死因贈与執行者選任の申立・・・
死因贈与執行者選任の申立は、家事審判法9条1項甲類35号事件として、処理されます。
①申立権者
受贈者、死因贈与者の相続人、その他死因贈与の執行に関し、法律上の利害関係を有する者
民法第1010条
遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
②管轄
死因贈与者の相続開始地の家庭裁判所
③添付書類
申立人・死因贈与者の戸籍謄本、候補者の戸籍謄本・住民票、死因贈与契約書写し、不動産登記簿謄本、相続人目録等。
④審判手続
死因贈与の執行は、死因贈与者の相続人の意思に反し、利害関係が対立することが多いので、その執行に当たる者は厳選されます。
家庭裁判所は、候補者の意見を聴かなければなりません。
意見聴取は、その機会を与えてあればよいと解されており、必ずしも審問の方法に限ることなく、就職承諾書や書面照会に対する回答書の提出等の方法がとられています。
同時に就職の諾否、適格性の有無、欠格事由等が審理されます。
民法第1009条
未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。
死因贈与契約の内容、その執行の難易等の事情を考慮して執行者を選任します。
死因贈与執行者選任の申立に対する審判の手続においては、死因贈与が無効であることが一見して明らかである場合に限って申立を却下することができるのであって、実体的な審理を経て初めてその有効性が決せられるような場合には、その有効無効を判断することなく死因贈与執行者を選任すべきであるとされています。
選任審判は、執行者に告知されて効力を生じます。
執行者選任の審判に対しては、不服申立はできません。
利害関係人は、申立を却下する審判に対して、即時抗告することができます。
その即時抗告は、申立人が告知を受けた日から2週間以内にしなければなりません。
⑤死因贈与執行者の職務
死因贈与執行者には、遺言執行者に関する規定が準用されます。
死因贈与執行者が就職すると、相続人は贈与物件を処分しても、その行為は執行を妨げるものとして無効です。
民法第1013条
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
死因贈与執行者は、死因贈与に基づく不動産の所有権移転登記を申請する権限を有します。
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包括的死因贈与契約とは・・・
包括的死因贈与契約とは、遺産の全部又は一定の割合を贈与するという死因贈与契約をいいます。
この包括的死因贈与契約ができるかできないかについて、包括的死因贈与契約はできないとする見解があります。
しかし、判例では、包括的遺贈が許されるのと同様、包括的死因贈与契約を有効と認めています。
民法第964条
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。
包括的死因贈与の受贈者に「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」との規定が準用され、包括的贈与の受贈者は、贈与者の債務をも承継するかどうかですが、民法990条は性質上準用の余地がないと解されています。
民法第990条
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
死因贈与の受贈者が贈与者より先に死亡した場合、遺贈に関する民法994条1項が準用され、受贈者が死亡した時点で死因贈与の効力は失われると解した事例があります。
民法第994条
1. 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2. 停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
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負担付死因贈与とは・・・
負担付死因贈与とは、受贈者が一定の給付をする債務を負担する贈与と、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与とが複合した契約をいいます。
負担は一個の贈与契約の一部である附款(*)に当たります。
(*)附款とは
法律行為から生ずる効果を制限する目的で、表意者が法律行為に際して特に付加する制限。条件・期限などがその例。
民法第553条
負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。
民法第554条
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
負担付死因贈与は、その負担の全部又は大半が履行された場合には、特別の事情がない限り撤回を許すべきではないと解されています。
「負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が、負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合には、この契約締結の動機、負担の価値と贈与財産の価値との相関関係、契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らし、契約の全部又は一部を撤回することが止むを得ないと認められる特段の事情がない限り、民法1022条、1023条の各規定は準用されない。」と判示しています。
民法第1022条
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
民法第1023条
1. 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2. 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
負担付死因贈与契約は、受贈者が贈与者に対する看護、救護義務を怠った場合はこの贈与契約を解除できる旨、約することがあります。
義務の不履行はなかったとして贈与者の死後その相続人がした解除権の行使を認めなかった事例があります。
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死因贈与の撤回・・・
書面による贈与は撤回することができません。
民法第550条
書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
しかし、死因贈与について、判例は、遺贈と同様に贈与者の最終意思を尊重するとの趣旨から、遺言の撤回に関する方式の部分を除いて、書面による死因贈与の撤回を認めています。
負担付死因贈与には、双務契約に関する規定が適用されるところから、その撤回を否定した事例がありますが、その後、最高裁は、負担付死因贈与契約の撤回が止むを得ないと認められる特段の事情がない限り、民法1022条、1023条の規定は準用されないと判断しました。
民法第553条
負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。
民法第1022条
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
民法第1023条
1. 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2. 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
贈与者は、裁判上の和解で成立した死因贈与を遺言の撤回に関する規定により撤回することができません。
死因贈与の撤回の通知は、配達証明付内容証明郵便で送付しておくと、通知書を受け取っていないという相手方の主張を予防することができます。
死因贈与の撤回は、口頭弁論期日においてもその意思表示をすることができます。
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死因贈与撤回の遺言・・・
民法554条は、死因贈与には遺贈の規定が準用される旨規定しています。
しかし、民法はその準用の範囲を明確にしていないため、遺言の撤回に関する規定が死因贈与に準用されるかどうかについて、学説は、遺言の撤回に関する方式の部分を除いて肯定する見解、遺言の方式に関する部分をも含めて準用を肯定する見解と、準用を否定する見解とに分かれています。
判例は、贈与者の最終意思を尊重するという趣旨から、遺言の撤回に関する方式の部分を除いて、準用されるとしていました。
しかし、その後、負担付死因贈与で、受贈者が負担の全部又はそれに類する程度の履行をした場合に、準用されないとしています。
民法第554条
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
民法第1022条
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
後にされた遺贈遺言により死因贈与の法定撤回が認められないときは、死因贈与と遺贈遺言が併存することになりますが、この関係については、被相続人が、生前、不動産をある相続人に贈与するとともに、他の相続人にもこれを遺贈したのち、相続が開始した場合は、この贈与及び遺贈による物権変動の優劣は、対抗要件たる登記の具備の有無をもって決するとされています。
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