人工授精による親子の法律関係・・・
他人の精子提供による人工授精(AID 非配偶者間人工授精)は、子供の出生後、夫が生まれた子供との親子関係を否定するという危険性があります。
この点について、民法やその他法律に何らの規定がなく、学説も父子関係を認めるものと認めないものとがありました。
法務省では、基本ルールを規定しています。
夫の精子でも他人の精子でも、子供を出産した女性を母親とする。
例えば、子宮に問題はないが、卵子に問題があって妊娠出産できない女性が、他人の卵子を使って出産した場合にも適用されます。
もし医療ミスなどで受精卵の取り違えなどが起こっても、法律上は、あくまで産んだ女性を母親とするということです。
ただし、事実婚の女性が人工授精などにより出生した場合、相手の男性が同意してたとしても、それだけでは父子関係を認めないことになっています。
また、死亡した夫の凍結保存精子を用いた場合も、原則嫡出子として扱われません。
また、父子関係は、夫が人工授精による出産に合意していなくても、夫の精子を使用して妊娠出産した場合には、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」という民法772条の規定を適用し、その夫が子供の父親とみなされることになりました。
夫の同意があれば、他人の精子により生まれた子供も、夫との間に父子関係が成立します。
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ストーカーへ警告と禁止命令・・・
ストーカー行為等の規制に関する法律は、それまで野放し状態だったストーカーの規制と、被害者の保護を目的としています。
規制対象となる行為は、「つきまとい等」と「ストーカー行為」とに分けられています。
つきまとい等とは、特定の相手への恋愛感情や好意の感情を満たすため、その相手や関係者などに対し、次の行為をすることをいい、同一の相手にその行為を反復して行うことをストーカー行為と定めています。
①つきまとい、待ち伏せ、住居・勤務先・学校への押しかけや見張り
②面会や交際の強要
③著しく粗野又は乱暴な言動
④無言電話、しつこい電話やファックス
⑤性的羞恥心を害する言葉を言ったり、羞恥心を害する文書や写真を送付する
⑥名誉を害する言葉を告げること
ストーカー被害者の保護については、その申出があれば、警察等は、①警告、②禁止命令等を行うことになっています。
その行為が「つきまとい等」と判断すれば、申出を受けた警察署長は、その行為者に反復してつきまとい等をしないよう警告します。
この警告に従わないと、都道府県公安委員会は聴聞を経た上で、行為の禁止命令を出せます。
ただし、被害者の身の安全や自由が脅かされるなど緊急な場合には、警察署長は聴聞手続きなしで、ストーカー行為者に仮の禁止命令を出せます。
ストーカー行為者には、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
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強姦罪の告訴期間・・・
刑事訴訟法が改正され、強姦の告訴期間の制限が廃止されました。
(強姦)
刑法第177条 暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
強姦は親告罪で、被害者の告訴がないと原則犯人を処罰できませんが、既遂事件については、これまで犯人を知った時から6ヶ月以内だった告訴期間がなくなり、極端にいえば被害者は強姦罪の公訴時効成立(7年間)まで告訴ができることになっています。
告訴期間が廃止された性犯罪は他に、強制わいせつ罪と準強制わいせつ及び準強姦罪があります。
(強制わいせつ)
刑法第176条 13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
(準強制わいせつ及び準強姦)
刑法第178条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。
2 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。
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痴漢や盗撮行為の罰則・・・
満員電車での痴漢行為や盗撮などは、地方自治体の迷惑防止条例などが適用され、例えば、東京都の条例では、痴漢行為の罰則は次のように定められています。
①初心者は6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
②常習者は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
盗撮については、次のように定められています。
①初心者は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
②常習者は2年以下の懲役又は100万円以下の罰金
痴漢は、被害者自身や通報で駆けつけた警察官に現行犯逮捕される場合が多いが、盗撮と異なり、被害者の供述以外に犯人を特定できる物証や目撃者がいないのが普通です。
被害者の近くにいたばかりに、痴漢と間違われ、誤認逮捕されるという場合もあります。
容疑は無罪判決を受けることで晴らせますが、その間の経済的損失や精神的苦痛について、被害者や通報者に慰謝料請求を求めた事例があります。
原告男性は、JR常磐線の電車内で、被害者の少女に約20分にわたって痴漢行為を繰り返したとして、駅で警察官に突き出され、勾留後東京簡裁に起訴されました。
しかし、裁判所は少女の供述が変遷したので、その信用性が低いとして、無罪を言渡しました。
刑事裁判では、無罪が言渡されたのです。
そこで、男性側が少女とその両親を相手取り、今度は民事裁判で、慰謝料など427万円の損害賠償を求めました。
原告男性は、被害者が過去に痴漢を捕まえ示談金を受け取っていたことを挙げ、金目当ての疑いがあるなどと主張しました。
しかし、裁判所は、少女の供述が変遷したのは、長い時間痴漢行為を受け続けて動揺をしたためで、犯行は現実に行なわれたと判断、一方で、男性の事件当日の行動などから、原告側の供述こそ不自然で信用できないとして、刑事事件とは逆の判断を示し、男性の請求を退けています。
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