小切手の不渡の種類と対処・・・
小切手を呈示しても、支払銀行が支払拒絶を宣言してしまうと、小切手は不渡となってしまいます。
この支払拒絶宣言は、支払銀行が支払呈示日に支払いを拒絶するという旨の内容と、その理由、日付、支店長名を記し、押印することによってなされます。
支払拒絶宣言によって小切手が不渡になったら、まず原因を調べなければなりません。
振出人の当座預金口座に小切手の記載金額以上の資金がない場合の不渡を1号不渡事由といいます。
小切手の形式や裏書が不備の場合の0号不渡事由や、偽造や盗難などの問題により不渡となる場合の2号不渡事由があります。
小切手について、同一の振出人が6ヶ月以内に2回の不渡を出すと、振出人には銀行取引停止処分が下されます。
不渡処分の対象となるのは、口座の資金不足による1号不渡事由と偽造などによる2号不渡事由です。
支払呈示期間内であるにも関わらず、小切手が不渡になった場合、受取人は振出人や裏書人に対して担保責任を追及することができます。
しかし、振出人に対する請求は6ヶ月で時効が成立してしまうので、振出人に支払の意思がないと判断したら、相手の財産を仮差押したうえで、小切手訴訟を起こし、裁判をします。
盗難や偽造などの2号不渡事由については、これによって不渡処分が下されることがないように、異議申立をすることが必要です。
振出人は異議申立預託金を準備し、銀行に異議申立を依頼します。
異議申立預託金は、小切手金と同額でなければなりません。
また、不渡処分を免れる方法として、小切手を呈示した人に依頼して、取引銀行から支払銀行に小切手を返却してくれるように頼んでもらう、依頼返却という方法があります。
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不渡小切手の振出人と裏書人へ請求・・・
小切手が不渡になったとき、小切手の所持人は、振出人や裏書人に対して、遡及権を行使して支払いを請求することができます。
ただし、小切手の所持人は、小切手要件を満たしている小切手を振出日から10日間の支払呈示期間を守って呈示していなくては、遡及権を確保することはできません。
そうでなければ、銀行による支払拒否があった場合、振出しのもととなる債権や利得償還請求権を使って支払い請求をしなければならなくなります。
小切手が不渡になってしまい、振出人や裏書人に対して支払を請求するときは、銀行によって支払が拒否されたという事実を証明するものが必要です。
銀行は、支払拒絶をしたときに、小切手上に「支払拒絶宣言」と記しますが、この小切手が、遡及権を確保する拒絶証書にもなります。
小切手用紙に「拒絶証書不要」の文句が記載してあっても記載されていなくても、この支払拒絶宣言があれば、拒絶証書を作成する必要がなくなります。
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小切手の消滅時効期間・・・
約束手形の時効期間は3年ですが、小切手の時効期間は6ヶ月です。
小切手の所持人が、呈示期間内に小切手を呈示したのにもかかわらず、支払がなされなかったときは、所持人は振出人や裏書人に対して支払いを請求する権利があります。
この権利は支払呈示期間終了後6ヶ月経過すると時効消滅します。
時効を迎えるまでの6ヶ月の初日は呈示期間が終了した日の翌日になり、初日不算入で計算されます。
裏書人が小切手所持人に小切手金を支払った場合、裏書人は振出人若しくは自分より前の裏書人に対してその金額を請求できますが、この権利も6ヶ月経過してしまうと時効消滅します。
この請求についての時効の起算点は、小切手を戻した日、又は訴訟の申立日から6ヶ月です。
小切手が不渡になって、振出人に対する請求権も時効になってしまっても、振出しのもとになった債権や利得償還請求権によって支払い請求をすることができます。
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小切手訴訟と除権決定・・・
小切手金の支払い請求をしているにもかかわらず、振出人や裏書人が支払に応じないときは、小切手訴訟を起こすことになります。
小切手訴訟では、書類しか証拠として取り扱わず、1回の審理で終了し、2~3ヶ月のうちに判決が下されます。
勝訴判決が出れば、すぐに強制執行することができます。
小切手が不渡になってしまったら、時効が成立する前の6ヶ月以内に小切手訴訟を起こします。
裁判所は、小切手金額により決まり、140万円以下の場合は被告の住所又は小切手金の支払地を管轄する簡易裁判所、140万円を超える場合は同じく被告の住所又は小切手金の支払地を管轄する地方裁判所となっています。
また、振出人から小切手を受け取った所持人が小切手の盗難に遭ったり紛失した場合も、銀行に事故届を提出し、警察に盗難届や紛失届を提出し、その後、支払委託の取消を出してもらいます。
所持人が提出する事故届、支払委託の取消しの申出は、振出人に頼んで支払銀行へ出してもらうことになります。
小切手は呈示期間が短いため、実際には、盗難に遭っても小切手として使えなくなることが多いのですが、それでも振出しの原因次第では利得償還請求権を行使される危険があります。
そこで、小切手の効力を無効にすることが必要になり、この小切手の権利としての効力を失わせる手続を除権決定といいます。