有責配偶者からの離婚請求の要件・・・

有責配偶者からの離婚請求の要件・・・

最高裁判所は、長い間、有責配偶者のである結婚の破綻に責任のある者から、民法770条1項5号の「婚姻を継続しがたい重大な事由」と理由として、責任のない者に対して離婚を請求することを認めないとしていました。

(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

しかし、現在では、20年、30年という長期間別居して、婚姻生活が破綻しているような場合には、有責配偶者からの離婚も認められるようになりました。

判例は、有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟子の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないとしました。

その後の最高裁判所判決は、だいたい10年以上の別居の場合には、特段の事情がない限り離婚を認めています。

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離婚による夫婦関係の変化・・・

離婚は夫婦の関係を消滅させますから、夫婦は互いに自由となり、再婚の自由を持つことになります。

相手との親族との間に発生した姻族関係もなくなります。

近親婚の禁止のなかの直系姻族間の結婚の禁止だけは、姻族関係がなくなっても続きます。

女性の場合は、6ヶ月の再婚禁止期間の制限があります。

夫婦の氏については、結婚の際に配偶者の氏を称した人は、元の氏に戻ることになります。

離婚してから3ヶ月以内に市区町村長に届出をすることによって、結婚中の氏をそのまま続けて称することができ、これを婚氏続称と言います

(離婚による復氏等)
民法第767条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

夫婦財産制や日常家事債務の関係、扶養関係や相続権もなくなります。

夫婦に子供がいる場合、両者の関係を決めなければなりません。

夫婦は別れても子供との関係は切れません。

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離婚後の親権者指定・・・

未成年の子供は、父母の親権に服し、父母は結婚している間、これを共同で行使します。

しかし離婚すると、父母の一方のみが親権者になることとされています。

決め方は、協議離婚の場合は離婚しようとする夫婦の協議で決め、離婚届に記載しなければなりません。

親権者の指定が、夫婦の協議によってできない場合は、家庭裁判所の調停又は審判で決められます。

家庭裁判所は子供が15歳以上であれば、審判に際して、その陳述を聴かなければなりません。

子供の意思を尊重し、その利益を図るためとされています。

子供が15歳未満の場合も、物事の判断ができる限りその意見は尊重されなければならないとされます。

(離婚又は認知の場合の親権者)
民法第819条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
5 第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

調停、審判、和解、請求の認諾、判決による離婚の場合は、それぞれの手続きの中で誰が親権者になるかが決められます。

親権者は、子供の身上監護をし、財産を管理する権限を持ちます。

一旦決められた親権者も、子供にとって不適当である場合には、家庭裁判所は、親族の請求に基づいて親権者を父母の他の一方に変更することができます。

また、親自身の借金のために子供の不動産に抵当権を設定するなど、親権者と子の利益が相反する場合には、親権者は、家庭裁判所に子供のために特別代理人を選任してもらわなければ、その手続きを進めることはできません。

父母は協議によって、親権者にならないほうを監護者とし、身上監護を受け持たせることができます。

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将来の養育費の差押・・・

子供の生活保障のためには、親権者や監護者の決定とともに、その生活費を確保しなければなりません。

父母は離婚したとしても、その負担を平等に負うことになります。

資力に差がある場合には、その資力に応じた分担になります。

子供と同居しない親は、他方にその分担する分を養育費として渡します。

その額は、結婚中の生活水準を保障するものであるべきです。

家庭裁判所における調停・審判・判決などや協議離婚に関し作成された公正証書において、養育費が定期的に支払われるものとされた場合、すでに支払期限のきた養育費ばかりでなく、まだ期限のきていない分も含め一括して、養育費支払義務者の給料や家賃収入など継続的な債権の差押を地方裁判所に申し立てることができるようになりました。

これまでは、申立は、期限が来た分に限られ、養育費が定期的に支払われるような場合、不払いがあるたびに申立を必要としていました。

これは、子供の養育費のほか、夫婦間の協力、扶助、婚姻費用の分担、親族間の扶養に関する請求にも及ぼされます。

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