相続財産(不動産の無断売却)・・・

相続財産(不動産の無断売却)・・・

相続人甲は他の共同相続人に無断で遺産を第三者に売却して代金全額を受領したが、その後、他の相続人が売却を追認した場合、追認は甲の遺産を売却する権原の欠缺(けんけつ)を補完する効果を有するに止まり、甲に代金中相続分を超える部分をも自己の所得として保有し得べき法律上の原因を与えるものでないとして、超過分の不当利得請求を認めた事例があります。

欠缺(けんけつ)とは、「欠けていること」。

主に法学で用いられる(意思の欠缺、意思能力の欠缺、登記の欠缺、訴訟条件の欠缺など)が、近時は「不存在」に言い換えられることもある(例えば、民法101条は現代語化の際に、「意思の欠缺」を「意思の不存在」に改めた。)

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相続財産(共同相続人の使用収益)・・・

共同相続人甲が相続開始前から引き続き相続財産である建物を使用収益している場合、使用収益していない他の相続人が当該建物に対して持つ相続分を侵害し不法行為を構成すると解することはできないが、他の相続人が自己の相続分の範囲でその建物に対して使用収益することを求めるときは全相続人の相続分率に従い過半数をもってその是非を求めることができます。

民法第252条

共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

また、遺産分割の審判申立後、家裁が選任した遺産管理人は相当であると認めれば相続人が建物の使用収益を許容し得る旨を定めることができるのであるが、定めがなされたにもかかわらず、現に使用する甲が使用収益を許容された他の相続人の使用収益を故なく妨害するときは不法行為を構成し、また、遺産分割に際しては相続開始時より遺産分割時までの使用収益によって得た利益は分割の対象たる積極財産に一種として評価清算されるべきであり、さらに最終的遺産分割までに利益の帰属に関して遡及的効果を伴う所有権を取得した相続人が相続開始より遺産分割成立の前後にいたるまで建物を使用収益した相続人に対し、不当利得の返還もしくは不法行為による損害賠償を請求することが可能であるとされます。

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相続財産(同居相続人の家屋居住権)・・・

甲乙夫婦の長男丙は妻子とともに甲乙と同居していたが、甲は遺言で居住家屋及びその敷地借地権を売却し、その売却代金を共同相続人が法定相続分に応じて相続する旨の指定後、死亡した場合、丙の本件家屋の居住関係は居住を目的とする使用貸借関係に属し、遺言によっても丙の承諾のない限り、この既得権を故なく侵害することは許されず、遺言の遺言執行者は使用借権を無視して丙に対して本件家屋の明け渡しを求めることは許されず、また、遺言執行者は管理処分権に基づき、使用貸借の解約告知をする権限を有するが、解約告知後も本件家屋の使用借権はなお相当期間存続を許されるべき性質を有するとした事例があります。

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相続財産(相続人の使用貸借)・・・

共同相続人の1人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居し、相続開始後も建物に居住している場合、特段の事情のない限り、被相続人と同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割が終了するまでの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人らが貸主となり、同居の相続人を借主とする使用貸借契約が存続することになるというべきであり、このような相続開始前と同一の態様における無償使用を認めることが被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するとし、原判決である本件建物に居住している相続人に対して持分を超える部分に不当利得が成立し、賃料相当額の返還を命じた判決を破棄して差し戻しました。

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