二重資格の相続放棄・・・
二重資格を有する相続人が先順位の資格で相続放棄しても、後順位の資格で相続放棄しない以上後順位の資格で遺産相続できるとした事例があります。
この考えに基づき、中間順位の相続人がいる場合を考えると同一人が2つの資格を兼有する場合でも相続放棄は相続順位に応じ各別に観察する見解が正しいとしながら、本件の場合は、相続人全員が第一順位と第三順位の資格を兼有していること、第二順位の相続人はないこと、共同相続人全員がした相続放棄の申述に対して家庭裁判所は審尋のの上全面放棄の趣旨をもって受理していること、その後相続人がないものとして相続財産について管理人が選任されていることなどを認定して、この申述人は第一順位と第三順位の資格に基づく相続を同時に放棄したことを認めた事例もあります。
家庭裁判所の受付事務は、一通の相続放棄申述書に2つの資格を明示してきた場合、その資格が同順位のときは1個の判断で足りるので1件として受け付け、異順位のときは2個の判断を要するので2件として受け付ける取り扱いです。
法務省は、先順位の相続を放棄すると後順位の相続権も放棄したことになる、養子が相続放棄した後、死後認知の裁判が確定した場合、相続権はない取り扱いをしています。
二重資格とは、たとえば、弟が兄の養子になった場合に、兄が亡くなり相続が開始した場合に、先順位相続人(養子)として相続放棄した後、後順位相続人(弟)として、相続の承認ができるかどうかということです。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
(相続の放棄の方式)
民法第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
民法第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
スポンサードリンク
相続放棄却下の審判・・・
家庭裁判所は、相続放棄の申述を不相当と認めるときは、申述を却下する審判をして、申述人に告知します。
申述人又は利害関係人は申述を却下する審判に対して即時抗告することができます。
申述人らの行為が法定単純承認事由に該当するとして相続放棄申述受理申立を却下した審判に対する即時抗告審において、これを受理すべきものであるが、相続放棄申述の受理は、相続放棄のあったことを公証する行為で、裁判ではなく、家庭裁判所においてなすべきものであるとして、原審判を取消して差し戻した事例があります。
相続放棄の申述を処理する場合、申述の受理又は却下の審判のほかに「申述を受理しない」旨の処理は認められません。
(法定単純承認)
民法第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
1.相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
2.相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
3.相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
(相続の放棄の方式)
民法第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
民法第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
スポンサードリンク
相続放棄申述受理証明申請 ・・・
相続放棄申述受理証明は、相続放棄申述事件の申述を受理したことを証明するもので、事件に関する証明の1種です。
相続放棄の申述の有無に対する照会は、事件に関する証明に当たりませんが、その必要がある場合に訴廷事務と解し、事件係が首席書記官の決済を受けて、又は首席書記官の包括的指示によって回答書を交付します。
①申請権者
事件の関係人です。
事件の関係人とは、事件の終局的処分としての審判(調停)によって直接にその権利義務の上に法律上の利害の影響を受ける者をいい、申立人、相手方、審判を受ける者、事件本人、利害関係人、夫、妻、子、子の親族、相続人、相続債権者などがこれに該当します。
②交付手続
家庭裁判所は、事件の関係人の申立を相当であると認めるときは、裁判所書記官をして事件に関する証明書を交付させることができます。
家事事件の秘密性の要求から許可を要するとしたものです。
当事者又は事件本人が事件に関する証明書の交付を求めたときは、裁判所書記官がこれを交付することができます。
家事審判規則第十二条 家庭裁判所は、事件の関係人の申立により、これを相当であると認めるときは、記録の閲覧若しくは謄写を許可し、又は裁判所書記官をして記録の正本、謄本、抄本若しくは事件に関する証明書を交付させることができる。
2 当事者又は事件本人が、審判書若しくは調停において成立した合意を記載し、若しくは第百三十八条若しくは第百三十八条の二の規定により事件が終了した旨を記載した調書の正本、謄本若しくは抄本又は事件に関する証明書の交付を求めたときは、前項の規定にかかわらず、裁判所書記官が、これを交付することができる。
スポンサードリンク
相続放棄申述の追認申述・・・
他人が、相続放棄の意思のない相続人に無断で、その名義を使用して作成し、家庭裁判所に提出した相続放棄申述書は不適法なものですが、相続人は、この申述を追認して有効にすることができます。
相続放棄申述の追認は、家事審判規則3条に則り、その旨を記載した申述書を当該相続放棄申述事件が継続している家庭裁判所に提出して行ないます。
家事審判規則第三条 申立その他の申述は、書面又は口頭でこれをすることができる。
2 口頭で申述をするには、裁判所書記官の面前で陳述しなければならない。この場合には、裁判所書記官は、調書を作らなければならない。
追認書は相続放棄の申述書と契印して、記録に綴られます。
追認は、熟慮期間内にしなければならないとされています。
家庭裁判所は、相続放棄申述受否の判断をする前に、申述人に対して真意の確認をしますから、この間に熟慮期間を経過したときは追認ができないことになるので、相続放棄申述事件が係属中であれば追認を求める取り扱いがあります。
民事訴訟では追認の時期について別に制限はないと解されています。
①申立権者
申述人(追認者)です。
②管轄
相続放棄申述事件の係属裁判所
③審理手続
家庭裁判所は追認申述書の受否を審査します。
追認申述書が受理されると、相続放棄の申述は、申述の時に遡って有効となります。
スポンサードリンク