公正証書で強制執行する・・・
公正証書とは、公証人が作成した文書をいいます。
公正証書のうち一定のものは債務名義となります。
これを執行証書といい、次の一定の要件を満たすものです。
①金銭の一定の額の支払い、その他の代替物または有価証券の一定の数量給付を目的とする請求のもの。
②債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述(執行認諾約款)が記載されているもの。
③公証人が作成した正規の形式で作成した公正証書であること。
貸金のように債権は確定して単に弁済期を待つ場合は、金銭の一定の額が明確になっているので、これについて強制執行認諾約款付公正証書を作成すれば執行証書になります。
売掛金についても、すでに一定の債権が発生している場合は、執行証書として公正証書の作成ができます。
ただし、利息制限法違反の利息では公正証書を作成する事はできません。
民事執行法26条(執行文の付与)
一 執行文は、申立により、執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判官書記官が、執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与する。
二 執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に、その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う。
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公正証書と強制競売申立書とは・・・
金銭貸借などで執行認諾文言のある公正証書は、債務名義となり強制執行ができます。
執行文は公正証書を作成した公証人役場で付与してもらうことができます。
強制執行の対象となるのが、不動産や債権のときは裁判所、動産のときは執行官が執行機関となりますので、それぞれに申立をすることになります。
強制執行を行うには、債務名義を強制執行の開始と同時に、またはあらかじめ債務者に送達しておかなければなりません。
執行証書である公正証書は、公証人か執行官に頼んで送達してもらいます。
添付書類は、次のものになります。
①執行力のある公正証書の正本
②同謄本送達証明書
③不動産登記簿謄本
④公課証明書
⑤資格証明書
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動産の強制執行とは・・・
動産の執行申立は執行官に対してします。
執行官は地方裁判所に属しており、執行や書面の送達などの実施を取り扱います。
執行の申立をするには、判決その他の債務名義の正本に執行文の付与されたもの、これを「執行力ある正本」といい、これが必要になります。
執行官室には、執行申立の用紙が備え付けられていますから、所定の事項を書き込んで印で押し、申立料と、執行費用の予納分を支払います。
これで申立は終わるのですが、手続はそれで終わるのではありません。
動産の執行は動産のある現場でするので、差押さえに行くための打ち合わせをする必要があります。
何時にどこで落ち合うかを取り決め、その時間に行って執行官を案内します。
債務者所有の動産であっても、債務者や家庭の生活に欠くことのできない最低限度の衣服、寝具、家具やその他、一定の差押さえできないものもありますが、原則として、債務者の所有する動産は全部差し押さえる事ができます。
現金を差し押さえたときは直接支払いを受けられますが、現金以外のものであれば換価するため競売をすることになります。
差押さえから日を置いて競売の期日が決まります。
その間に一部支払いや話し合いがあれば、強制執行の申立を取り下げてもよいし、債権者が申し立てれば、競売は延期できます。
支払いもなく取下げや延期もなければ競売は期日に実行されます。
競売が終われば、その代金の中から債権者への支払いがなされます。
債権者が複数で競売代金では全額を支払えない場合には、まず債権者間の協議、協議が調わないときは裁判所が債権額に応じて按分します。
これを配当手続きといいます。
配当手続に当たっては、裁判所の命令どおり請求額の計算書を差し出し、また指定された日に出頭します。
執行官は債務者の所有する動産に対して、封印もしくは差押さえの表示をします。
債務者がこれをはがしたり、差し押さえられた品物を勝手に持ち出して売却したりすれば封印破棄罪となり、2年以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられます。
債権者がこれを発見した場合には、所轄警察に告発することができます。
民事執行規則99条(申立書の記載事項)
動産執行の申立書には、第21条の各号に掲げる事項のほか、差し押さえるべき動産が所在する場所を記載しなければならない。
民事執行規則100条(差し押さえるべき動産の選択)
執行官は、差し押さえるべき動産の選択に当たっては、債権者の利益を害しない限り、債務者の利益を考慮しなければならない。
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