銀行預金の消滅時効とは・・・

銀行預金の消滅時効とは・・・

銀行預金の性質として、銀行に預金されたお金の所有権は銀行に移転し、預金者はその返還請求権をもつことになります。

この法的性質は消費寄託契約の一種とみられています。

この返還請求権は債権ですので、原則として消滅時効期間は、民法改正により、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年という規定に改められました(民法166条1項)。

<普通預金>

普通預金のときは、預金者が預入をしたときからいつでも払戻請求ができるので、預入と同時に時効が進行します。

その後、預入や払戻が何回も繰り返されます。

この場合はその1回1回が新取引となるわけですから、預入や払戻が継続している間は消滅時効は進行しません。

最後の預入、払戻の時から5年経過した時に消滅時効にかかるわけです。

現実の問題としては、銀行は預金について消滅時効を援用することはありません。

また、預金利子を支払った時は時効更新事由となるのでしょうか?

預金通帳に利息を記入すれば利息を預金者に交付したことになり債務承認として時効更新事由となりますが、単に銀行内部の元帳に記入しただけでは債務承認とならないとされています。

<当座預金>

当座預金とは、小切手等による支払事務の処理を銀行に委任し、他方その小切手の支払資金を銀行に預け入れることであり、これを当座勘定契約といいます。

預金者が銀行に預け入れたお金は小切手によらなければ払戻請求ができないので、当座契約の終了時(死亡や解約等)に残っていた預金残高につき、その時点から消滅時効が進行します。

当座勘定契約がなくならない限り、当座預金の返還請求権は消滅時効にかからないのでしょうか?

判例によると、当座勘定契約の存続する限り無条件では払戻請求をすることができませんから、当座取引継続中は預金の消滅時効は進行しないとしています。

現実には、当座預金についても銀行が時効を援用することはありません。

長期にわたって取引が行われない当座預金については合意によって解約されるでしょう。

<通知預金>

通知預金については、預金者が通知してから据置期間経過後、預金払戻請求権が発生し、その時から5年で消滅時効にかかります。

<定期預金>

定期預金は、その預金期間中は任意に払戻請求ができませんから、期間満了のときから時効が進行し、5年で時効にかかります。

自動継続定期預金の場合は、期日が来るとそれまでの元利金合計を元金として再び定期預金の預入がなされ、これが繰り返し、継続していきます。

自動継続の回数に制限がなければ永久に継続され、永久に消滅時効にかかりません。

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形成権(取消権)の消滅時効とは・・・

取消権や解除権等を形成権といっていますが、これらの権利は消滅時効にかかるのか、除斥期間になるのでしょうか?

民法126条には「取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする」とあります。

取消権とは、未成年者が親の同意なしに売買などをしても後でこれを取り消す事が出来るような事をいいます。

親は取消しをしないで追認することもできます。

この追認することができるときから5年経過すると取消権は時効で消滅するとうのです。

古い判例では、民法126条の5年は消滅時効期間とし、20年のほうは除斥期間としています。

そして、5年以内に取消権が行使されたときは、それから派生する原状回復請求権とか損害賠償請求権は、さらに別個の消滅時効にかかるとされています。

しかし、現在では、民法126条の5年も20年も除斥期間としています。

取消権には除斥期間しかないと考えられています。

取消権については、法律上、期間が定められているときは、時効によりと書かれていても、その期間を除斥期間と考えられているのです。

他方、法律上、期間の定めのない形成権については、それぞれの権利の性質に応じて、例えば、解除権は解除によって生ずる原状回復請求権と同じく10年、売買予約完結権は予約の完結によって生ずる代金請求債権と同じく10年の除斥期間に服するとされています。

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物件的請求権の消滅時効とは・・・

物権的請求権とは、例えば、土地を買った人が売主に対して持っている土地引渡請求権や土地所有権移転登記請求権、それから土地を他人に侵害された人がもっている所有物返還請求権、妨害排除請求権及び妨害予防請求権の3つの権利を指します。

判例は、これらの物権的請求権は所有権から不断に発生する権利だから消滅時効にかからないとしています。

買主が何十年も登記をしなかったとしても、移転登記請求権は消滅時効にかからないとしています。

土地が農地の場合には、農地売買契約成立だけでは所有権は移転せず、県知事ないし農業委員会の許可があって初めて所有権が移転するので、農地売買契約をしながら許可を受けなかったときは、契約から10年経過すると農地所有権移転登記請求権も消滅します。

正確には県知事等の許可申請に協力を求める請求権が10年の消滅時効にかかるので、移転登記請求権も消滅するとされています。

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抗弁権の消滅時効とは・・・

抗弁権とは、同時履行の抗弁とか保証人の抗弁といったものですが、これらは相手方から請求に対抗して抗弁として主張されるものですから、相手方の請求がある限り抗弁権も消滅しないとされています。

ある人が詐欺にかかって不動産を売ったとします。

詐欺にかかったときは取消しができます。

取消権は追認をすることができるときから5年で消滅します。

取消権が5年で消滅した後になって、詐欺によって不動産を取得した人が履行請求してきた時はどうなるのでしょうか?

この場合には、時効期間経過後も抗弁として詐欺による取消しを主張できるというのです。

請求がある限りは抗弁は主張できるのです。

抵当権の消滅時効とは・・・

抵当権の消滅時効に関しては民法396条と民法397条とがあります。

民法396条には「抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない」とあります。

債務者及び抵当権設定者に対する関係では、債権の存続する限り抵当権も存続し、債権が消滅時効にかかれば抵当権も消滅時効にかかるのです。

債務者及び抵当権設定者以外の関係者である抵当不動産の第三取得者や後順位抵当権者に対しては、抵当権は被担保債権から独立して20年の消滅時効にかかるとされています。

民法397条によると、「債務者又は抵当権設定権者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する」と定められています。

これは、抵当不動産の第三取得者が占有を継続していた場合に適用されるものとみられるのですが、判例は、民法397条は第三取得者には適用されないとしました。

しかし、その後の判例は、抵当不動産の譲渡を受けた第三者も、抵当権の被担保債権の消滅時効の援用をすることができるとしました。

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