手形債権の消滅時効とは・・・

手形債権の消滅時効とは・・・

手形法70条と77条では、為替手形の引受人や約束手形の振出人に対する手形金支払請求債権は満期の日より3年をもって時効にかかるとされています。

また、為替手形の裏書人や振出人、約束手形の裏書人に対する請求権は満期の日より1年となっています。

ちなみに、裏書人に対して請求するときは拒絶証書を作成する必要があるのですが、現実には全ての手形用紙に拒絶証書作成義務が免除されていますので拒絶証書は不要とみてよいのです。

満期の日とは、手形を呈示した日をいいます。

支払いのための呈示は、手形用紙に書いてある支払期日及びこれにつぐ2日間の間にすればよいのです。

ですので、手形用紙にかいてある支払期日と満期とは、必ずしも一致しないのです。

小切手については呈示期間経過6ヶ月で時効にかかります。

手形が原因債権の支払のために振り出されたとき、例えば、売買代金の支払のために手形が振り出されたときは、売買代金請求権は10年、商事なら5年、小売商人の売却代金なら2年で消滅時効にかかり、手形債権は3年で消滅時効にかかります。

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白地手形の消滅時効とは・・・

約束手形の振出人欄には、必ず振出人氏名を書かなければなりませんが、それ以外の金額や振出日や満期の欄には何も書かないで振り出すことができます。

これを白地手形といいます。

このような白地手形は、これを受け取った手形所持人が白地欄に自分で記入してよいとされています。

これを白地補充権といいます。

問題は満期白地の手形の場合、その手形の消滅時効はどうなるのでしょうか?

古い判例は白地補充権を形成権とみて、民法167条を適用し、振出日から20年で消滅時効にかかるしましたが、現在の判例は白地補充行為を商法501条4号の「手形に関する行為」として絶対的商行為とみなし、商法522条の時効5年を準用しています。

白地補充権を手形に関する行為とみるなら、手形債権に準じて3年で消滅時効にかかるとの学説もありますが、判例では5年としています。

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手形の遡及権の消滅時効とは・・・

手形の遡及権とは、手形の振出人が満期に手形金を支払わなかったときに、手形所持人が裏書人に対して手形金を支払えと請求する権利です。

この権利の消滅時効は1年です。

振出人の支払義務3年より先に消滅時効にかかり、遡及権が後に残ることはないのですが、時効の援用や更新などで、場合によっては遡及権が後に残る事もあるのです。

では、手形上の主たる債務が時効によって消滅した後で、手形所持人が裏書人に対し遡及権を行使したらどうなるのでしょうか?

判例では、このような場合は遡及権は行使できないとしています。

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手形の利得償還請求権の消滅時効とは・・・

手形の利得償還請求権とは、手形上の権利が「手続の欠陥又は時効」によって消滅したときに、手形所持人の利益保護のために所持人に認められた権利をいいます。

例えば、手形振出人が手形を第一裏書人に交付し、第二裏書人にこれを裏書譲渡したとします。

手形振出人は、第一裏書人に手形金支払義務を負っています。

しかし、第一裏書人は第二裏書人に裏書譲渡したことで、回収済みになっています。

手形振出人は支払義務を負い、第二裏書人がこれを請求する権利を持っていることになるのです。

この場合、満期から3年経過して時効にかかったとすると、手形振出人は得をし、第二裏書人は損をすることになります。

手形は転々と裏書されている間に3年ぐらい経つ事が多いので、時効によって全てを終了とせず、所持人である第二裏書人は手形振出人に利得償還請求ができるとしたのです。

利得償還請求権の消滅時効と起算日と期間について、判例は「手形債権消滅のときから5年」としています。

この判例も、利得償還請求権を商法501条4号にいう「手形に関する行為」、商行為によって生じた債権に準じて考え、その消滅時効期間は商法522条の5年としたのです。

手形債権の時効更新・・・

手形上の権利を行使するためには手形の呈示を必要とします。

では、手形上の権利の催告には呈示を必要とするのでしょうか?

古い判例では、時効更新のための催告にも手形の呈示を必要としていました。

だとしますと、内容証明郵便で手形金支払を催告したとしても、何の効果も生じないことになってしまいます。

債権者の請求の意思が明白ならば、債権者は権利の上に眠っていないことも明白です。

ですので、権利行使のときには手形呈示が必要だとしても、催告のときまでは必要はないとされたのです。

白地手形の時効更新に関して、判例は白地手形にも消滅時効があり、更新もあるとしていますが、この最高裁の判決にも反対意見があり、その反対意見は、手形の要式性を重視して、補充権を行使し白地を補充したときから時効が進行するとしています。

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