認知した子の父の氏への変更許可・・・

認知した子の父の氏への変更許可・・・

夫には、妻との間に2人子供が生まれたが、ある女性と知り合い情交関係を結んでからは、妻子と別居し、女性と同棲するようになりました。

夫は、離婚調停を申し立てたが、婚姻費用の分担についてだけ調停が成立し、未だ離婚はされていません。

夫と女性の間には、長女と長男が生まれ、夫はいずれの子についても認知の届出をし、長女については家庭裁判所の許可を得て氏の変更を行い、夫の氏を称するようになっていました。

夫は、長男の氏についても、夫と氏を異にするため共同生活において不便であること、とりわけ保育園入園に伴う不都合及び長女が夫の氏への変更を許可されて、これを称していることから生ずる混乱を申立ての理由にして、家庭裁判所に長男の氏の変更を求める申立てをしました。

右申立てに対し、家庭裁判所は、本妻の被る感情ないし社会生活上の不利益を優先させる判断を示して、申立てを却下する審判を下したので、夫はこれを不服として高等裁判所に抗告しました。

抗告審も、認知された非嫡出子の氏を父の氏に変更することの許可を判断するにあたっては、当該子の福祉、利益を考慮すべきことはいうまでもないが、他方、氏ないし戸籍に関する一般の意識、国民感情に照らし、許可がなされることにより戸籍を同じくするに至る父の妻、嫡出子らの利害、意見等も無視することはできず、これらを斟酌すべきものと解するのが相当であると判示して、氏の変更の許可を認めない第一審を支持して、抗告を棄却しました。

裁判例としては、次に分かれています。

①本妻らの反対を特に考慮することを要しないとするもの

②本妻らの意思に反する氏の変更は許されないとするもの

③子の福祉と本妻側の利害を比較考慮のうえ前者を優先させるもの

④後者を優先させるもの

本件高等裁判所は、満2歳を過ぎたばかりの長男の氏を夫の氏に変更することが長男の福祉、利益のために現在差し迫って必要であるとはにわかに認め難いとし、本妻や子供たちの心労と氏変更に対する反対は無理からぬものとしたうえで、本妻側の利害を優先させたもので④の立場をとっています。

しかし、何故、長女の氏の変更が許可されたのでしょうか??

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子の名の変更許可・・・

名は親がつけるものですから、生まれた本人は知らないところです。

一度名をつけられると一生その名で社会生活をしなければなりません。

しかし、非難されるような名でも一生背負っていかなければならないとすると、何の責任もない子が酷です。

そこで、戸籍法107条の2では、正当な事由があれば家庭裁判所の許可を得て戸籍上の名を変更することができます。

戸籍法第107条の2 正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

どのような事由が正当事由にあたるかというと、家業の承継者が代々同一の名を襲名してきた場合とか、異性とまぎらわしい場合などがこれに当たるとされ、、例に挙げられています。

このような場合だけでなく、長年通称名を使用してきて、戸籍上の名よりも通称名のほうがその人の名として社会的に認識されている場合も変更することができるとされています。

通称名を使い出したからといって、直ちに変更が認められるわけではありません。

それなりの使用期間が必要とされ、名の変更の場合には一般に10年程度通称を使用していることが必要であるといわれています。

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養子縁組の離縁で遺贈が撤回・・・

Aさんは、子供がなく妻と2人で暮らしてきましたが、妻に先立たれ、先祖代々の墓を守ることに不安を持っていました。

そこで、親類筋の夫婦が養子になっても良いとのことでしたので、Aさんと夫と妻との間で養子縁組をすることとなり、その際、Aさんは、夫婦との間に、Aさん累代の墓守をすること、Aさん死亡後の遺産は、夫が所有するなどを内容とする契約を締結し、Aさんと夫婦が養子縁組をした旨を届出しました。

夫婦は、Aさんの家に入り同居しましたが、酒好きであったAさんと、酒癖のことから喧嘩になること多くなりました。

養子縁組の届出をしてから2年ほど経って、Aさんは、夫に対して、Aさんの財産の全部を包括遺贈するという公正証書遺言を作りました。

しかし、1年ほどたってから、Aさんと夫婦の仲は悪くなり、協議離縁をしてしまいました。

その後、半年ほどして、Aさんは亡くなりました。

協議離縁をしてしまったので、Aさんと夫は他人です。

しかし、それとは別に夫に全財産を遺贈する旨の公正証書遺言があり、これが有効かどうかが問題になります。

民法1023条では、一定の事実が存在する場合には、遺言の撤回があったものと規定しています。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
民法第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

遺言と生前行為とが抵触する場合に、撤回が擬制されることになっています。

前の遺言が法律上又は物理的に全く執行不能となった場合とか、後の行為が前の遺言と両立させない趣旨でなされたことが明白であればよいとされます。

Aさんの場合、Aさんの遺贈は夫婦がAさんの累代の墓守をすることから事が始まっていることを重視すべきであり、養子関係が解消されてしまったことは、「抵触行為」に当たると考えられます。

Aさんのなした全財産を夫の所有とする公正証書遺言は、これより先に、Aさんの養子になることが条件となって、全財産を夫に贈ることが契約されているだから、この段階では、遺贈ではなく、死因贈与と考えられます。

公正証書による遺言の形をとっているが、それは、死因贈与を公正証書によって遺贈の形にしたまでのことと考えられる。

Aさんの真意は、夫と養子縁組は、遺贈の前提として動かし難いもので、両者の関係は、別々には考えられない不即不離の関係にたっていることになります。

そうだとすると、協議離縁は、この公正証書による遺贈行為と両立させない趣旨でなされたものと考えるのが条理にかなっています。

したがって、この遺言は、民法1023条によって撤回されたものということになるのです。

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