遺産分割後の共有建物の賃貸借契約・・・
借地借家法の適用を受ける共有建物の賃貸借契約の締結は、その期間が民法602条所定の期間を超えないときであっても、長期間存続する蓋然性が高いから、原則として、共有者全員の同意を必要とするが、共有持分権の過半数によって決することが不相当とはいえない事情があるとき長期間の賃貸借契約の締結も管理行為に当たると解されること、本件の場合、建物の各共有権の行使は、ビル運用による収益を分かち合うことを主目的とし、原告も他の使用方法は予定していなかったことを前提とすれば、賃借人の選定及び賃料の決定は、持分権の過半数によって決すべき事項であるとして、契約をした補助参加人の持分は過半数を超えるから、本件賃貸借契約は有効に締結されたと認めた事例があります。
(短期賃貸借)
民法第602条 処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
1.樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年
2.前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年
3.建物の賃貸借 3年
4.動産の賃貸借 6箇月
(共有物の変更)
民法第251条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
(共有物の管理)
民法第252条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
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遺産分割後の使用貸借契約・・・
乙は母甲所有土地上に建物を建築して所有していたが、乙が死亡したので、妻丙がこれを相続したところ、甲が丙に対して、無断で自己所有地に建物を所有しているとして建物収去土地明渡を求めた事案で、甲は乙丙と本件土地につき、建物所有を目的とする使用貸借契約を締結したと認定した事例があります。
(使用貸借)
民法第593条 使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
相続により土地の単独所有者になった使用貸人である母に対する扶養、監護を使用借人である子が放棄していることにより、当事者間の信頼関係が完全に破壊されている場合、民法597条2項但書の規定を類推適用して、土地使用貸借契約の解約申入れをすることができるとして、使用借人である子に対して建物収去土地明渡し及び使用借人所有建物の賃借人に対して土地明渡しを命じた事例があります。
(借用物の返還の時期)
民法第597条 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
2 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
3 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。
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遺産分割協議と財産分与・・・
本件土地は、夫婦共通の養母の遺産分割で夫が妻に取得させたものであり、夫は亡き養母の2分の1の相続権があったにもかかわらず、円満な夫婦関係を維持するために遺産分割協議により妻に本件土地を取得させたのであり、実質的にみると、夫は本件土地の2分の1の持分権を妻に贈与することにより、妻の財産形成に寄与したものとみることができるから、夫の法定相続分を限度として夫婦財産の清算手続きに組み入れるのが相当であるとして本件土地の財産分与とした事例があります。
(財産分与)
民法第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
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遺言無効確認訴訟・・・
遺言書が実際に作成された日及び実際の作成日と異なる日が記載され、2年近くも遡った日を記載しているときは、単なる誤記というべきではなく、このような遺言書は不実の日付の記載のある作成日の記載がない遺言書と同視すべきであり、自筆証書遺言の方式を欠くものとして無効と解すべきである。
この遺言書とは別に、共同相続人間に遺産分割協議が有効に成立している場合、被相続人の遺産の帰属をめぐる法律関係は、本件協議によって定まるのあり、前記遺言の無効を既判力をもって法律上の必要性はなく、控訴人らに遺言無効確認を求める法律上の利益はないとされます。
(自筆証書遺言)
民法第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
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