遺言執行者の報酬・・・

遺言執行者の報酬・・・

遺言執行者の報酬は、遺言者が遺言で定めることができます。

また、家庭裁判所が報酬を付与する審判をしたとき、遺言執行者は報酬請求権を得ます。

報酬を受ける時期は、原則として任務の終了の時とされます。

期間をもって報酬を定めたときは、その期間が経過した後に請求することができます。

遺言執行者の任務が、遺言者の責に帰すべからざる事由によってその執行事務の中途において終了したときは、遺言執行者は、そのすでになした執行事務の割合に応じて報酬を請求することができます。

(遺言執行者の報酬)
民法第1018条 家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
2 第648条第2項及び第3項の規定は、遺言執行者が報酬を受けるべき場合について準用する。

遺言執行者の報酬の定めは、遺言者の通常の意思を推定した規定ですから、遺言者が、遺言で、これと異なる意思表示をしたときは、その意思に従うものとされています。

遺言者は、遺言執行者の報酬を無報酬としたり、額を定めたり、その支払時期を定めたりすることができます。

この意思表示は、必ず、遺言でなされなければなりません。

遺言執行者の報酬に関する遺言は、遺言者の死亡の時に効力を生じます。

遺言執行者の報酬は、相続財産の負担となります。

(遺言の執行に関する費用の負担)
民法第1021条 遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。ただし、これによって遺留分を減ずることができない。

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遺言執行者の報酬付与の申立・・・

遺言者が遺言執行者の報酬を定めていない場合には、遺言者の意思が無報酬で執行させることにあったと推測されない限り、遺言執行者は、家庭裁判所に報酬付与の審判の申立をすることができます。

(遺言執行者の報酬)
民法第1018条 家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
2 第648条第2項及び第3項の規定は、遺言執行者が報酬を受けるべき場合について準用する。

民法1018条の規定に基づく遺言執行者の報酬付与審判申立事件は、甲類審判事項です。

①申立権者

遺言執行者に限るとされます。

②管轄

相続開始地の家庭裁判所です。

③添付書類

申立人、遺言者の戸籍謄本

財産目録

遺言書の写し

遺言執行報告書、その他報酬決定に参考となる資料

④審判手続

家庭裁判所が報酬を付与するか否か、報酬を付与する場合の額を定めるに当たって斟酌する事情としては、相続財産の多寡、種類、分布状態、遺言者との関係、指定遺言執行者又は選任遺言執行者の別、就職から執行完了までの所要日数、執行職務の内容、難易の程度、遺言執行者の職業、収入などを考慮します。

遺言執行者の執行行為に対する相続人その他利害関係人の評価が斟酌されることもあります。

遺言執行者が任務の懈怠を理由として解任された場合には報酬は与えられません。

遺言執行者は、原則として、遺言執行が終了しなければ報酬を請求することができません。

遺言者が遺言で、これと異なる定めをしているときは、その意思に従います。

遺言執行者が執行事務完了の中途において死亡したときは、その相続人が報酬を請求することができると解されます。

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遺言執行者の報酬付与の審判の効力 ・・・

遺言執行者の報酬を付与する審判は、遺言執行者に告知されることにより効力を生じます。

報酬付与申立を認容する審判、却下する審判のいずれについて即時抗告は認められていません。

遺言執行者の報酬請求権は、家庭裁判所の報酬付与審判によって形成されます。

報酬付与の審判は、報酬の負担者である相続財産に対して給付を命じていませんから債務名義とはなりません。

遺言の執行に関する費用は相続財産が負担すると規定されていますが、この規定の趣旨は、遺言執行者は遺言の執行に関する費用を相続財産の中からこれを支弁することができるとともに、相続財産の額を超える費用を相続人に請求することはできないことを定めたものと解し、遺言執行者がその執行につき必要な費用を立て替えて支払ったときには、民法1012条による民法650条1項の準用により、相続人に対して費用を償還することができるが、その場合、各相続人に対して請求し得る額は、費用を、全相続財産のうち相続人が取得する相続財産の割合に比例按分した額であり、かつ、相続人が取得した相続財産の額を超えない部分に限ると解するのが公平の観念にも合致し、同法1021条の趣旨にも合致するとした事例があります。

(遺言執行者の権利義務)
民法第1012条 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 第644条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。

(受任者による費用等の償還請求等)
民法第650条 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

(遺言の執行に関する費用の負担)
民法第1021条 遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。ただし、これによって遺留分を減ずることができない。

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遺言執行者の報酬の判例・・・

遺言執行者は弁護士で、事務処理期間は2年7ヶ月、財産額1億4700万円、遺贈財産は株式及び不動産で、不動産は賃貸中で遠隔地所在のものが多く、これを遺言者が指定した割合で相続人8名に帰属させる分割協議を成立させ、報酬額は200万円とした事例があります。

指定遺言執行者による遺言執行行為の存在を認定した上、家庭裁判所が定めた遺言執行者の各相続人が相続により取得した財産の割合で按分して負担すべきであるとして、これを争う相続人の支払金額を認定し、その支払を命じた事例があります。

相続財産管理人の報酬について、管理人は弁護士で、事務処理機関は3年10ヶ月、財産額約4250万円、主な事務は、株券の処分に絡まる紛争の解決、株券の回収、無住不動産の管理、売却、特別縁故者に対する事情聴取、意見書の作成、提出等で報酬額は500万円とした事例があります。

相続人が報酬債務を履行しないときは、通常の訴えによって請求します。

この場合、訴訟裁判所は家庭裁判所の決定した額に拘束されると解されます。

遺言執行者は、報酬債務の履行を受けるまで、相続財産を留置することができます。

(留置権の内容)
民法第295条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

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