手形訴訟の手続とは・・・

手形訴訟の手続とは・・・

手形訴訟の特徴は次になります。

①審理が迅速で、通常は1回の口頭弁論で終わり、提訴から2ヶ月ほどで判決が出ます。

②証拠が書面に限られているので、手形を所持している者が有利になります。

③判決には「仮執行宣言」がつきますので、判決が確定する前でも強制執行ができます。

④判決に不服がある場合には異議申立てという特別な手続をとることができます。

手形訴訟を提訴する裁判所は、手形金額によって違います。

手形金額が90万円以下の場合は支払い地を管轄する簡易裁判所、90万円を超える場合は支払い地を管轄する地方裁判所に提訴します。

この訴訟では、多くの場合、手形の所持人が勝訴するので、所持人が提訴するのが通常です。

判決に不服ならば、敗訴した振出人、裏書人や保証人は同じ裁判所に異議申立てをすることができますが、ここからは通常の訴訟として審理される事になります。

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手形の書換に応じる場合とは・・・

手形の書換を依頼してくる振出人は、資金繰りが悪化しているのは明白です。

しかし、振出人と受取人にはいろいろな事情がありますから、断れずに書換に応じざるを得ない時もあります。

この場合、新しく書き換えた手形も危険です。

もし可能であれば、手形金額の一部を支払ってもらい、残金に関してだけ書換に応じるとか、裏書人を入れてもらうとか、保証人をつけてもらう交渉をすべきです。

これらと並行して必ずしておかなければならないことは、旧手形を一度取引先銀行に支払呈示しておくことです。

そして、新手形を受け取った後で依頼返却の手続をします。

所持人は、返却された手形を振出人に返さずに、自分の手許に残しておきます。

旧手形に裏書人がいる場合には、新手形が不渡りになっても、旧手形は交換所に提示してあるので、その裏書人への遡求権が失われる事はありません。

旧手形の裏書人が新手形の裏書に同意しないにもかかわらず、やむを得ずに書換に応じなければならない場合には、必ず依頼返却をする必要があります。

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手形を盗難・紛失した場合・・・

盗難・紛失にあった手形・小切手が善意の第三者にわたった場合、もとの手形上の権利を失い、振出人は善意の第三者からの支払い請求に応じなければなりません。

未使用の手形・小切手が盗難・紛失した場合には、支払銀行には、未使用手形小切手用紙喪失届を、警察には盗難届又は紛失届を直ちに提出します。

届け出ておけば、喪失届を受けた番号の手形用紙を使ってあるものは、届出印が押してあっても、銀行は支払わないよう配慮してくれます。

しかし、届出から3ヶ月をすぎると照合漏れで支払っても銀行は責任を負わないので、大量の未使用手形・小切手用紙を盗まれたり紛失した場合は、届出印を変更する必要があります。

振出人が署名した手形を受取人に渡す前に事故にあった場合は、支払銀行に事故届を提出します。

支払いの差止めをしてもらい、同時に盗難届又は紛失届を提出して捜査を依頼し、第三者に渡るのを防ぎます。

その手形を無効にするために、裁判所に公示催告の申立をして除権判決をだしてもらいます。

受取人又は裏書によって取得した人が、手形・小切手を盗難・紛失した場合は、振出人に頼んで支払銀行に事故届を提出してもらいます。

警察に盗難届、紛失届を提出するとともに、裁判所に公示催告の申立をして除権判決を出してもらいます。

この判決で手形がなくても振出人に手形を請求できるようになります。

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偽造手形の支払い・・・

手形の偽造とは、権限のない者が他人の名義を偽って手形を振り出したり裏書したりすることをいいます。

偽造手形を振り出された被偽造者には、所持人が偽造手形である事について、善意が悪意かに関係なく、手形上の支払責任はありません。

支払銀行に取立に回された時点で、印鑑照合などによって偽造手形であることが発見された場合は、第2号事由で不渡りになりますから、不渡り処分を避けるために支払銀行を通じて異議申立てを行います。

この場合は、預託金は免除されます。

例えば、経理担当者が届出印を盗用して偽造手形を振り出したとしたら、支払銀行は事故届が出ていない限りわかりませんから、そのまま支払うことになります。

当座勘定規定には、「手形に押されている印影を届出印と相当の注意をもって照合し、相違がないと認めれば支払う。そして、それが偽造手形であっても銀行は責任を負わない」とされています。

事実上、被偽造者が支払うことになります。

また、事故届が出されていて銀行が不渡り扱いにした場合でも、民法上の使用者責任を問われて、手形外で損害賠償請求ができます。

雇用関係のない外部の者に偽造された場合には、被偽造者に手形上の責任はありませんが、民法上の損害賠償責任があります。

手形を偽造した者は、刑事上の有価証券偽造罪と民事上の不法行為責任を負います。

偽造手形の所持人は、偽造者に手形上の責任を追求できるかについて、手形上に偽造者の名前が出ていませんから、責任を負わなくてもよい、というのが原則です。

しかし、それでは不条理なので「代理権を持っていない者が勝手に代理行為をした場合は、自ら手形上の責任を負う」という手形法の条項を適用して、偽造者に支払い請求ができます。

偽造手形に裏書をした場合、あるいは正当な手形に偽造の裏書をされたものを受け取って裏書した場合は、手形行為独立の原則によって、偽造である事を知らずに裏書したとしても、所持人から遡求されれば支払わなくてはなりません。

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