譲渡担保とは・・・

譲渡担保とは・・・

譲渡担保とは、債務者等の担保提供者から債権者にある財産を譲渡することによって担保の目的を達しようとするものです。

例えば、担保物の工作機械の所有権を債権者に移転し、この工作機械を債権者から借りて、仕事を続け、弁済期が到来し債権者に債務を支払えば工作機械の所有権を返してもらいます。

弁済できない場合は、工作機械の返還を受ける事ができず、それによって債権債務の清算をするという約定をいいます。

譲渡担保契約には次の2つの場合があります。

①当事者間の債務は存続し、担保物はその債務の担保として所有権の移転をするというものです。

②担保物について売買の形式を取り、債務者が後に売買代金を買主に払い戻し、担保物の所有権を取り戻すものをいいます。

これを売渡担保といいます。

売渡担保では、債務者が約定の弁済期に債務の弁済ができないと、担保物の買戻しができなくなり、当事者間では債務について清算の必要がありません。

債権者に債務関係の清算義務がないと、債務者にとっては厳しい約定担保になります。

普通の譲渡担保では、債務者が債務の弁済を出来ない場合でも、債権者は担保物を処分し、その売却代金から債権の元本や遅延損害金等を回収し、残額があるときは担保提供者に返還して清算を行います。

これを清算型譲渡担保といいます。

不足分が出れば債務者側に請求する事になります。

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譲渡担保の流れとは・・・

ある物について譲渡担保を設定すると、その担保物の所有権は債権者に移転します。

担保提供者は、債権者からこの担保物を借りて、使用を続けることになります。

担保物を借り受けているような売渡担保の場合では、賃貸借契約のような契約になります。

債権者に支払う賃料は利息に当たります。

通常の譲渡担保では、担保物を担保提供者が無償で借り、被担保債権の利息を別に支払うという、形態をとっています。

弁済期に債務の弁済があれば、担保物の所有権は担保提供者に返還されます。

弁済がなければ、譲渡担保を実行することになり、担保提供者は債権者から担保物の引渡、明渡請求を受ける事になります。

債権者は譲渡担保権を実行した場合は、目的物を処分し、その売買代金を債権の弁済に充て、残額が残れば担保提供者に返還します。

この際に、目的物を適正に評価し、その評価額と債権額との差額を担保提供者に交付するのが、望ましいとされています。

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譲渡担保と第三者・・・

譲渡担保の当事者間では、担保物の所有権移転は債権担保として行われますが、これは債権者と担保提供者との間の契約で行われます。

第三者との関係では、担保物の所有権は債権者に移転します。

担保提供者は、目的物について、賃借人又は使用借人になります。

債権者が債務の弁済期前に、第三者に担保物の所有権を移転した場合、第三者はその所有権を取得する事になります。

担保提供者としては、勝手に売られてたわけですが、この場合債権者に対して、民事上の債務不履行の責任の追及しかできません。

また、担保提供者は、担保物を第三者に処分する事は当然出来ません。

担保提供者から担保物を買い受けた第三者があったとしても、その第三者はその担保物を取得できないのが原則です。

ただし、第三者がその物を譲渡担保の目的物である事を知らず、そのことについて過失なく買い受け、引渡を受けたときは即時取得の権利を有し、取得する事ができるとされています。

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譲渡担保の設定とは・・・

譲渡担保の設定は、債権者と担保提供者との間の譲渡担保設定契約によってなされます。

担保設定者は、通常、債務者がなりますが、第三者がなる場合もあります。

譲渡担保によって担保される債権は、特定されている債権だけでなく、不特定の債権でも被担保債権になります。

不特定の債権の場合を根譲渡担保といいます。

譲渡担保契約もこれを第三者に対抗するためには、対抗要件を備えなければなりません。

担保物が動産であればその担保物の引渡、不動産であれば所有権移転登記が対抗要件となります。

債権が譲渡担保の目的である場合は、債務者への通知若しくは債務者の承認が対抗要件になります。

動産の担保物であるとき、引渡が対抗要件になりますが、譲渡担保の場合、現実の引渡がありません。

しかし、民法では、譲渡担保の場合を「占有改定」として、一つの引渡としています。

例えば、譲渡人がある物を譲受人に譲渡したが、譲渡人が引き続き、譲受人の占有代理人としてその物を所持し続けた場合、占有代理人として占有しているので、譲渡人がそのように意思表示すれば、引渡を受けたことになるのです。

譲渡担保の目的物が動産である場合、担保物の引渡が対抗要件になりますが、この引渡は現実の引渡に限る必要はなく、この占有改定でよいとされています。

占有改定という方法によって引渡を経ていれば、それで動産の譲渡担保権者はその権利を第三者に対抗できます。

なお、譲渡担保契約は目的物を債務者などの担保提供者のもとにおいてその使用を認めますから、契約でその物件の賃借又は使用貸借の契約を結び、担保提供者に現状を変更しない事を条件に使用を認める事を合意しておく必要があります。

