苛酷な残業でうつ病の自殺の損害賠償・・・

苛酷な残業でうつ病の自殺の損害賠償・・・

使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めて管理する場合には、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務があります。

使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督に当たる上司はそうした注意を十分払うべきで、上司がこれを怠って、うつ病にかかる事態を招き自殺を余儀なくしたとすれば、会社は使用者責任を負うとされます。

労働者の性格が、同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるようなものでない限り、その性格が損害の発生又は拡大に寄与したとしても、それは使用者として予想すべきものとされます。

使用者が業務を担当させるに際して、その性格を考慮することができるので、そのことを理由に過失相殺することはできないとされます。

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就業規則の変更による賃金引下げ・・・

賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関して実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、その条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることができるだけ高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生じるとされます。

合理性の有無は具体的には、次のことを総合考慮して判断されます。

①就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度がどの程度のものであるか

②使用者側の変更の必要性の内容・程度

③変更後の就業規則の内容自体が相当といえるか

④労働者に加えられる不利益に代わる措置その他関連する他の労働条件の改善状況がどうなっているのか

⑤労働組合との交渉がある場合には、労働組合等との交渉の経緯や他の労働組合又は他の従業員の対応

⑥同種事項に関する社会における一般的状況等

賃金の減額幅が極めて大幅であったこと、制度の変更による職務の軽減がなかったこと、代償措置の内容が十分でなかったこと、変更後の賃金が格別高いとはいえないこと、制度の変更が定年延長に伴ってなされたのではなく、むしろ高年層の労働条件を定年後在職制度ないし嘱託制度に切り下げるものであったこと、経過措置が十分でなかったこと、などの事情があれば引き下げられた賃金の差額を請求できるとされます。

一部労働者に対し大幅な賃金カットを定めた就業規則の変更は、その不利益を受忍させる高度の必要性に基づいた合理的な理由は認められないとし、その変更を無効とした事例があります。

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業績悪化で一方的な賃金切り下げ・・・

労働契約において賃金は最も重要な労働条件としての契約要素ですから、従業員の同意を得ることなく一方的に不利益に変更することはできません。

賃金規定には昇給について定められているのが普通ですが、減額支給についての明確な規定がなければ、昇給規定があることをもって、減額支給についての根拠とすることはできません。

業績悪化に対する経営合理化策の方法としては、賃金の減額支給の措置の他に整理解雇という方法があります。

賃料減額措置を取るに至った理由について、整理解雇は従業員にとって犠牲が大きいので、それを避けるために、従業員の雇用を確保する方法として賃金の減額支給という措置を取ったと主張しても、整理解雇と賃料減額支給のいずれの方法が犠牲が少ない方法であるかは整理解雇の有効性が確定してからはじめて比較ができる問題であり、会社が整理解雇ではなく賃金減額支給措置を選択した以上、その賃料減額措置の有効性のみが問われることになります。

会社としては、使用者には従業員を解雇する権限があるから整理解雇を回避するため、労働契約内容の一部を変更することは使用者において就業規則に明示の規定があるなしにかかわらずできると主張することも考えられます。

しかし、使用者が解雇権をもっているからといって、賃金減額措置が有効である理由とはなりません。

会社の一方的な賃金減額支給の措置は無効とされ、減額支給前の賃金との差額を請求できるとされます。

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宗教団体に強引な献金の損害賠償・・・

宗教団体に対する献金が損害賠償請求として認められるかどうかについて、次のことが問題となります。

①献金勧誘行為が違法であるかどうか

②非営利法人である宗教団体の信者が第三者に損害を与えた場合に、宗教団体が民法715条の使用者責任を負うか

(使用者等の責任)
民法第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

③宗教団体とその信者らとの間に指揮監督関係があるかどうか

④献金勧誘行為が事業の執行につきなされたものか

判例では、一般に特定宗教の信者が存在の定かでない先祖の因縁や霊界等の話を述べて献金を勧誘する行為は、その要求が社会的にみても正当な目的に基づくものであり、かつ、その方法や結果が社会通念に照らして相当である限り、宗教法人の正当な宗教活動の範囲内にあるものと認めるのが相当であって、なんら違法ではないが、当該献金勧誘行為が右範囲を逸脱し、その目的が専ら献金等による利益獲得にあるなど不当な目的に基づいていた場合、あるいは先祖の因縁や霊界の話等をし、そのことによる害悪を告知するなどして殊更に相手方の不安をあおり、困惑に陥れるなどのような不相当な方法による場合には違法であるとしました。

また、判例では、非営利法人である宗教法人でも一定の条件が充たされれば民法715条の使用者責任があるとしていますし、勧誘行為を行なった信者のうち多くの者が宗教団体のために勧誘をしていることは、宗教団体とその信者との間には実質的な指揮監督関係があるし、献金の帰属先が宗教団体であることや献金勧誘行為そのものが宗教団体の教義に基づく実践行為であることからみて、献金勧誘行為は事業の執行につき行なわれたものとしています。

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