保全執行の担保の取戻し・・・

保全執行の担保の取戻し・・・

保全執行としてする登記若しくは登録又は第三債務者に対する保全命令の送達ができなかった場合、その他保全命令により債務者に損害が生じないことが明らかである場合において、執行期間が徒過し、又は保全命令の申立てが取下げられたときは、債権者は、保全命令を発した裁判所の許可を得て、民事保全法14条1項の規定により立てた担保を取り戻すことができます。

債務者が民事保全法14条1項の担保に関する権利を承継した場合も同様です。

(保全命令の担保)
民事保全法第14条 保全命令は、担保を立てさせて、若しくは相当と認める一定の期間内に担保を立てることを保全執行の実施の条件として、又は担保を立てさせないで発することができる。
2 前項の担保を立てる場合において、遅滞なく第4条第1項の供託所に供託することが困難な事由があるときは、裁判所の許可を得て、債権者の住所地又は事務所の所在地その他裁判所が相当と認める地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。

(保全執行の要件)
民事保全法第43条 保全執行は、保全命令の正本に基づいて実施する。ただし、保全命令に表示された当事者以外の者に対し、又はその者のためにする保全執行は、執行文の付された保全命令の正本に基づいて実施する。
2 保全執行は、債権者に対して保全命令が送達された日から2週間を経過したときは、これをしてはならない。
3 保全執行は、保全命令が債務者に送達される前であっても、これをすることができる。

(担保の取戻し)
民事保全規則第十七条 保全執行としてする登記若しくは登録又は第三債務者に対する保全命令の送達ができなかった場合その他保全命令により債務者に損害が生じないことが明らかである場合において、法第四十三条第二項の期間が経過し、又は保全命令の申立てが取り下げられたときは、債権者は、保全命令を発した裁判所の許可を得て、法第十四条第一項の規定により立てた担保を取り戻すことができる。
2 前項の許可を求める申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 保全命令事件の表示
二 当事者の氏名又は名称及び住所(債務者を特定することができない場合にあっては、その旨)並びに代理人の氏名及び住所
三 申立ての趣旨及び理由
四 保全命令の正本が担保権利者である債務者以外の債務者に対する保全執行のため執行機関に提出されているときは、その旨
3 前項に規定する申立書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。
一 保全命令の正本。ただし、前項第四号に規定する場合における当該正本を除く。
二 前項第四号に規定する場合にあっては、その旨を証する書面
三 事件の記録上明らかである場合を除き、保全命令により債務者に損害が生じないことが明らかであることを証する書面
4 債務者は、第一項の担保に関する債権者の権利を承継したときは、保全命令を発した裁判所の許可を得て、その担保を取り戻すことができる。
5 前項の許可を求める申立ては、第二項第一号から第三号までに掲げる事項を記載した書面でしなければならない。この書面には、債務者が第一項の担保に関する債権者の権利を承継したことを証する書面を添付しなければならない。

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仮差押えの担保取戻許可の要件・・・

執行方法 目的物 許可の要件 備考
登記又は登録 1、不動産
2、船舶、航空機、自動車、建設機械(登記又は登録の方法による場合)
3、権利の移転について登記又は登録を要するその他の財産権
1、発令前に保全命令の申立ての取下げがあった場合
2、登記(登録)嘱託前に保全命令の申立ての取下げがあった場合
3、登記(登録)嘱託が却下された場合において、保全命令の申立ての取下げがあり、又は執行期間が経過したとき
債務者に対する命令の告知の有無は許可の要件として考慮しない
第三債務者又はこれに準ずる者への仮差押命令の送達 1、債権
2、その他の財産権(第三債務者又はこれに準ずる者がある場合)
1、発令前に保全命令の申立ての取下げがあった場合
2、第三債務者又はこれに準ずる者への送達着手前に保全命令の申立ての取り下げがあった場合
3、第三債務者又はこれに準ずる者への送達が不能となった場合において、保全命令の申立ての取下げがあり、又は執行期間が経過したとき
1、第三債務者の提出した陳述書に債権が不存在である旨の記載があっても、取戻しは認めない
2、債務者に対する命令の告知の有無は許可の要件として考慮しない
執行官による執行 1、船舶、航空機(航行に必要な文書の取下げの方法による場合)
2、自動車、建設機械(目的物の取下げの方法による場合)
3、動産
1、発令前に保全命令の申立ての取下げがあった場合
2、執行申立前に、保全命令の申立ての取下げがあり、又は執行期間が経過した場合
3、執行官が執行に着手する前に、保全命令の申立てがあり、又は執行期間が経過した場合(執行に着手していないことが執行調書等により明らかな場合に限る)
債務者に対する命令の告知の有無は許可の要件として考慮しない

