相続財産管理人の処分行為・・・

相続財産管理人の処分行為・・・

被相続人名義の預金の払戻請求、貸金庫の開扉などは処分行為に該当しないと考えます。

被相続人の生前処分に基づく履行として、管理人が登記義務者として行なう不動産の所有権移転登記申請は家庭裁判所の許可は不要とされ、管理人が時効取得に基づく所有権移転登記の登記義務者となる行為は、その時効完成が相続開始の前後を問わず、管理人の権限内の行為であるとされています。

管理人が時効取得に基づく所有権移転登記の登記義務者となる行為については、その理由として、管理人が相続財産に属する債務の弁済をすることは、その権限内の行為であると解されるから、時効の完成が相続の前であると後であるとを問わず、時効取得に基づく所有権移転登記の登記義務者となる行為も、債務の弁済に準じ、管理人の権限内の行為として、家庭裁判所の許可を受けることを要しないとされています。

ただし、管理人としては、相続財産管理の趣旨に従い、善良なる管理者の注意をもって管理事務を処理する義務を負い、もしこの義務に違反したときにはその責任を追求されることになるので、時効完成の有無及び時効中断の必要性の判断をするについては、特に慎重でなければならないとされています。

このような場合、管理人は明白な資料があるとき家庭裁判所の指示を求めたうえで、応ずべきか否かを決定し、もし、関係資料がないときは、裁判手続でその権利関係を確定します。

相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6ヶ月が経過するまでの間は、時効は、完成しません。

(相続財産に関する時効の停止)
民法第160条 相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

スポンサードリンク

所有権の時効取得・・・

20年間所有の意思をもって平穏かつ公然に他人の物を占有した者は、その所有権を取得します。

右占有者が、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、10年間占有することによって、その所有権を取得します。

(所有権の取得時効)
民法第162条 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

占有者は、時効完成により、占有開始の時にさかのぼって目的物の所有権を取得します。

(時効の効力)
民法第144条 時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

時効による所有権の取得は原始取得ですから、前主の負担は承継されないのが建前ですが、判例は、占有者がいかなる範囲の所有権を取得するかは、占有の範囲いかんによって決まり、例えば、不動産全部を占有したときは全部の所有権を取得し、一部の所有権を占有したときは一部の所有権を取得するにすぎず、また、不動産を占有したときは第三者の権利付着のまま制限的所有権を取得するにすぎないと解しています。

上告人は、被相続人の死亡後、同人との婚姻を取消されたが、被相続人死亡の日に相続財産の占有を開始し、その後20年間継続しているところ、自己が被相続人の唯一の配偶者で3分の1の法定相続分を有するものとして占有を開始したものと見るべきであるから、被上告人らが他に上告人の占有が所有の意思のないものであることを基礎付ける事情を何ら主張していない本件においては、本件土地建物の各3分の1の持分を時効により取得したと認めた事例があります。

スポンサードリンク

取得時効の対象物 ・・・

民法162条は、時効取得の対象を「他人の物」と規定していますが、所有権に基づいて不動産を占有する者も、時効による所有権の取得を主張することができます。

(所有権の取得時効)
民法第162条 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

不動産が二重に売買された場合、買主甲がその引渡しを受けたが、登記欠缺のため、その所有権をもって、後に所有権取得登記を経由した買主乙に対抗することができないときは、甲の所有権の取得時効は、その占有を取得した時から起算します。

欠缺(けんけつ)とは、「欠けていること」という意味でつかわれます。

買い受けた土地に接する隣地の一部の占有者(控訴人)に、所有の意思を有していなかったと解することはできないこと(控訴人は、本件土地が本件建物の敷地で買受地の一部であることを信じていたこと、売主から売買契約日に引渡しを受けていること、真の所有者であれば通常とらない態度を示し、所有者であれば当然とるべき行動に出なかったなど、外形客観的にみて他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったと解される事情はないこと)、時効利益の放棄の有無など(控訴人は、本件土地の買取り、交換などの交渉をしたが、これは通常紛争の円満解決のために行なわれることで、控訴人は、交渉の結果合意が成立しなかった場合には、最終的に時効を援用して本件土地所有権を取得することまで放棄していたものではない)を判断し、占有土地の時効取得を認めた事例があります。

甲は、平成5年に乙から本件株式の贈与を受けてから10年を経過しているので、株主権を時効取得したとして会社に対して株主名簿の名義書換、株券発行を請求した事案において、株式について、民法163条による時効取得はありうるが、株式というのは会社に対する持分権であり、権利者として行動することは会社に対して株主として振舞うことになるため、取得時効の要件である「自己のためにする意思」をもって「平穏かつ公然に行使する」という要件を充たしているといえるのかどうかを判断することになるとし、原告が被告会社に対し、とった行動及び平成5年の後、平成15年に請求する以前に株主名簿の名義書換を請求していないことも併せ考慮すると、原告が自己が本件株式を所有する者として、被告会社に対し、株主として権利行使をしていたと認めることはできず、原告が本件株式を時効取得したとは認められないとして、甲の請求を棄却した事例があります。

(所有権以外の財産権の取得時効)
民法第163条 所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する。

スポンサードリンク

取得時効の自主占有・・・

自主占有とは、自己のためにする意思をもって物を所持する占有をいいます。

(占有権の取得)
民法第180条 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。

所有権の取得時効では、所有の意思をもって占有する自主占有することが要件です。

(所有権の取得時効)
民法第162条 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

共同相続人Aが単独で相続不動産を占有していても他に共同相続人Bのあることを知っている場合には、Bの相続分についてはBのために他主占有するものというほかはないとされます。

そして、本件不動産につき、他主占有が自主占有となったのは、Aの単独所有名義の登記がされた時と解しました。

占有は、占有している人がどのような意思をもって物を所持しているかにより、自主占有と他主占有に大別されます。

自主占有とは、所有の意思で物を所持する場合をいいます。

所有権の取得時効は所有の意思をもってする自主占有でなければ認められません。

他主占有とは、所有の意思がなく物を所持する場合をいいます。(他人の物を預かったり、借りたりする場合)

他主占有から自主占有に占有の性質を変更するには、その占有者が自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、または新権原により更に所有の意思をもって占有を始めたものと認められなければならないとされています。

(占有の性質の変更)
民法第185条 権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。

スポンサードリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする