投資信託の値下がりの損害賠償・・・
証券会社の社員から有利で安全な投資信託があると勧められ、買ったのですが値下がりしてしまい、元本割れになり、相当の損害になってしましました。
株式の売買や投資信託のような相場取引については、投資をする者の判断と責任において行なわれるべきもので、投資をによって損害が生じたとしても、その損害についての責任は投資家自身が負うのが原則です。
通常の場合には、投資信託を買って値下がりしたことによる損害が生じたとしても損害賠償請求が認められるものではありません。
しかし、証券会社には投資信託等の元本が保証されない証券取引については、証券会社や証券取引勧誘外務員は、一般投資者に対して取引の仕組みや危険性について的確に説明する義務を負っています。
判例は、証券会社や証券取引勧誘外務員について、一般の投資家は専門家である証券会社の提供する情報や助言等に依存して投資を行なうものであるし、証券会社は、一般投資家を取引に勧誘することで利益を得ているという実態があることを前提として、一般の投資者にとって購入商品の元本が保証されるか否かは、当該商品の購入の可否を判断する際の重要な要素であるから、証券会社又はその証券取引勧誘外務員としては、元本割れの危険性を有する株式投資信託の購入を投資者に勧誘するに際しては、投資者の判断を誤らせることのないよう十分な説明・告知をすることが不可欠であり、特に安全性への指向の強い投資者については、そのことが一層要請されるとしています。
損害賠償が認められるといっても、損害額全額というわけではなく、投資家に株式投資信託を購入するに際して、過失の有無も考慮されます。
投資家に対し、投資家として通常の経済生活を営む社会人であって、株式投資信託が銀行預金とは異なり元本割れが伴うものであることは常識として知りうべき立場にあったことや投資信託のパンフレットを検討したり、証券会社の担当者に説明を求めることができたのにそれらをしなかったことに過失があったと認定して、結局損害額の3割の金額を損害賠償として支払うよう命じています。
しかし、その後施行された金融商品販売法では、金融商品販売業者が顧客に重要事項を説明しなかったときは、損害賠償責任を負うこととされ、その場合は元本欠損額が損害額と推定されると規定しています。
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エレベーターで足を怪我の損害賠償・・・
あるビルのエレベーターに乗ろうとしたところ、急に扉が閉まり始めて、扉に組み込まれていたセーフティシューと呼ばれている安全装置の下端とエレベーターの床の隙間に足を挟まれてケガをしてしまいました。
製造物責任法では、製造業者等は、その製造、加工、輸入等をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずると規定されています。
製造物責任法では、製造業者が一定の事実を説明しなければ免責されないことになっています。
製造物の欠陥とは、通常予想される使用形態等を考慮して当該製造物が通常有すべき安全性を欠いているものをいいます。
エレベーターの場合、通常の利用によって生じる人の生命・身体・財産等に対する予見可能なあらゆる危険を回避するようにすることは当然ですから、エレベーターの開閉によって足がはさまりケガをした場合には、エレベーターの製造業者としては、当然その責任を負う事なり、損害賠償の請求が認められます。
製造物責任法制定以前の判例で、エレベーターのセーフティシューについては、その構造に水平移動型を採用し、あるいは利用者に対して適切な指示や警告の表示を施すことによって、本件事故の発生を回避することが可能であり、これらの措置を講ずべき注意義務があったのに、この措置を講じなかった注意義務に違反する過失があったとして責任を認めています。
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取締役へ代表訴訟で損害賠償・・・
ある会社の社長が違法行為をして会社に損害を与えており、株主として、この社長に対し会社が被った損害を賠償させたいのですが?
株式会社の社長は法律上、代表取締役として会社に対して、法令及び定款の定め並びに株主総会の決議を遵守して会社のために忠実にその職務を遂行する義務を負うとされており、さらに一定の場合には、会社に対し損害賠償を負うとされます。
取締役の責任は会社が追及しなければなりませんが、会社が追及しない場合には、個々の株主に対し会社のために取締役の責任を追及するための訴えを提起する権利を認めています。
これを株主の代表訴訟といいます。
株主の代表訴訟を提起するには、株主であれば、1株でも6ヶ月前から引き続き株主をもっていれば誰でも訴えを提起できます。
ただし、いきなり社長や取締役に対し訴えを提起することはできず、訴えを提起する前に会社に対し書面をもって、会社から当該社長や取締役に対し責任を追及する訴えを提起するよう請求し、会社が右の請求があった日から60日以内に訴えを提起しないときに、始めて訴えを提起することができます。
しかし、60日の期間の経過を待つことによって会社に対し回復できないような損害を生じるような恐れがある場合には、60日の期間を待つことなく、株主は代表訴訟を提起することができます。
株主が代表訴訟を提起した場合に、被告となった当該取締役は、訴えが悪意によってなされたものであることを疎明して裁判所に対して相当の担保をその株主に提供させる旨の命令を求めることができます。
この命令が発せられたのにも関わらず株主が担保を提供しないときは、裁判所に口頭弁論を経ることなく、判決をもって訴えを却下することができます。
代表訴訟によって株主が勝訴した場合には、敗訴した取締役は会社に対し損害賠償をしなければなりませんが、代表訴訟は、会社のためになされるものですから、株主が支払った弁護士費用や訴訟費用以外の費用については、株主は会社に対して相当額を請求することができます。
株主が敗訴した場合、株主に悪意がない限り会社は、株主に対し損害賠償を請求することはできませんが、被告たる取締役は、その訴えが不当な訴訟である場合は、不法行為による損害賠償請求をすることができます。
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喧嘩のケガで損害賠償・・・
通勤電車に乗っていると、席が空いたのでそこに座ると、その隣の人が「そこは連れのためにとってある席だからどけ。」と言ってきました。
朝の通勤電車で非常識だったので、無視して座っていたのですが、隣の人はいきなり胸倉をつかんで殴打していきたため眼鏡が壊れて顔にケガをしてしまいました。
応戦として、蹴飛ばしてしましたが、損害賠償できますか?
隣の人が行なった行為は、刑法上傷害罪に当たりますが、ケガがたいしたことがなければ起訴されることはなく、警察での事情聴取で終わると考えられます。
刑事責任追及のため裁判所に起訴する権限は検察官が持っており、形式的に犯罪が成立する場合であっても、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができるとされています。
ですので、被害者の顔のケガが多少重くても、加害者が治療費を負担し慰謝料も支払うなどして示談ができている場合には、犯罪後の情況を考慮して、検察官は起訴しないことも考えられます。
刑事責任と民事責任は別々の責任ですが、民事責任における加害者の態度が刑事責任に影響を及ぼすことがあります。
喧嘩の場合、加害者側から被害者に対して、過失相殺の主張が出されることがあり、過失相殺の主張が認められると損害賠償は過失割合に応じて減額されることになります。
加害者に殴打された際、被害者も蹴飛ばした点について、これは正当防衛ということができますから、加害者に対して損害賠償訴訟を起すことができます。
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