相続財産管理人の職務・・・

相続財産管理人の職務・・・

相続財産管理人については、不在者財産管理人に関する民法27条から29条及び家事審判規則32条から37条までの規定がそれぞれ準用されます。

(管理人の職務)
民法第27条 前2条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
2 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
3 前2項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

(管理人の権限)
民法第28条 管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

(管理人の担保提供及び報酬)
民法第29条 家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
2 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

家事審判規則第三十二条 家庭裁判所は、いつでも、その選任した管理人(不在者の財産の管理人をいう。以下この節において同じ。)を改任することができる。
2 家庭裁判所が選任した管理人は、その任務を辞しようとするときは、家庭裁判所にその旨を届け出なければならない。
3 前項の届出があつた場合には、家庭裁判所は、更に管理人を選任しなければならない。

家事審判規則第三十三条 家庭裁判所は、その選任した管理人に対し財産の状況の報告及び管理の計算を命ずることができる。
2 民法第二十七条第二項の場合には、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人に対しても前項の報告及び計算を命ずることができる。
3 前二項の報告及び計算に要する費用は、不在者の財産の中からこれを支弁する。

家事審判規則第三十四条 家庭裁判所は、管理人に対しその供した担保の増減、変更又は免除を命ずることができる。

家事審判規則第三十五条 管理人の不動産又は船舶の上に抵当権の設定を命ずる審判が効力を生じたときは、裁判所書記官は、その設定の登記を嘱託しなければならない。
2 前項の嘱託には、抵当権の設定を命ずる審判書の謄本を添附しなければならない。
3 前二項の規定は、設定した抵当権の変更又は消滅の登記にこれを準用する。

家事審判規則第三十六条 管理人は、民法第二十七条第一項又は第二項の規定により財産の目録を作成する場合には、二通を作成し、その一通を家庭裁判所に差し出さなければならない。
2 家庭裁判所は、前項の財産の目録が不充分であると認めるときは、管理人に対し公証人に財産の目録を作成させることを命ずることができる。

家事審判規則第三十七条 本人が自ら財産を管理することができるようになつたとき、又はその死亡が分明となり、若しくは失踪の宣告があつたときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の申立てによつて、その命じた処分を取り消さなければならない。

民法の規定に従って選任された相続財産の管理人が同法103条所定の権限を超える行為をしようをする場合には同法953条、28条によりあらかじめ家庭裁判所の許可を得ることを要し、しかも本件のような控訴の取下げは同法103条所定の権限を越える行為であると解すべきところ、管理人は家庭裁判所の許可をあらかじめ得ることなくして控訴を取り下げの申立をしたのであるから、この申立は無効であるとされます。

(権限の定めのない代理人の権限)
民法第103条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
1.保存行為
2.代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
民法第953条 第27条から第29条までの規定は、前条第1項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。

死因贈与者(被相続人)は書面によらない死因贈与の取消権を有しますが、右取消権は一身専属権ではないために相続財産の管理人はこれを承継し、管理人は家庭裁判所の許可を得て被相続人の書面によらない死因贈与を取消すことができます。

相続人が自ら財産を管理することができるようになったとき、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求によって、その命じた処分を取消さなければなりません。

この申立は家事雑事件です。

相続財産管理人選任後、相続人のあることが明らかになり、相続人が相続を承認したときは、右管理人の代理権は消滅し、右管理人が当事者になっている訴訟は中断し、右相続人が右訴訟を受継ぎします。

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相続財産管理人の公告・催告・・・

相続財産管理人は、相続債権者、受遺者に対し、権利申出の公告をします。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
民法第957条 第952条第2項の公告があった後2箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、2箇月を下ることができない。
2 第927条第2項から第4項まで及び第928条から第935条まで(第932条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

相続財産管理人は、知れたる債権者には各別にその申出を催告しなければなりません。

相続債権者の限定承認相続人に対する、限定承認の清算手続きを実施するに当たり、本件連帯保証債務の存在を認識していなかったとしても、これを認識していなかったことに過失があるとする民法934条1項の損害賠償請求に対して、その根拠規定である民法79条3項が、個別に請求の申出を催告する対象を「知れたる債権者」としていることからすると、民法934条1項の損害賠償責任を負うのは、相続の限定承認に基づく清算手続きの実施の時点において、限定承認者が相続債権者あるいは受遺者であると認識していたにもかかわらず、あえて当該債権者等の対し個別の催告をせず、又は、失念あるいは法律の規定の不知により個別の催告を怠ったような場合に限られると解すべきであり、限定承認により相続人の責任が軽減され、あるいは官報への公告の周知性が極めて低いことなどからすると、限定承認者は相続債権者を調査の上、催告をする注意義務を負う旨の原告の主張は、前記条文の文言に反するし、官報への公告の周知の方法がとられているにもかかわらず、重ねてそのような注意義務を一般的に相続人に課すこと自体相当でないとして、その主張を採用しなかった事例があります。

(債権の申出の催告等)現在削除されています
民法第79条 清算人は、その就職の日から二箇月以内に、少なくとも三回の公告をもって、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
2 前項の公告には、債権者がその期間内に申出をしないときは、その債権は清算から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、清算人は、知れている債権者を除斥することができない。
3 清算人は、知れている債権者には、各別にその申出の催告をしなければならない。
4 第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。

