遺言執行者の職務執行停止・職務代行者選任・・・

遺言執行者の職務執行停止・職務代行者選任・・・

遺言執行者の解任の申立があっても、解任の審判があるまで、遺言執行者はその地位にあり、任務を遂行することができます。

(遺言執行者の解任及び辞任)
民法第1019条 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。
2 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

解任の審判の申立人は、本案申立についての審判が効力を生ずるまでの間、遺言執行者の職務の執行を停止し、又はその職務代行者の選任を家庭裁判所に申し立てることができます。

後見人解任申立事件を本案とする職務執行停止・職務代行選任事件において、当事者間に禁治産者の資産をめぐって深刻な争いがある場合には、一方当事者の推薦する弁護士を職務代行者に選任することは相当ではないとして、即時抗告審で原審判を変更して職務代行者選任の裁判をした事例があります。

遺言執行者の職務執行停止・職務代行者選任審判は審判前の保全処分であって、その申立は家事雑事件です。

①申立権者

本案審判の申立人です。

②管轄

本案審判の係属する裁判所です。

③保全処分を求める事由を疎明する資料です。

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遺言の無効・・・

遺言は一般原則として、次のような遺言は無効とされます。

①法定の方式によらない遺言

(遺言の方式)
民法第960条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

②満15歳に達しない者がした遺言

(遺言能力)
民法第961条 15歳に達した者は、遺言をすることができる。

③遺言をするときにおいてその能力を有しない者がした遺言

民法第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

④所定の方式によらない成年費後見人・口がきけない者がした遺言

(成年被後見人の遺言)
民法第973条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師2人以上の立会いがなければならない。
2 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に附記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

(秘密証書遺言の方式の特則)
民法第972条 口がきけない者が秘密証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第970条第1項第3号の申述に代えなければならない。
2 前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。
3 第1項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第970条第1項第4号に規定する申述の記載に代えなければならない。

⑤欠格証人が立ち会った遺言

(証人及び立会人の欠格事由)
民法第974条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
1.未成年者
2.推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
3.公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人

⑥2人以上の者が同一の証書でした遺言

(共同遺言の禁止)
民法第975条 遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。

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遺贈方法と受遺者選定を委託する遺言の無効 ・・・

第三者に遺贈の方法・受遺者の選定等を委託する遺言については、判例は次のようにしています。

遺言は法律の認めた一定の事項に限りすることのできる行為であり、遺言によってなしうる財産処分としては遺贈、寄付行為及び信託の設定が認められているところ、本件遺言は特定の財産を除くその余りの全遺産の処分を第三者の委ねることを内容とするものであり、右の遺言によってなしうる財産処分のいずれにも該当しないとした事例があります。

この判決は、原告主張のように、本件遺言は他の遺言により特定遺贈の対象とされた財産を除くその余りの全財産の遺贈の方法、受遺者の選定及びこれが複数のときはその遺贈額の決定を第三者乙に委託したものと解し得るとしても、現行法上遺贈の内容の決定を第三者に委託する旨の遺言を認める規定はなく、受遺者のごとき遺贈の内容の本質的な部分についてその決定を第三者に一任するような内容の遺言は代理を禁止する民法の趣旨に反するものであり、許されないとして、代理権限を証する書面として本件遺言書を添付した遺贈を登記原因とする所有権移転登記申請を却下した決定に違法はないとしました。

原告は、本件遺言は有効と解されている受遺者が遺贈の目的物を受遺者の選定する他人に分与すべき負担を負わせる負担付遺贈と同趣旨に帰するから有効と解すべきであると主張しましたが、これには負担付遺贈の内容は遺言者自身によって決定されるものであり、これと遺贈の内容の決定を第三者に委託する旨の遺言と同一に論ずることはできないとしています。

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相続人を指定する遺言の無効・・・

遺言でなし得る財産処分としては、遺贈、寄付行為、信託の設定が認められています。

甲又は乙との養子縁組を希望しながら拒絶された者がした「第一相続人甲を指定、第二相続人乙を指定」等の自筆証書遺言は遺贈を定めたものではなく、民法上認められていない相続人の指定を定めたものとして、この遺言は効力を生じる余地はないとした事例があります。

(相続に関する胎児の権利能力)
民法第886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

(子及びその代襲者等の相続権)
民法第887条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
民法第889条 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
1.被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
2.被相続人の兄弟姉妹
2 第887条第2項の規定は、前項第2号の場合について準用する。

(配偶者の相続権)
民法第890条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

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