民事訴訟とは・・・
例えば、売主が買主に対して代金1万円の商品を売って、その品物を引き渡したのに、買主はいくら請求しても支払わない場合、売主は代金を支払ってもらう権利があります。
ですので、売り主は無理やり暴力でその1万円を取り上げるか、あるいは買主の住処に勝手に入って1万円を取ってこれるか、というと、これは法律上許されていません。
自分の権利実現のために自ら実力を行使することを自力救済といい、法律はこれを禁じています。
もし、自力救済を許すと、社会の秩序は当然保たれなくなるからです。
国は、裁判所を設置して紛争の当事者からの申出があれば、裁判所の判決によって売主のために強制的な取立に力を貸す制度を設けているのです。
これを民事訴訟といいます。
この民事訴訟を提起するには、訴状を裁判所に提出しなければなりません。
訴状とは、どのような紛争があり、自分としてはどうようにして欲しいかを一定の書式に従って書いた書面をいいます。
民事訴訟が提起されると、裁判所は訴えを起こした人の主張を検討し、さらに相手の主張を聞いた上で、どちらの主張が正しいかを、証拠を調べることによって判断します。
この当事者の主張を聞いたり、証拠を調べるために、訴えを起こした人と相手方は、定められた期日に裁判所に出頭して主張する事柄を書いた書面を提出したり、証拠を出したりします。
最終的に裁判所が訴えを起こした人の主張が正しいと認めれば、原告の勝訴の判決を言渡します。
これによって、相手方は、判決に従わなければならなくなります。
相手方がこの判決に従わない場合、この判決に基づいて、相手の財産を差押え競売する等の手続をすることになります。
これを強制執行といいます。
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訴訟の実費とは・・・
訴訟の実費は収入印紙で納める手数料が大きな割合を占めます。
訴訟の目的額を、訴額又は訴訟物の価額といいます。
訴額100万円以下についての手数料額は1%です。
例えば50万円の訴訟に対する貼付印紙額は、5,000円です。
訴額が増えれば手数料の額は次第に割合が小さくなり、100万円を超えた部分については、0・5%となり、それ以上はさらに割合が小さくなります。
1億円の訴訟ですと、32万円です。
訴状を提出する際に、裁判所へ予納する郵便切手が7,000円ぐらいです。
訴訟の実費はこれぐらいなのです。
ただし、訴訟が長引けば、郵便切手の追加納付があったり、証人を呼んだりすればその費用がかかります。
証人は日当が1人について8,000円以内とその旅費がかかります。
遠距離から来る証人には、宿泊費がかかります。
当然、これは証人を申し立てた側が予納します。
これらの費用は、訴訟で勝てば、被告側からとることができます。
判決の主文に「訴訟費用は被告の負担とする」と宣言されます。
ただし、これについて強制執行するためには、訴訟費用確定の裁判というのを申し立てなければなりません。
訴訟に負けたら、「訴訟費用は原告の負担とする」と宣言され、訴訟費用は被告の分も負担しなければなりませんが、その額は数万円だと思われます。
なお、被告が弁護士などの専門家の代理人を立てていても、その費用を取り立てることはできません。
弁護士などを立てる立てないは自由ですから、訴訟費用の計算には入りません。
これは原告側でも同じで、弁護士などの専門家に依頼すれば、当然報酬を支払わなければなりませんが、特別な場合でなければ、勝訴してもその費用は相手から取ることは出来ないのです。
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訴訟の期間とは・・・
訴訟の期間としては、訴訟が終わるまで毎月一回程度期日に裁判所に行く事になりますから、平日の半日を使うことになります。
期日は、前の回で決めますが、その時に希望を言えば都合の良い日を決めてくれますし、場合によっては事前に延期してもらうことも出来るようです。
病気のため診断書を提出して延期申請をするとか、親が死んだとか、理由があれば延期できます。
簡単な訴訟では早く終わります。
小額訴訟手続は1日で判決まで出されます。
手形・小切手訴訟は1回か2回なので、訴状を出して数ヶ月で終わる場合が多いようです。
貸金や売掛金の訴訟も2~3ヶ月で終わるようです。
また、相手が争ったとしても、単なる言い逃れのような場合には、証人を呼んだりした場合でも4~5回の期日で終わるようです。
しかし、複雑な事件の場合は、1年も2年もかかることがあります。
このような事件である場合には、日常の生活へ負担が大きくなります。
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裁判所の処分権主義とは・・・
裁判所は常に受身であり、訴訟をどうするかは当事者の自由に委ねています。
これを裁判所の処分権主義といいます。
訴訟を起こされる側についても同じで、事実ではないのに、最初から相手の言い分を認めてしまうと裁判所はそれを判決とします。
ですので、権利があっても訴訟を起こして来ない者を国は助けないわけです。
権利の上に眠る者は保護しないわけなのです。
この「訴えなければ裁判なし」という処分権主義が規定されているのが、民事訴訟法246条の「裁判所は、当事者が申し立ててない事項について、判決をすることができない」という条文です。
100万円の貸金の返還を請求した訴訟が、調べていくうちに証言や証拠書類で、貸金が150万円であったことが明らかになったとします。
しかし、訴えが100万円の訴えである以上、裁判官は100万円を支払えという判決が出せるだけに留まるのです。
このように訴訟で何をどの程度要求するのか、ということは原告が自由に決める事ができて、裁判所はそれを認めるか認めないかの判断をするに過ぎないのです。