離婚後の行政上の保護・・・
①児童扶養手当
児童扶養手当法に基づき、離婚後に子供を養育する母親に対して、国が一定額の金銭を支給するものです。
対象となるのは、18歳未満の児童若しくは20歳未満の障害を持っている児童を扶養している母親、又は養育者です。
ただし、次の場合には支給を受けることができません。
・母又は養育者が日本国内にいないとき
・対象児童の住所が日本国内にないとき
・対象児童が里親に委託されたり、児童福祉施設に入所しているとき
・国民年金(老齢福祉年金を除く)や厚生年金、恩給など公的年金を受けることができるとき
・一定額以上の所得があるとき
②児童育成手当
東京都に住んでいれば、児童育成手当を受けることもできます。
内容は、児童扶養手当と同じですが、父子家庭にも支給されます。
ただし、前年の所得が一定額を超えている場合には、支給を制限されます。
③児童手当
子供が3歳未満であれば、児童手当法に基づいて児童手当も支給されます。
ただし、前年の所得が一定額以上の場合には、支給を受けることができません。
④ひとり親家庭医療費助成
離婚などによってひとり親となっている家庭の医療保険について援助を行い、自己負担額を軽減するというものです。
ただし、所得が一定額以上の人は、この助成を受けることができません。
⑤母子福祉資金
一般の金融機関から融資を受けることが困難な母子家庭を対象とした公的な貸付制度として、母子福祉資金があります。
⑥母子生活支援施設
児童福祉法に基づいて設けられた施設で、住む場所の当てがない母子が、安い料金が無料で借りることができます。
⑦公営住宅の優先入居
母子家庭の場合、優先的に公営住宅に入れる処置をとっている地方自治体もあります。
相談は福祉事務所へ
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親権者の指定と変更・・・
親権とは、親が養育すべき子供に対して持つ権利と義務の総称です。
親権は、親である夫婦が結婚している間は、2人が共同で行使することになっています。
子供を監護し教育する身上監護権、子供の財産を管理する財産管理権などから成り立っています。
親権を放棄することは原則として認められていません。
親権者を決める方法は、協議離婚の場合、夫婦で話し合って決めます。
協議で決まらない場合には、調停や審判で決めることになります。
夫婦の話し合いや判決などでいったん親権者が決定されたとしても、子供の利益を守るために必要であれば、家庭裁判所の調停・審判によって、親権者を変更することができます。
親権者の変更の申立は、相手方の住所地の家庭裁判所、又は当事者が合意で定めた家庭裁判所に対して行ないます。
親権の変更が裁判所によって認められるのは、「子の利益のため必要があると認めるとき」です。
具体的には、現在の親権者の養育監護に問題がある場合です。
例えば、父親が親権者となったが、その生活が安定しないため、子供が児童福祉施設に収容されてしまったような場合で、母親から親権者変更申立が認められた事例があります。
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監護権者の指定と変更・・・
離婚の際に親権を得られなかった場合、子供を手元に置くために、監護権を得る方法があります。
監護権は、子供を監護し、教育する権利のことで、親権の一部であり、普通、監護権は親権の中に入っています。
親権が認められなくても、監護権があれば、子供を引き取ることができます。
親権をめぐって争う場合に、夫婦の一方がとにかく子供を引き取りたく、そのためなら親権はいらないというような場合に、親権とは別に監護権者を定める場合があるのです。
監護権者は、夫婦の協議によって定めます。
協議で決まらない場合は、調停・審判で決めることになります。
夫婦の話し合いや判決などでいったん監護権者が決定されたとしても、子供の利益を守るために必要であれば、監護者を変更することができます。
親権者と違って、監護者の変更は、家庭裁判所で調停・審判の手続きをしなくても協議によって行うことができます。
親権者は戸籍に記載されますが、監護者はそれがないためです。
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子の引き渡し請求・・・
裁判で妻に親権が認められたのに、夫が子供を手放そうとしないような場合、子供の親権又は監護権をもつ親は、裁判所の力を借りて、相手に子供の引渡しを求めることができます。
家庭裁判所に審判を申し立てるか、審判前の保全処分や人身保護請求などの制度を使うことができます。
ただし、子供の福祉を考慮して例外的に引渡しが認められないこともあります。
例えば、監護者が子供に対して十分な養育を行なっていなかったり、虐待していたりなどの監護を不適当とする事情があった場合や、子供が自分自身の意思で一方の親のもとに居住している場合は、引渡しが認められません。
子供の引渡しを求める審判が確定するまでには、一定の時間がかかります。
緊急の場合には、審判前の保全処分を申し立てることができます。
この申立が認められると、相手方に対して、審判終了までに子供を引き渡すことが命じられます。
また、人身保護請求とは、人身保護法に定められている手続きで、身体の自由を不当に奪われている者の速やかな解放を目的とするものです。
手続きは、高等裁判所又は地方裁判所に対して申立を行い、請求の手続きは、弁護士を代理人として行なわなければならないことになっています。
申立から1週間以内に審問が開かれ、審問終結日から5日以内に判決が下されます。
子供の引渡しの事例
事件の具体的内容 | 引渡し方法 |
夫と別居後、妻はピアノの個人教師をしながら子供を育てていた。
離婚調停中に夫が妻宅を訪れて口論となり、妻の制止を振り切って子供を連れ去った。 |
審判前の保全処分 |
夫が興信所を使って妻の実家に盗聴器をつけさせ、居場所を調べた上で登校途中の子供をタクシーで連れ去った。 | 人身保護請求 |
11歳の子が、自分の意思で監護者でない者のもとにとどまっていた。
しかし、それは監護者へ嫌悪と恐怖を抱くように仕向けられた結果と判断された。 |
人身保護請求 |
離婚調停中に、夫が子供を保育園から連れ去った。
夫の収入は低く、子供の監護は祖母まかせだった。 |
人身保護請求 |
調停期日に「冬休みの間だけ預かる」と約束した夫が、それを破って子供を返さなかった。 | 人身保護請求 |
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