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仮処分の担保取戻許可の要件・・・

仮処分の種類 執行方法等 許可の要件 備考
処分禁止の仮処分 登記又は登録 1、発令前に保全命令の申立ての取下げがあった場合
2、登記(登録)嘱託前に保全命令の申立ての取り下げがあった場合
3、登記(登録)嘱託が却下された場合において、保全命令の申立ての取下げがあり、又は執行期間が経過したとき
債務者に対する命令の告知の有無は許可の要件として考慮しない
第三債務者又はこれに準ずる者への送達 1、発令前に保全命令の申立ての取下げがあった場合
2、第三債務者又はこれに準ずる者への送達着手前に保全命令の申立てがあった場合
3、第三債務者又はこれに準ずる者への送達が不能となった場合において、保全命令の申立ての取下げがあり、又は執行期間が経過したとき
債務者に対する命令の告知の有無は許可の要件として考慮しない
占有移転禁止の仮処分 執行官保管 1、発令前に保全命令の申立ての取下げがあった場合
2、執行申立前に、保全命令の申立ての取下げがあり、又は執行期間が経過した場合
3、執行官が執行に着手する前に、保全命令の申立ての取下げがあり、又は執行期間が経過した場合(執行に着手していないことが執行調書等により明らかな場合に限る。なお、同一命令に複数の債務者が掲げられているときは、着手の有無は債務者ごとに判断する。)
債務者に対する命令の告知の有無は許可の要件として考慮しない
処分禁止・占有移転禁止以外の作為又は不作為を命ずる仮処分 間接強制 1、発令に保全命令の申立ての取下げがあった場合
2、債務者への送達未着手又は債務者への送達不能の場合において、保全命令の申立ての取下げがあったとき
債務者審尋の有無を問わない
代執行 1、発令前に保全命令の申立ての取下げがあった場合
2、債務者への送達未着手又は債務者への送達不能の場合において、保全命令の申立ての取下げがあったとき
債務審尋の有無を問わない
執行官による執行 1、発令前に保全命令の申立ての取下げがあった場合
2、債務者への送達未着手又は債務者への送達不能の場合において、
①執行申立前に、保全命令の申立ての取下げがあり、又は執行期間が経過したとき
②執行官が執行に着手する前に、保全命令の申立ての取下げがあり、又は執行期間が経過したとき(執行に着手していないことこが執行調書等により明らかなときに限る。なお、同一命令に複数の債務者が掲げられているときは、着手の有無は債務者ごとに判断する。)
債務審尋の有無を問わない
仮の地位を創設する仮処分(間接強制、代執行又は執行官による執行を予定しないもの) 仮処分の内容(担保権実行禁止、職務執行停止・代行者選任、従業員たる地位の仮の創設、仮の承諾命令等)により、その効力を実現する手段が異なる 1、発令前に保全命令の申立ての取下げがあった場合
2、債務者への送達未着手又は債務者への送達不能の場合において、保全命令の申立ての取下げがあり、又は執行期間が経過したとき(債務者への命令の送達以外に、当該仮処分の効力実現の手段が予定されているときは、その着手がなかったことも要する)
債務審尋の有無を問わない

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保全処分の担保取戻許可の申立・・・

(担保の取戻し)
民事保全規則第十七条 保全執行としてする登記若しくは登録又は第三債務者に対する保全命令の送達ができなかった場合その他保全命令により債務者に損害が生じないことが明らかである場合において、法第四十三条第二項の期間が経過し、又は保全命令の申立てが取り下げられたときは、債権者は、保全命令を発した裁判所の許可を得て、法第十四条第一項の規定により立てた担保を取り戻すことができる。
2 前項の許可を求める申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 保全命令事件の表示
二 当事者の氏名又は名称及び住所(債務者を特定することができない場合にあっては、その旨)並びに代理人の氏名及び住所
三 申立ての趣旨及び理由
四 保全命令の正本が担保権利者である債務者以外の債務者に対する保全執行のため執行機関に提出されているときは、その旨
3 前項に規定する申立書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。
一 保全命令の正本。ただし、前項第四号に規定する場合における当該正本を除く。
二 前項第四号に規定する場合にあっては、その旨を証する書面
三 事件の記録上明らかである場合を除き、保全命令により債務者に損害が生じないことが明らかであることを証する書面
4 債務者は、第一項の担保に関する債権者の権利を承継したときは、保全命令を発した裁判所の許可を得て、その担保を取り戻すことができる。
5 前項の許可を求める申立ては、第二項第一号から第三号までに掲げる事項を記載した書面でしなければならない。この書面には、債務者が第一項の担保に関する債権者の権利を承継したことを証する書面を添付しなければならない。

保全処分の担保取戻許可の申立ては、日記簿に登載して受付がされます。

①申立権者

担保提供者又はその承継人です。

②管轄

審判前の保全処分申立事件が係属した家庭裁判所です。

③民事保全規則17条1項の申立書には次の事項を記載します。

保全命令事件の番号及び事件名

当事者並びに代理人の氏名・住所

申立の趣旨及び理由

申立の趣旨としては、担保の取り戻しの許可を求める旨及び供託による立担保の場合は、供託所、供託番号、供託金又は供託有価証券、支払保証委託契約による立担保の場合には保証銀行等、保証年月日、保証限度額

申立の理由として、保全命令により債務者に損害が生じないことが保全命令を発した裁判所に明らかであることの具体的事由

保全命令の正本が担保権利者である債務者以外の債務者に対する保全執行のため執行機関に提出されているときは、その旨

④許可の手続

裁判所は、申立理由を審査し、許可要件を具備していると認められるときは、裁判官が申立書に許可印を押し、申立人に許可書の正本が交付されます。

債務者に対する告知は不要です。

不許可の裁判に申立人は抗告することは認められません。

この場合、債権者は、改めて担保取消の申立をすることになります。

担保取消の申立に対する判断は担保取消の裁判ではないので、債権者、債務者とも許可、不許可の裁判に即時抗告はできません。

⑤担保の取戻請求

債権者は、担保の取戻しの許可書の正本を供託所に提出して担保の取戻請求します。

この場合、確定証明書の添付は不要の取り扱いです。

また、銀行等も立担保者が支払保証委託契約に基づく保証債務の消滅届をする場合、担保取戻の許可書の正本をその証明書面と認める扱いをしています。

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