仮処分の種類と処分内容・・・

仮処分の種類と処分内容・・・

仮処分の種類 担保等の種類 処分内容
<不動産の仮処分>
占有移転禁止の仮処分
仮登記担保
不動産譲渡担保
債務者に不動産の明け渡しを求める際に、第三者が勝手に占有していて明け渡しの強制執行が困難になることなどを防止するために名義変更や第三者に占有を移すことを禁止させます。
処分禁止の仮処分 仮登記担保
不動産譲渡担保
債務者が不動産を譲渡したり、質権・抵当権・賃借権などを設定することを禁止させます。
<動産の仮処分>
占有移転禁止の仮処分
所有権留保
動産譲渡担保
債務者が勝手に動産をどこかに隠匿させることを禁止させます。

通常は執行官に保管させるように申立てを行います。

<債権の仮処分>
取立て・弁済禁止仮処分
債権譲渡
債権質
債権譲渡担保
債務者に対して第三債務者への取立てを禁止させ、第三債務者に対しては債務者への弁済を禁止させます。

債務者が譲渡は無効だと主張して債権譲渡の効力に争いがある場合などに用いられます。

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仮差押と仮処分の申立から執行・・・

裁判所に保全命令の申立てをし、申立書にその保全手続を求めるのか、具体的な保全の内容は何か、どのような債権の保全を求めるのか、どうして保全を求めるのかの理由を記載します。

その上で、被保全債権があることやその内容と保全の必要性を疎明する証拠資料や、目録、謄本や商業登記簿などを添付して裁判所に提出します。

申立てをする裁判所は、後日訴訟を提起する裁判所と同じになります。

通常は、債務者の住所地の裁判所・差押などをする不動産所在地の裁判所、あるいは契約書などで合意管轄が定められているときはその裁判所になります。

仮処分をかける財産や債務者のどの債権を差し押さえするのかについては、「物件目録」や「仮差押債権目録」で特定することになります。

不動産仮処分の場合には登記簿の内容をそのまま記載することで特定できますが、仮差押債権目録の記載は、債務者の、第三債務者の対する、いつ発生した、どの種類の債権で、給付の内容や金額はいくら、などを記載して特定します。

また、仮差押ができるのは被保全債権の債権額までですから、仮差押をかける債権が被保全債権より額面が大きい場合には、「**のうち頭書金額に満つるまで」とします。

また、被担保債権が存在することを疎明しなければならず、契約書などの証拠を提出します。

「疎明」とは、訴訟で求められる「証明」よりも緩やかな立証でよいとされています。

また、保全手続をしなければならないかの「保全の必要性」の疎明も求められます。

債務名義もない債権者の仮差押で債務者を倒産させることは保全手続の許容範囲外なので、債務者に影響の少ない財産に対するものでなければ裁判所は認めてくれません。

主債務者に十分な資産があるのに、いきなり連帯保証人の財産への仮差押は認められません。

給料債権に対する仮差押は、よほどの必要性がなければ認められません。

裁判所は債権者に、債務者が被るかもしれない損害の賠償を担保させるための保証金を求めます。

保証金の額は、仮差押をする目的物、仮処分の目的物の評価額を基準として、一定の割合が定められています。

裁判所の担保決定がなされたら、その金額をすみやかに担保提供し、担保決定から3~7日の間に担保提供しないと申立てが却下されることもあります。

第三債務者に対する債権の存否などを確認するために、仮差押命令の申立てと併せて「第三債務者に対する陳述催告の申立て」を行うことができます。

仮差押決定・仮処分決定が出て担保の提供も済んでいると、裁判所・執行官は保全執行してくれます。

ただし、申立人が改めて執行官に仮差押執行・仮処分執行の申立てをしなければ執行をしてくれないものがあります。

これらについては債権者に保全命令が送達されてから2週間以内に執行官に対して保全執行の申立てをしなければなりません。

仮差押決定が出ると、債務者はその財産の譲渡や抵当権や質権などの担保権設定などの処分ができなくなります。

仮に第三者に譲渡し、担保権設定をされても、強制執行の際には執行できます。

仮処分決定の場合には、仮処分の対象財産を第三者が譲り受け・占有していても、元々の債務者だけを相手にして強制執行できるようになります。

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債務名義を得る裁判所手続・・・

債権に基づいて強制執行するための債務名義を取得するのが、訴訟などの裁判手続になります。

担保権に基づき競売申立てができる抵当権・動産質権などを除けば、担保を提供させていても強制執行をするための債務名義を取得する必要があるのです。

裁判手続には、当事者の話し合いを基本とする手続である即決和解や調停から、債権者の一方的な言い分だけで行う支払督促、双方の言い分を争う訴訟があります。

訴訟の中には、1回で決着がつく小額訴訟や、手形小切手債権の請求をする場合に簡易迅速に審理する手形小切手訴訟もあります。

手続が簡易だからといって小額訴訟を提起しても、債務者が小額訴訟に同意しなければ通常訴訟になりますし、調停で決着がつかないような場合には最終的に通常訴訟を提起せざるを得なくなります。

裁判手続 当事者の呼称 選択する要素 長所・短所
即決和解(簡裁) 申立人
相手方
任意の話し合いで債権・債務関係に合意がなされ、それを債務名義にすることに債務者が同意している場合。 迅速に債務名義を取得できる。

本来の債権・債務関係以外の内容も和解条項に盛り込める。

債務者が応じなければ和解はまとまらない。

調停(簡裁・地裁) 申立人
相手方
債権・債務関係に争いはあるが任意の話し合いでまとまる可能性がある場合。 話し合い解決になるため、わだかまりを残さず決着できる。

本来の債権・債務関係以外の内容も調停条項に盛り込める。

比較的時間を要する。

合意に至らなければ不成立となり解決にならない。

支払督促(簡裁) 債権者
債務者
債権・債務関係に争いがなく、債務者が異議を述べる可能性が低い場合。 一方的な言い分で債務名義を取得できる。

最も簡易迅速に債務名義を取得できる。

債務者が異議申立てをすると訴訟手続に移行せざるを得ない。

訴訟(簡裁・地裁) 原告
被告
債権・債務関係に争いがあり、話し合いで解決が見込めない場合。 争いがある場合でも裁判所の終局的な判断をあおげる。

終結までに長期間を要する。

小額訴訟(簡裁) 原告
被告
請求額が60万円以下の小額で債務者が債務そのものに争いのない場合。 原則1回の期日で決着がつく。

手続が簡易。

債務者が小額訴訟手続に同意しないと通常訴訟に移行する。

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