとして養育費の支払をしなくなった。

妻は、他の男性と再婚し、同日長男と養子縁組をし、夫も、他の女性と再婚した。

妻は、夫に対して、長男の養育費として、月4万円の支払を求める本件審判を申し立てた。

離婚の判例

裁判所は、以下のように述べて、妻の申立を却下した。

養子制度の本質からすれば、未成熟の養子に対する養親の扶養義務は親権者でない実親のそれに優先すると解すべきであるから、妻の分担額を決めるに当たっては、養父の収入・支出等も考慮することとする。

住宅ローンについては、平成10年の再婚後に新築したもので、妻は同ローンが家計に及ぼす影響を十分理解しながら、養父の収入でこれを返済することが可能であるとの自己判断に基づき負担したものと言うべきであるから、これを特別経費として計上することは相当ではないと考える。

妻らは、住宅ローンがなければ未成年者に対し十分な扶養義務を履行できる状況にあるものと認められる。

そして、既述のとおり、住宅ローンは平成10年の再婚後に組んだもので、妻はこれが家計に及ぼす影響を十分理解しながら、養父の収入をもってすれば返済可能であるとの自己判断に基づき負担したものであって、その後の経済情勢の変化、養父の減収等によって見込が外れたからといって、これを夫の負担に転嫁するのは相当でない。

とすれば、夫は養親及び親権者である妻らに劣後する扶養義務を負担するにすぎない以上、夫には現時点で具体的な養育費の負担義務は発生していないと言わざるを得ない。

スポンサードリンク

成人の子からの養育費請求・・・

離婚の事案

妻と夫は、婚姻し、長女、二女が生まれた。

妻と夫は、親権者を妻と定める判決により離婚した。

その後、妻は、夫に対して、2人の子供の養育費の支払いを求める調停申立をなし、夫は妻に対して、長女の養育費として月額7万円、二女についても18歳まで月額6万6000円を支払うとの調停が成立し、夫はその支払を行なった。

長女は、私立大学に入学した。

そこで、妻は、夫に対して、大学の授業料及び生活費等の養育費の支払を求める審判の申立をなし、夫に、大学進学費用のうち104万円、未払い養育費合計33万6000円の一括払い並びに月額4万2000円の支払を命じる審判が下された。

長女は、成人となり、大学に通学している。

長女は、夫に対して、扶養料として、大学卒業まで月額9万円の支払と、大学授業料の一部の支払を求める本件審判の申立をした。

離婚の判例

①原審判は、以下のように述べて、長女の申立を却下した。

親の子に対する扶養は、原則として未成年者である間、その子の養育費を負担し、病気、身体精神等の障害により自活能力がない場合などの特段の事情がない限り、親は成人後の子の扶養料は負担しないものと解する。

長女は、健康体の成人であって、その知的能力は問題がなく、身体的にも何ら障害も認められない。

してみると、長女の潜在的稼動能力は十分というべきであるとして、長女が要扶養状態にあるとはいえないとした。

②抗告審は、以下のように述べて、原審判を取消し、差し戻した。

4年制大学の進学率が相当高い割合に達しており、かつ、大学における高等教育を受けたか否かが就職の類型的な差異につながっている現状においては、子が義務教育に続き高等学校、そして引き続いて4年生の大学に進学している場合、20歳に達した後も当該大学の学業を続けるため、その生活時間を優先的に勉学に充てることは必要であり、その結果、その学費・生活費に不足を生ずることがあり得るのはやむを得ないことというべきである。

このような不足が現実に生じた場合、当該子が、卒業をすべき年齢時まで、その不足する学費・生活費をどうように調達すべきかについては、その不足する額、不足するに至った経緯、受けることができる奨学金の種類、その金額、支給の時期、方法等、いわゆるアルバイトによる収入の有無、見込み、その金額等、奨学団体以外からその学費の貸与を受ける可能性の有無、親の資力、親の当該子の4年制大学進学に関する意向その他当該子の学業継続に関連する諸般の事情を考慮した上で、その調達の方法ひいては親から扶養の要否を論ずるべきものであって、その子が成人に達し、かつ、健康であることの一事をもって直ちに、その子が要扶養状態にないと断定することは相当でない。

スポンサードリンク

養育費の算定方法・・・

離婚の事案

妻と夫は、挙式し同居したが、別居し、婚姻届をしなまま、その後に長男が生まれた。

妻は、長男を監護養育している。

妻は、夫に対して、長男の認知を求める訴訟を提起し、認知を求める判決が下され確定した。

妻は、夫に対して、月額6万円の養育費の支払を求める本件審判申立をした。

離婚の判例

①原審判は、以下のように述べて、平成13年9月以降、月2万5000円の養育費の支払を命じた。

本件において夫の養育費分担額を算定するに際し、客観的な数額で比較的信頼性が高いといえるものは、妻及び夫の総所得額、公租公課、未成年者の保育園保育料、児童手当及び児童福祉手当てなどである。

したがって、これらの数額を基礎にし、家庭裁判所調査官による試算の結果を参酌し、とくに未成年者の出産や安否、未成年者の性別や命名、発育状態、父子対面の機会などについて、相互間で速やかな連絡が図られたことはないままであること、夫と未成年者との間に父子といえる生活関係が成立していないこと、その他の諸般の事情を考慮し、夫の具体的な養育費分担額を定めるのが相当である。

そして、その分担額としては、平成13年9月1日から未成年者が成年に達するまで毎月末日限り月額2万5000円の割合による金員の支払い義務を負わせるものとするが、最も相当である。

②抗告審は、以下のように述べて、原審判を一部取消し、月2万円の養育費の支払を命じた。

夫は、妻に対し、夫が***に勤務することとなった翌月の平成13年9月1日以降の養育費の分担額を支払うべきである。

そして、関係法規の規定等から導かれた公租公課の収入に対する標準的な割合及び統計資料に基づき推計された費用の収入に対する標準的な割合から算定される夫及び妻の各基礎収入並びに生活保護の基準及び統計資料に基づき推計された子の生活費の割合を基に、夫が平成15年3月31日限り***との間の雇用契約の終了により無職となっていること、夫及び妻の現在の収入及びその今後の見通し、両者間の損害賠償を巡る争いの状況等を加味して考慮すれば、上記の分担額は、平成13年9月1日から平成15年3月分までは1ヶ月2万5000円、同年4月以降は1ヶ月2万円とするのが相当である。

また、抗告審は、妻が支給されている1ヶ月1万8500円の児童手当及び児童育成手当てについては、公的扶助の補充性からして養育費の分担額の算定の決定に当たりこれを妻の基礎収入に加えることは相当ではないと述べた。

スポンサードリンク