公示催告で除権決定・・・
公示催告の申立は、手形の支払地の管轄の簡易裁判所で行います。
公示催告の申立があると、裁判所は掲示板への掲示、並びに官報への掲載により公示催告の公告をします。
公告には、もしその手形について手形上の権利を争う者がいれば、一定期日までに、権利を争う旨を裁判所に届け出なければ、手形が無効になることが記載されます。
公示催告に応じて、期間内に権利を争う者が現れた場合、公示催告手続は中止され、以降、手形をなくした公示催告申立人と、権利を争うことを申し出た現在の手形所持人のいずれが権利者であるかが争われることになります。
現在の手形所持人が善意取得を証明できれば、裁判所では手形の権利は善意取得者に認められることになります。
定められた期間内に権利を争う者が現れなかった場合、その手形が無効であることが、裁判所により宣言され、これを除権決定といいます。
除権決定がなされれば、手形をなくした公示催告申立人は、再び手形についての権利を行使することができるようになります。
除権決定正本と引換えに、支払を受けることができます。
なくした手形は存在していても、権利行使はできなくなり、新たに善意取得は生じず、除権決定を知らないで受け取った人がいたとしても、その人は手形の権利を取得することはできません。
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手形の善意取得される場合・・・
手形を盗んだ人から、事情を知らずに裏書の連続している手形を譲り受けた人は、手形の権利者となれるかが問題となります。
法律は、権利者らしい外観を信じ、事情を知らないで無権利者との手形取引に応じた者である善意取得者を保護することとしています。
善意取得者として認められるためには、次の3つの要件を満たすことが必要です。
①裏書が連続した手形の所持人からの取得である。
裏書が連続していれば、所持人は権利者らしい外観を有するといえます。
②手形法的流通方法による取得である。
権利移転的効力又は質入の効力を有する裏書による取得です。
③譲受人の善意無重過失
善意とは譲渡人が無権利者であることを知らないことであり、無重過失とは取引をする上で通常必要とされる注意を払ったのに譲受人が無権利者であることを知りえなかったことをいいます。
①と②については、手形上に裏書の証拠が残っています。
③の譲受人の善意無重過失については、争われることがあります。
手形の取得者は裏書が連続していればそれ以上調査を求められません。
しかし、譲渡人の素性が分からない場合で、怪しいと感じられるような場合には、不審な手形ではないかについて調査する義務があり、手形の取得者がその調査を怠った場合は重過失であったとされる場合があります。
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手形の人的抗弁の切断とは・・・
人的抗弁とは、手形債務者が特定の債権者に対して、手形の支払を拒める権利をいいます。
例えば、山田さんが田中さんに商品代金として手形を振り出し、田中さんがそれを斉藤さんの借入金の返済として裏書譲渡した場合を考えます。
山田さんは田中さんに商品到着に先立って手形を振り出したのに、田中さんから納期までに商品が送られてこなければ、山田さんはそれを理由として売買契約を解除したり、同時履行の抗弁権を主張することができます。
田中さんは山田さんとの契約について債務を履行していませんから、手形による支払を受け取ることはできません。
山田さんは田中さんの債務不履行を理由に、手形の支払を拒絶し(人的抗弁)、不渡異議申立手続をすることができます。
また、斉藤さんが事情を知らないで手形の裏書譲渡を受けた場合、山田さんは斉藤さんに対して主張したのと同じことを主張して支払を拒むことができるかが問題となります。
この場合、斉藤さんは善意の手形取得者となり、山田さんは斉藤さんに対しては支払を拒むことはできず、これを人的抗弁の切断といいます。
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