手形の依頼返却とジャンプとは・・・

手形の依頼返却とジャンプとは・・・

支払期日までに手形金を用意できず、不渡りが確実になった場合でも、不渡りを回避できる方法があります。

これを依頼返却と手形のジャンプといいます。

手形の所持人が銀行に取立委任をして取立銀行が支払銀行に支払呈示を受けている手形を、支払わずにそのまま返却してくれるように依頼する事を依頼返却といいます。

このとき振出人は、手形の所持人にお願いして取立銀行に依頼返却を申し出てもらわなければなりません。

所持人の手に手形が戻ってくれば、とりあえず振出人は不渡りを避ける事ができます。

この場合、所持人から保証人や担保を要求される可能性は大です。

不渡りが確実になった場合、振出人が所持人にお願いして支払期日を延期してもらう方法があります。

これを手形のジャンプといいます。

これには新たに手形を書き換えてもらう方法と、支払期日を訂正して先に延ばしてもらう方法があります。

手形を書き換えてもらう場合は、500万円の手形が不渡りになりそうなときは所持人に100万円を支払って、残金の400万円について手形を振り出すというように、一部を支払って、残りを書き換えるのが一般的です。

書換を依頼してくる場合は、資金的に苦しい時です。

書き換えた手形も不渡りになる可能性は高いのです。

依頼された所持人は、新たに裏書人を入れることを要求したり、旧手形の裏書人全員が新手形に裏書する事を条件に出すでしょう。

支払期日を変更する場合には、裏書人全員の同意が必要ですので、振出人だけでなく、裏書人にも訂正箇所に訂正印を押してもらわなくてはなりません。

手形の書換は、振出人にとって最後の方策です。

手形所持人の立場からも、支払人が不渡り処分を受けてしまえば、回収が難しくなります。

この際に、保証人や裏書人の追加などで債権の保全を図らなくてはなりません。

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手形書換後の旧手形とは・・・

手形の書換に応じてもらった場合、旧手形を返してもらうのが原則です。

しかし、書換を依頼した振出人は弱い立場にいますから、返してもらえないこともあります。

このような場合、手形の所持人が新手形の支払期日に支払いを求めてきた場合、二重払いを避けるために、新旧の手形両方を返してもらえばよいですし、もし新手形の支払期日前に旧手形によって支払い請求されたら、新手形の期日まで支払いを猶予してもらうよう主張します。

しかし、手形が書き換えられたことを知らない善意の第三者に裏書譲渡された場合には、振出人はその所持人からの支払い請求を拒む事はできません。

そのようなことを避けるために、旧手形の表面に「支払期日平成23年2月11日の手形と書換済み」というように書き込みます。

こうしておけば、旧手形が裏書譲渡されていたとしても、その所持人は書換えの事実を知っていたことになるので、振出人は新しい所持人からの旧手形による支払い請求を拒む事ができます。

また、旧手形の表面に「指図禁止」あるいは「裏書禁止」というように裏書禁止文句を書き込ませてもらうことです。

これによって、旧手形が裏書譲渡されたとしても、所持人に対する支払義務は裏書人が負う事になります。

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代表取締役個人の不渡り責任とは・・・

代表取締役は会社から職務を委任され、職務を忠実に遂行する義務があります。

もし、これに反して会社に損害を与えると、会社に対して損害賠償義務を負わなければなりません。

これは会社に対する賠償義務であって、会社と取引する第三者に対するものではありません。

法人と代表取締役は別の人格です。

不渡りを出した場合、もちろん経営者としての道義的責任はありますが、商法上は代表取締役に支払い責任はないのです。

代表取締役が支払期日にお金を支払える見込がないのに手形を振り出したと認められる場合には、悪意又は重大な過失があったとして、その代表取締役は手形の所持人に賠償義務を負う事になるわけです。

手形を振り出す権限のない他の取締役も、代表取締役の職務を監視する立場にあるので、代表取締役が手形を乱発するのを放置していると、同じように賠償義務を問われることになります。

また、会社といっても名ばかりで、事実上は、その社長個人が運営している場合には、代表取締役の責任を追及することが出来る場合があります。

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不渡手形と相殺・・・

取り立て委任した手形が不渡りになった場合、債権回収を考えなければなりませんが、もし所持人が振出人に対して借金や買掛債務があれば、これを相殺できます。

債権、債務を相殺する場合には、一方が内容証明郵便で債権と債務を相殺する旨の通知をすればすみますが、債務を手形債権で相殺する場合には、この通知のほかに、手形を呈示しなければなりません。

手形債権による相殺は、手形金額の一部だけでもできますから、可能な限り相殺して回収すべきなのです。

手形金額の全額を相殺する場合には、手形を振出人に渡して、相手が持っている債権証書などと交換します。

手形金額よりも債務のほうが多い場合は、当然その差額は所持人の債務として残ります。

また、手形金額の一部を相殺する場合、手形金額が100万円で債務が50万円の場合には、手形を渡してしまうわけにはいきませんので、手形を呈示して「手形金のうち50万円が相殺で消滅」などと手形面に記載してもらいます。

この場合にも、相手が持っている債権証書などを貰っておく必要があります。

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