相続財産管理人の職務権限・・・

相続財産管理人の職務権限・・・

管理人は、権限の定めのない相続人の法定代理人であり、相続人の管理権は管理人に移ります。

(相続財産の管理)
民法第918条 相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
2 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。
3 第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

相続人の相続財産の処分は法定単純承認事由となっていますから、処分権の行使は制約を受けます。

管理人は権限の定めなき代理人ですから、なしうるのは保存行為、利用行為、改良行為などの管理行為です。

(権限の定めのない代理人の権限)
民法第103条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
1.保存行為
2.代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

管理期間も、相続開始から相続選択までの短期間のため、民法28条の規定が準用されているとはいえ、家庭裁判所の権限外行為に許可を得て処分行為をする場合は少ないといわれています。

(管理人の権限)
民法第28条 管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

管理人の財産管理に関し、相続人との法律関係については、民法に委任の規定の一部が準用されています。

管理人は、自己を管理人に選任した家庭裁判所の監督に服さなければならず、家庭裁判所が財産上必要と認めてする指示・処分に従う義務があります。

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未成年後見人指定の遺言・・・

未成年後見人の指定は遺言によってのみすることができます。

(未成年後見人の指定)
民法第839条 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
2 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。

未成年後見人を指定することができるのは、未成年者に対して、最後に親権を行なう者です。

最後に親権を行なう者とは、その者が死亡すれば他に親族が亡くなる場合の親権者をいいます。

最後に親権を行なう者でも管理権を有しない親権者は未成年後見人を指定することができません。

未成年後見人は1人でなければなりません。

(未成年後見人の数)
民法第842条 未成年後見人は、一人でなければならない。

2名以上の者が後見人として未成年者を代理してした法律行為は無権代理行為に該当し、未成年者である本人が成年に達した後これを追認しない限り効力を生じません。

次に掲げる者は、後見人となることはできません。

①未成年者

②家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人

③破産者

④被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族

⑤行方の知れない者

(後見人の欠格事由)
民法第847条 次に掲げる者は、後見人となることができない。
1.未成年者
2.家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
3.破産者
4.被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
5.行方の知れない者

未成年後見人を指定する遺言は、遺言者死亡の時に効力を生じ、未成年後見人に指定された者は、その時から未成年後見人に就職し、就職の日から10日以内に遺言書の謄本を添えて未成年後見開始届をしなければなりません。

未成年後見人に指定された者は就職を希望しないときもいったん未成年者の後見開始届うぃしたうえで、家庭裁判所の辞任許可を得て辞職します。

(辞任した後見人による新たな後見人の選任の請求)
民法第845条 後見人がその任務を辞したことによって新たに後見人を選任する必要が生じたときは、その後見人は、遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。

(後見人の辞任)
民法第844条 後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

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未成年後見の開始原因 ・・・

未成年者に対して、次のときに後見が開始します。

①親権を行なう者がないとき

②親権を行なう者が管理権を有しないとき

③後見開始の審判があったとき

民法第838条 後見は、次に掲げる場合に開始する。
1.未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
2.後見開始の審判があったとき。

①の場合は、親権者の死亡、親権喪失、親権辞任、行方不明、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるときをいいます。

準禁治産者は親権を行なうことはできないと解していますので、親権者に対する保佐開始の審判があったときも未成年後見開始の原因になると解します。

父母が親権を共同して行使している場合、一方の親権者に後見開始事由があっても他方の親権者が親権を行使するので後見が開始することはありません。

(親権者)
民法第818条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

離婚により未成年者の親権者となった母が死亡した後、未成年者の父から親権者変更申立がされた事案で、申立人を親権者にするよりも亡き親権者母の母を後見人に選任するのが相当であるとして、この申立を却下した事例があります。

協議離婚の際に未成年者の親権者と定められた親が死亡した場合、未成年の子らの意向、生活状況、財産管理に特段の配慮と監督を必要とする事情に鑑みると、生存親の心情を最大限考慮しても、未成年者らの保護のために、家庭裁判所及び後見監督人の監督下の置かれる未成年後見人制度を活用すべきとして、親権者変更申立を却下し、未成年後見人選任、未成年後見監督人選任をした原審判を是認し、即時抗告を棄却した事例があります。

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未成年後見人の欠格事由・・・

次の者は後見人になることはできません。

①未成年者

②家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人

③破産者

④被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族

⑤行方の知れない者

(後見人の欠格事由)
民法第847条 次に掲げる者は、後見人となることができない。
1.未成年者
2.家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
3.破産者
4.被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
5.行方の知れない者

この規定は、成年後見人、未成年後見人に共通の規定です。

家庭裁判所が欠格事由のある者を後見人に選任してもその資格は生じないし、また、後見人に就職後、欠格事由が発生したときは、当然にその資格を失います。

欠格事由のうち、被後見人に対して訴訟をしたとは、実体上被後見人の利益に反するにもかかわらず、これに対して訴訟をするという意味であって、形式上被後見人を訴訟当事者とする場合でも、両者の間に利益相反関係がない場合には、右「訴訟」には含まれません。

未成年後見人には1人でなければなりません。

(未成年後見人の数)
民法第842条 未成年後見人は、一人でなければならない。

2名以上の者が後見人として未成年者を代理してした法律行為は無権代理行為に該当し、未成年者である本人が成年に達した後これを追認しない限り、効力を生じません。

しかし、未成年者甲の後見人に就職した乙及び丙が甲を代理して売買契約を締結した場合、乙及び丙は甲の実親であり、甲の義父の死亡により乙、丙が甲の後見人に就職した旨戸籍に記載され、ともに正当な後見人になったものと考えて甲の財産を管理し、売買に乙、丙が関与したことによって甲の利益が損なわれたわけでなく、甲も成人に達した後において乙、丙が甲の財産を管理してきたことを事実上承認していたなどの事情があるときは、甲は信義則上、乙、丙がした無権代理行為の追認を拒絶することは許されず、無権代理行為を理由として売買契約の効力を否定することは許されないとされています。

未成年者の事実上の後見人としてその財産管理に当たっていた者が無権代理行為後に後見人に就職した場合、後見人は信義則上自己がした無権代理行為の追認を拒絶することは許されないとした事例があります。

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