面接交渉権の請求・・・

面接交渉権の請求・・・

親権も監護権も得られず、子供を引き取ることができなかったとしても、親には自分の子に面会する権利が認められています。

この権利を面接交渉権といいます。

しかし、面接交渉権は無制限に認められるものではありません。

別れた親の側に、飲酒癖や覚せい剤使用などの事情があれば、子供と会うことは制限されます。

また、そのような場合でなくても、制限されることがあります。

父親が別れた母親の監護下にある3歳の子供と会おうとして、面会が認められなかった事例があります。

その子がまだ幼く、母親の手から離れて、異なった環境のなかで父と時間を過ごすことは、少なからぬ不安感を与える恐れがある、というのがその理由でした。

面接方法については、まず夫婦で話し合って決めることになります。

話し合いが進まない場合には、家庭裁判所の調停を利用することができます。

調停では、子供の年齢や性別、性格などを考えたうえで、子供に精神的な負担を与えず、その意向を尊重した取り決めが取り決めができるように、話し合いが進められます。

面接交渉権があるにもかかわらず、もとの配偶者が子供と会うことを拒否した場合には、家庭裁判所に申し立てて、履行勧告を求めることができます。

申立が認められれば、家庭裁判所が子供を会わせるように、相手方に勧告してくれます。

ただし、履行勧告には強制力がありません。

履行勧告が出されたにもかかわらず、相手が子供と会うことを拒絶し続けるようであれば、損害賠償を求めて訴えを起こすことができます。

調停離婚した父親が子供への面会を求めたのに対して、母親がそれを拒絶したのは違法である、とする父親からの損害賠償請求を認める判決が下されたことがあります。

この事例では、調停の結果、父親が月に1回子供と会うということで、夫婦間に合意ができていたにもかかわらず、母親が子供を会わせようとせず、500万円の損害賠償を認めました。

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養育費の支払義務・・・

子供が成長し、社会人として自立するまでに必要な費用を、養育費といいます。

引き取った子供が未成熟子である場合、その全額を夫に対して請求することができます。

未成熟子とは原則として未成年の子ですが、例外的に、20歳を過ぎていても、経済的に自立していなければ、未成熟子にあたります。

成年に達していても、貧血で通常の就職活動ができない状態にある子が、未成熟子とみなされた事例があります。

子供への養育費については、たとえ支払い義務者に経済的に余裕がなくても、その資力に応じて相当額を支払わなければならないとされています。

親は自分の生活レベルを落としても、子供に自分と同程度の生活をさせるだけの養育費を支払わなければなりません。

親族等に対する扶養の義務は、生活保持義務と生活扶助義務があります。

生活保持義務は、自分の最低の生活水準を下回ってでも、相手に同程度の生活をさせなければならないとされています。

生活扶助義務は、義務者が自分の身分相応の生活を犠牲にすることなく、行なえる範囲での扶養をすればよいとされます。

子供に対する扶養義務は、生活保持義務とされます。

養育費には、衣食住の費用、教育費、医療費、適度の娯楽費などが含まれています。

教育費については、次のような判例があります。

①大学の学費

父親に社会的地位や資力があり、子供に大学教育を受けさせることも十分に可能なことを理由に、教育費に含まれるとしました。

父親が医師であることとその子が育てられた家庭の教育的水準にふれて、4年制薬科大学卒業までの学費の支払を命じました。

小学校の教員である父親に、大学卒業までの生活費と学費2分の1の支払を命じました。

②私立高校の入学費用

父親に無断で入学させた事例で、公立高校の場合を基礎にして教育費を算定しました。

③自動車教習代

必ずしも高等教育に伴うものではないとして、教育費に含まれないとされました。

④ピアノのレッスン代

個人的趣味に基づくものなので、教育に関する費用に該当しないとされました。

子供を引き取った妻が、離婚後に別の男性と再婚した場合も、前の夫に対して、引き続き子供の養育費を請求することができます。

子供を扶養する義務は、あくまで親であることに基づいているからです。

しかし、再婚した父親と子供が養子縁組をしたときは、養育費が減額されることもあります。

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養育費の請求と支払い方法・・・

養育費を請求する方法として、協議離婚の場合は、夫婦の合意によって決めることができます。

夫婦間で協議が成立しないときには、家庭裁判所に申し立てて、調停を申し立てます。

調停がうまくいかなけば、審判を行なって決定してもらうことになります。

養育費の支払い方法については、その性質から、原則として定期的に支払わなければならないものとされています。

ただし、養育費を支払う義務がある者が特に希望する場合や、その他特別な事情がある場合には、一括払いも認められています。

例えば、日本人の母親と台湾人の父親との間で離婚が成立した事例で、父親が将来台湾に帰国する予定があり、長期にわたって養育費が定期的に支払われる可能性が低いとして、養育費の一括払いが認められました。

養育費には、原則として税金はかかりません。

しかし、養育費が一括払いの場合は、例外的に贈与税が課されることになります。

また、養育費を支払う側、支払を受ける側の事情が取り決めの時から変化するような場合には、金額の増減を請求することができます。

例えば、子供が病気になったり、学校に通う年齢になった場合には、養育費の増額を請求することが認められています。

養育費の支払が滞ったような場合、まず、養育費に関する取り決めが調停・審判によってされたものであれば、家庭裁判所に履行勧告、履行命令を出してもらうという方法をとることができます。

それでも効果がない場合には、調停証書や審判書を債務名義として、裁判所に強制執行を申し立てることができます。

養育費を協議で定める場合には、口約束ではなく、文書にする必要があり、その文書も公証役場で公正証書にしておけば、相手が支払わなくなった場合に、訴訟等の手続をしなくても、すぐに相手の財産を差押えることができます。

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離婚後の子供の姓と戸籍・・・

親の一方が離婚によって婚姻前の姓に戻ったとしても、子の姓は変更されず、その後も婚姻中の戸籍筆頭者に戸籍が残ります。

戸籍の筆頭者とは、戸籍の筆頭に記載される者ををいいます。

例えば、妻が婚姻の際に夫の姓に変えた場合に、離婚して妻が婚姻前の姓に戻っても、妻が引き取った子の姓は夫の姓のままです。

しかし、妻が親権者として子供を引き取っているような場合に、母親と子供の姓が異なっていると、不都合が生じることがあります。

子の姓が親権者と異なっているので変更したい場合には、家庭裁判所の許可を得て、親権者である父親、又は母親の姓を称することが認められています。

子の姓の変更許可を求めるためには、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出します。

その申立に対して、家庭裁判所は、親権者の意見、子を取り巻く環境、いろいろな事情などを考慮して、子供の姓を変えることがその子の福祉と利益にかなうと判断すれば、許可の審判を行ないます。

この家庭裁判所の許可を求める手続きは、子供が15歳以上であれば、自分自身の判断で行うことができます。

15歳未満の場合には、法定代理人が本人に代わって手続きを行ないます。

法定代理人となるのは、親権者です。

法定代理人とは、法律の定めにしたがって、代理人の地位につく者のことで、民法824条は、親権者を子の法定代理人と定めています。

(財産の管理及び代表)
民法第824条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

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