養子を実子と届出して慰謝料請求・・・

養子を実子と届出して慰謝料請求・・・

夫妻は、結婚後5年経っても、子供ができず、夫の姉が5人目の女の子を産んだため、養女に貰い受けることにしました。

夫妻は、後々貰い子と言われるのはかわいそうだと思い、自分たちの子として届け出ました。

しかし、慣れないことでもあるために、授乳もうまくいかず、このためなかなかなくきもしなかったことから、6年後には、実の親である姉のところへ返してしまいました。

自分の実子として届け出ているので、離縁というわけでもなく、結局実親のところに養子縁組としました。

しかし、その直後に妻が妊娠し、無事男の子を出産したのです。

すると、友人が、戸籍をこのままにしておくと、養子縁組で戸籍上はいなくなった姉の子も実子ということになっているから親の財産を相続できると、言うのです。

そこで、夫妻は、姉の子を相手方として、家庭裁判所に親子関係不存在の調停を申し立てたが、こんな事情を知らない姉の子は、夫妻の言い分を聞かないので、裁判に至りました。

本件で、姉の子は、夫妻に対し、夫妻のした行為は不法なものであり、したがって精神的ショックに対し慰謝料を払えと反訴を提起しました。

裁判所は、その主張を全面的に認め、夫妻に対して慰謝料の支払を命じました。

夫妻の実子として届け出た行為は、一応縁組意思があると考えるべきであるが、これを子の同意その他正当な理由なしに、勝手に撤回する行為に及んだ場合には、縁組の予約を超えて、事実上の養親子関係の不当破棄に準じて、その法的保護を図るべきであるとしました。

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実父の死亡後の認知請求・・・

花子さんは、20歳のOLで、母と2人暮らしをしています。

花子さんには、父はおらず、正確には父はいるのですが、認知されないまま2年前に亡くなりました。

花子さんは、それでも父親に認知をしてもらいたく、調べたところ、父が死んでからでも、認知の請求ができることを知りました。

民法では、婚姻届のある正式な夫婦の間の子以外の子を非嫡出子といい、嫡出でない子と、その父は、戸籍法の定めに従い認知届をした場合に限って、法律上の父子関係を認めます。

父が嫡出でない子を、自分の子であると承認しただけでは効果はありません。

ただし、民法の方式に従った遺言書で認めれば遺言認知として効果があります。

父親が認知してくれなければ、裁判にして認知させることができます。

これを裁判認知や強制認知といいます。

父親が死亡していても、死亡の日から3年以内なら認知請求の裁判を起せます。

相手は、公的立場から検察官を相手取ることになり、花子さんは成人に達していますから、母に関係なく自ら訴えを起こすことができます。

認知の判決があると、その効果は出生のときに遡り、花子さんは生まれたときから父と法律上の親子関係があったことになり、父の遺産を相続できます。

しかし、父の死後の認知の場合は、遺産分割の話し合いがすんだ後では、認知された子は、現物である土地や建物などの分割請求はできません。

自分の相続分に見合うだけの価額評価をして、既に相続した他の相続人から、その受けた相続分に応じ、金銭で支払ってもらうことになります。

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実父の死亡後3年の親子関係消滅・・・

花子さんは、飲食店で働いており、そこで知り合った太郎さんと良い仲になってしまい、女の子を出産しました。

しかし、太郎さんには、妻子がいたのです。

それでも太郎さんは、義理堅い人で、奥さんとも相談したといって毎月10万円の扶養料を届けてくれました。

ところが、太郎さんは、突然交通事故で死亡してしまいました。

太郎さんが死亡しても、奥さんが必ず毎月10万円の仕送りをしていたのですが、太郎さんが死亡してから3年が経過した頃から仕送りが途絶えてしまいました。

花子は、生活ができなくなり、奥さんの家を訪ね、相談しましたが、冷たく断られてしまいました。

花子は太郎と結婚したわけではありませんから、生まれた子供は、嫡出ではありません。

しかし、嫡出でなくても認知をしてもらって親子関係を法律上認めてもらうことができるし、また、死亡した後でも3年間は認知の訴えができます。

(認知の訴え)
民法第787条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から3年を経過したときは、この限りでない。

また、太郎は、生前、花子に子供の扶養料を支給しているから、その子供が自分の子供であることは認めているわけですが、ただ、そのような事実があっても法律的には認知の届出をしなければ認知の効力がないのです。

太郎の奥さんが太郎の死亡後、3年以上花子に対して扶養料を仕送りしていたので、太郎に対して認知請求する必要がありませんでした。

しかし、太郎の死亡後、3年が経った今、花子は、認知請求することはできなくなり、法律的に扶養料を請求することはできないのです。

結婚の場合は、内縁関係として法律上保護されるのですが、認知届のなされていない婚姻外の子供は全く法律上保護される余地がないのです。

扶養料を請求するか否かを問わず、相続権を主張するか否かを問わず、婚姻外で産んだ子供の母としては、必ず認知してもらって届出をすませるか、又は死亡後は必ず3年以内に認知の訴えを起こして親子関係を法律的に明白にしておく必要があるのです。

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