譲渡担保設定等契約書のひな形とは・・・

譲渡担保設定等契約書

債権者****株式会社を甲、債務者株式会社****を乙とし、甲乙は、本日、次の契約を締結する。

第1条 乙は、甲に対し、甲乙間の平成**年**月**日付金銭消費貸借契約に基づく借受金債務として残元金***万円、利息**万円、及び残元金に対する平成**年**月**日から支払い済みに至るまで年**%の割合による遅延損害金の各支払義務のあることを確認する。

第2条 乙は、甲に対し、前条の金員全部を平成**年**月**日限り、甲の本社に持参又は送金して支払う。

第3条 乙は、前条の債務の支払を担保するため、次条以下の約定により、その所有する末尾記載の****機械**台及びその付属設備、****機械器具一式(以下「本件物件」という。)を甲に譲渡し、甲は、占有改定の方法によって本件物件の引渡を受けた。

第4条 甲は、乙に対し、第2条記載の弁済期日まで、本件物件を無償で使用せしめるものとし、乙は、これを借り受けた。乙は、本件物件の修理費用等、本件物件を使用することによって生ずる一切の費用を負担するものとする。

第5条 甲は、本件物件を担保の目的以外に使用しないものとする。

二 乙は、本件物件について、他の第三者のために譲渡、質入、貸与その他の処分をしてはならない。

三 乙は、本件物件の使用、保管には善良なる管理者の注意を用い、本件物件について甲の所有権を害する第三者の行為があった場合は、それが、差押、仮差押、仮処分その他いかなる事故であっても、これを直ちに甲に通知しなければならない。

第6条 乙が第3条の債務を履行したときは、本件物件の所有権は当然に乙に復帰し、甲は、乙に対し、直ちに本件物件を簡易の引渡によって引き渡す。

第7条 甲は、何時でも本件物件を乙が設置する場所に赴いて、その点検をすることができ、乙は、これに協力しなければならない。

第8条 乙について次の事由が発生したときは、乙は、第2条記載の期限の利益を失い、本件物件について使用貸借も当然に終了するものとする。

(1)乙が第三者より仮差押、仮処分、競売、強制執行を受け、若しくは乙に対し、破産の申立があったとき

(2)乙が本契約のいずれかの条項に違反したとき

第9条 乙が、第3条の金員の支払を怠ったときは、第4条の使用貸借は当然に解除され、その時点における適正な評価額をもって、本件物件の所有権は甲に帰属する。

第10条 前条の場合、評価額が第1条の債務額に満たないときは、乙は、甲に対し、直ちにその不足額を支払わなければならない。

二 前条の場合、評価額が第1条の債務額を超過するときは、甲は、乙に対し、本件物件の引渡を受けるのと引き換えに、その超過額を支払わなければならない。

第11条 前条1項の場合、乙は、甲に対し、直ちに本件物件を現実に引き渡さなければならない。

二 前条2項の場合、乙は、甲に対し、超過額の支払を受けるのと引換えに、本件物件を現実に引き渡さなければならない。

物件の表示

1、****機械 **台

2、上記1の付属設備

3、****機械器具一式

本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各自署名の上その1通を保持する。

平成**年**月**日

住所 ***********

(甲) ****株式会社
代表取締役 **** 印

住所 ***********

(乙) 株式会社****
代表取締役 **** 印

譲渡担保の債権回収とは・・・

被担保債権について債務の弁済が行われないとき、債権者は譲渡担保権を実行する事になります。

この場合、普通の清算型譲渡担保では、被担保債権につき弁済期に債務の弁済が行われないときには目的物件を時価で評価し、又は他に処分して換価し、その価額と債権額との間に差額があるときは、これを担保提供者に返還して清算を行います。

非清算型譲渡担保では、目的物件の価額と債権額との間に差額があっても清算することなく、債務の弁済がなされない場合には、目的物件の所有権は当然に債権者に帰属するとされていました。

ただ、この非清算型の譲渡担保について判例で「貸金債権担保のため債務者所有の不動産につき譲渡担保契約を締結し、債務者が弁済期に債務を弁済しないときは右不動産の債務の弁済にかえて確定的に債権者の所有に帰せしめるとの合意のもとに所有権移転登記が経由されている場合において、債務者が弁済期に債務の弁済をしないときは、債権者は目的不動産を換価処分するか又はこれを適正に評価することによって具体化する価額から債権額を差し引き、残額を精算金として債務者に支払うことを要し、精算金の支払と引き換えでなければ目的物の引渡を請求することができない」としています。

判例は、清算義務を伴わない流れ担保的譲渡担保は原則的に認めない立場を明らかにし、債権者に清算義務があることとしました。

また、判例は、非清算型譲渡担保の精算金の有無及びその額の確定時期については、「債権者が債務者に対し精算金の支払若しくはその提供をした時若しくは目的不動産の適正評価額が債務額を上回らない旨の通知をした時、又は債権者において目的不動産を第三者に売却等をした時を基準として、確定されるべきである。」としています。

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