1度だけの性交渉で子の強制認知・・・

1度だけの性交渉で子の強制認知・・・

大学生の太郎さんと花子さんは、大学で知り合い、何度かデートを重ね、一度だけ性交渉を持ちました。

その後、花子さんは、妊娠し、10ヵ月後に女の子を分娩しまし、太郎さんに、子が生まれたことを告げましたが、太郎さんは、自分の子ではないといって父子関係を否認しました。

そこで、花子さんは、生まれた女の子の法定代理人として、太郎さんを相手取り認知請求の調停を申し立てましたが、調停が不調に終わったため、事件は訴訟に持ち込まれました。

その結果、裁判所は一審、二審とも女の子の父親は太郎さんだと認め、認知請求を認容しました。

判決は、花子さんが女の子を受胎した時期を認定し、その期間前後における花子さんの他の男性との情交関係の有無を調べ、他に情交関係があったと認めるべき明確な証拠はないと認定しました。

父子関係確認の証拠として、判決は次のことを示しています。

①医大でなされた血液検査では太郎さんが女の子の父親である確率80数%とされたこと。

また、太郎さんは、花子さんから妊娠4ヶ月だと打ち明けられた際「おろすならおろせ、金は都合する」と、暗に自分が父親であることを自認するような返事をしていました。

②医大の鑑定により、太郎さん、花子さん、女の子の3名について行なった血液によるABO式、MN式、RH式、唾液による分泌型S式、血清によるハプトグロビン型及びGC型当の血液型検査、指紋、掌紋、耳垢、顔部の結果から見ても太郎さんは女の子の父親である必要条件をいくつか備えており、その父親肯定の確率は93.94%であること。

③顔の形について、耳垂の形態は父子関係存在の有力な決め手となるが、太郎さんと女の子の耳垂の顔面への付着状態、耳垂全面のヨコの線状陥凹の存在は両者共通の特徴を示しており、これは花子さんにはないこと。

以上から判決は、情交関係は一度でしかないが、なお両者間には父子関係が存在すると認められると判断しました。

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婚約者のお腹の子を他の男が認知・・・

太郎さんと花子さんは婚約し、婚前交渉をもち、関係もうまく行っていました。

しかし、結婚まであと半年という頃から、花子さんの態度に変化が見られました。

太郎とのデートの誘いを断る回数が増え、セックスは特に避けようとしました。

花子は他に好きな人ができたとのでした。

花子はある夜、妊娠したことを告白したのですが、花子が言うには、太郎の子であるかどうか分からないと言いました。

そして、花子のもう1人の相手である一郎も含めて、三者で話し合ったが、どちらも譲らなかった。

しばらくして、花子と一郎に呼び出され、花子のお腹の子を一郎が認知したと告げられました。

母の胎内の子を認知できるかについては、認知できるとされています。

この場合には、母の承諾を得なければなりません。

(胎児又は死亡した子の認知)
民法第783条 父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。
2 父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。

認知された子は、その父母が婚姻すれば嫡出子の身分を取得します。

問題は、花子のお腹の子が、太郎の子なのか、一郎の子なのかということになります。

太郎が自分の子だと信じて争うなら、一郎と認知された子を相手として認知無効の調停・審判又は訴えを提起しなければなりません。

認知した者と認知された者との間に、生理上の親子関係である血のつながりがなければ、そのような事実に反する認知は無効であるから、認知無効の裁判を経て、その審判又は判決の謄本を添付して、戸籍の訂正届をすれば、一郎の認知を削除できます。

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胎児が祖父の財産を相続・・・

山田家では、長男の一郎が交通事故で亡くなり、その1ヵ月後、その父太郎が亡くなった。

太郎は資産家であり、太郎の相続人は、太郎の妻と二男、長女、二女である。

長男の一郎には子がなかった。

しかし、葬式の数日後、花子は体の調子が悪かったため、医師に診てもらうと、妊娠3ヶ月であることが判明しました。

相続人はすでに遺産の分割を進めていますが、胎児についての相続はどうなるのでしょうか。

民法の原則は、子は出生して始めて権利主体となります。

(権利能力)
民法第3条 私権の享有は、出生に始まる。
2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

この原則からしますと、相続開始の次の日に生まれても相続権はないことになります。

しかし、民法は特に胎児の相続権について規定を設け、胎児は、相続については、既に生まれたものとみなすとされ、ただ死体で生まれた場合はあてはまらないとされます。

(相続に関する胎児の権利能力)
民法第886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

ですので、花子が無事出産をすれば、その子は祖父太郎の遺産については、父一郎を代襲相続して、他の相続人と同じ割合の相続権を持ちます。

これは、胎児の存在を知っていたかどうかとは関係がありません。

胎児の存在を知らずして、あるいは無視して、他の相続人だけで遺産の分割協議をしても、その分割協議は、胎児が元気に出生すれば、相続人全員の協議があったとはいえないから無効です。

もう一度やり直さなければなりません。

他の相続人がやり直しに応じなければ、家庭裁判所に遺産分割について調停を申し立てることになります。

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