(不当な弁済をした限定承認者の責任等)
民法第934条 限定承認者は、第927条の公告若しくは催告をすることを怠り、又は同条第1項の期間内に相続債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによって他の相続債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなったときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。第929条から第931条までの規定に違反して弁済をしたときも、同様とする。
2 前項の規定は、情を知って不当に弁済を受けた相続債権者又は受遺者に対する他の債権者又は受遺者の求償を妨げない。
3 第724条の規定は、前2項の場合について準用する。

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相続財産管理人の債務弁済と遺贈の履行 ・・・

相続財産管理人は、民法に規定に従って相続債務の弁済及び遺贈義務の履行を行ないます。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
民法第957条 第952条第2項の公告があった後2箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、2箇月を下ることができない。
2 第927条第2項から第4項まで及び第928条から第935条まで(第932条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

相続債権者は、被相続人から抵当権の設定を受けていても被相続人の死亡前に仮登記がされていた場合を除き、相続財産法人に対して抵当権設定登記手続きを請求することはできず、管理人は、被相続人から生前に抵当権の設定を受けた者からの設定登記手続請求を拒絶することができるし、また、これを拒絶する義務を他の相続債権者及び受遺者に対して負うと解されています、

相続財産管理人は公告期間の満了後、相続財産をもって、各相続債権者に、その債権額の割合に応じて弁済をします。

ただし、優先権を有する債権者の権利を害することができません。

(公告期間満了後の弁済)
民法第929条 第927条第1項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。

この「優先権を有する債権者の権利」に当たるというためには、対抗要件を必要とする権利については、被相続人の死亡の時まで対抗要件を具備していることを要し、相続債権者は、被相続人から生前に抵当権の設定を受けていても、被相続人死亡の時点で設定登記がされていなければ、被相続人の死亡前にされた抵当権設定の仮登記に基づいて被相続人の死亡後に本登記がされた場合を除き、他の相続債権者及び受遺者に対して抵当権に基づく優先権を対抗することができません。

債権者に弁済後その後に受遺者に対して弁済します。

(受遺者に対する弁済)
民法第931条 限定承認者は、前2条の規定によって各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

相続財産の額が債権額に満たないときには一般債権者の間において公平を期するため、それぞれの債権額の割合に応じて配当弁済します。

また、管理人は、不当な弁済をして損害を与えた場合には損害賠償義務を負うと定められています。

(不当な弁済をした限定承認者の責任等)
民法第934条 限定承認者は、第927条の公告若しくは催告をすることを怠り、又は同条第1項の期間内に相続債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによって他の相続債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなったときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。第929条から第931条までの規定に違反して弁済をしたときも、同様とする。
2 前項の規定は、情を知って不当に弁済を受けた相続債権者又は受遺者に対する他の債権者又は受遺者の求償を妨げない。
3 第724条の規定は、前2項の場合について準用する。

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相続財産管理人の債務弁済と強制執行・・・

相続財産管理人の清算手続きによらず強制執行により相続債務の弁済を得ることが行なわれています。

これについては、公告期間の満了前は、管理人は相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができるから、民事執行法39条1項8号を類推して、右期間の満了に至るまで執行手続を停止すべきであるが、右期間の満了後は、債務名義を得ている一般債権者がその権利行使のために強制執行手続をすることについて、これを許されないものと解すべき根拠はなんらないとして相続財産管理人がいる場合でも債権差押命令の申立が許されるとした事例があります。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
民法第957条 第952条第2項の公告があった後2箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、2箇月を下ることができない。
2 第927条第2項から第4項まで及び第928条から第935条まで(第932条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

(公告期間満了後の弁済)
民法第929条 第927条第1項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。

(強制執行の停止)
民事執行法第39条 強制執行は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。
1.債務名義(執行証書を除く。)若しくは仮執行の宣言を取り消す旨又は強制執行を許さない旨を記載した執行力のある裁判の正本
2.債務名義に係る和解、認諾、調停又は労働審判の効力がないことを宣言する確定判決の正本
3.第22条第2号から第4号の2までに掲げる債務名義が訴えの取下げその他の事由により効力を失つたことを証する調書の正本その他の裁判所書記官の作成した文書
4.強制執行をしない旨又はその申立てを取り下げる旨を記載した裁判上の和解若しくは調停の調書の正本又は労働審判法(平成16年法律第45号)第21条第4項の規定により裁判上の和解と同一の効力を有する労働審判の審判書若しくは同法第20条第7項の調書の正本
5.強制執行を免れるための担保を立てたことを証する文書
6.強制執行の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の正本
7.強制執行の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の正本
8.債権者が、債務名義の成立後に、弁済を受け、又は弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書
2 前項第8号に掲げる文書のうち弁済を受けた旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、4週間に限るものとする。
3 第1項第8号に掲げる文書のうち弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、2回に限り、かつ、通じて6月を超えることができない。

一般債権者が個別に相続財産に対する強制執行によって権利の実現を図る場合においては、相続財産をもって債務を完済できないことが明らかになり、公平に弁済して清算すべき義務の履行が不可能になった場合には、直ちに破産申立をすることが要請されていましたが、新破産法では、遺言執行者、相続財産管理人に破産申立義務はなくなりました。

相続財産関係事件は、一般的には、資産や負債の規模は小さく、複雑な権利関係が存在しない場合が多いと考えられることから、多くの場合には、限定承認手続等民法上の簡易な清算手続きにより処理することが可能であること、相続債権者、受遺者は必要な場合、自ら申立をすることができることなどにより、遺言執行者、相続財産管理人に破産申立義務を課すまでの必要性はないとされます。

一般債権者の個別執行による偏りにある弁済の結果が生じるおそれのあるときは破産手続に委ねることを法が予定しているものと考えるのが相当である、とされています。

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