白地手形と原因債権の時効更新・・・
手形の記載欄の空白部分を補充していない手形を白地手形といい、法律上、白地手形は手形として不完全なものとされています。
しかし、裁判所の判断では、白地手形の場合でも手形訴訟を起した場合には、時効は更新するとされています。
白地手形であったとしても、手形所持人が手形金の支払を請求しようとしてるのは明確であるからだとされています。
また、手形上の債権と、手形の原因となった債権は別々のものです。
手形訴訟を起こして手形上の時効を更新させたにもかかわらず、その売買などの原因債権のほうが時効にかかってしまい、支払い請求ができなくなってしまうと、手形訴訟が無駄になってしまいます。
裁判所の判断では、手形金請求訴訟を起こした場合には、手形の時効が更新されるとともに、原因債権の時効も更新されるとしています。
令和2年4月1日施行の民法改正では、①消滅時効の時効期間、②起算点、③時効障害事由が変更されました。
①②消滅時効の時効期間は、原則として「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使することができる時から10年」のいずれか早い方とされました。
わかりやすくいうと、例えば、契約書に弁済期などの権利行使できる時期が記載されているような場合には、時効期間は5年となります。
これは債権者が権利行使できることと、その時期を知っていることが明らかなので、短い時効期間の5年となるわけです。
ですので、契約書などを交わし、弁済期を決めているような場合には、消滅時効の時効期間はすべて5年になるということです。
また、この改正によって商法による消滅時効の規定「商取引から生じた債権の消滅時効期間を原則5年とする」が廃止され、民法の規定に統一されました。
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手形の利得償還請求権・・・
一定の条件を満たしている場合には、手形所持人に利得償還請求権という特別な請求権が認められています。
利得償還請求権は、債務者に限って請求できる権利で、債務者が受けた利得の限度に限って請求することが認められています。
手形所持人が利得償還請求権を行使するための要件は3つあります。
①手形上の権利が消滅していることです。
例えば、全ての振出人・裏書人・保証人への手形金請求権の時効が成立しているような場合です。
また、支払呈示を怠ったために手形金請求ができないような場合です。
②手形を振り出す原因となった債権も消滅していることです。
例えば、商品の売買で代金の支払に代えて手形を振り出した場合、代金支払請求権は消滅してるため、この要件を満たします。
③手形を交付したり譲渡したことで、商品を得ながらも代金を支払わなくてすんでいる、といった利得を得ているような債務者がいる場合です。
債務者がこのような利得を得ていることが必要です。
手形の権利が消滅してしまったり、その原因となった債権も時効にかかっていたり、手形所持人の権利行使の万策が尽きているような場合には、上記の条件を満たせば、手形の権利とは関係なく、利得償還請求権を行使して債務者に請求できるのです。
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紛失、盗難で手形をなくした場合・・・
手形を紛失や盗難でなくしてしまったような場合、手形をなくしてもその手形の権利を失うものではないのですが、その手形が事情を知らない善意の第三者にわたった場合には、手形をなくしてしまった人は、その手形について権利を失ってしまいます。
手形を紛失や盗難によってなくしてしまった場合には、まず警察に届け出ます。
届け出たら、警察では必ず遺失届受理証明書又は盗難証明書を発行してもらい、公示催告の申立に提出する書類になります。
警察への届出と同時に、振出人に手形がなくなったことを連絡し、振出人から支払銀行に対する事故届の提出を依頼して、支払銀行がその手形が提示された際に支払に応じてしまうことを防ぐ必要があります。
当座勘定取引契約の相手方である振出人から事故届が提出されれば、支払銀行は手形の支払に応じませんが、手形をなくした人からの事故届は受け付けません。
簡易裁判所に公示催告を申し立てることになります。
これは除権決定を得る前提であって、なくなった手形を無効にし、手形をなくした人が手形がなくてもその手形についての権利を行使できるようにするために必要な手続です。
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