死の恐怖の慰謝料請求・・・

死の恐怖の慰謝料請求・・・

山田さんと田中さんは、会社の仕事で、ヘリコプターから撮影する必要が生じ、航空機の貸切運航を専門とする航空機会社とヘリコプターのチャーター契約を結び、2人がヘリコプターに乗り込むことになりました。

しかし、運転手が未熟のため、墜落してしまったのです。

幸いに、2人は重症を負ったのですが、生命はなんとかとりとめることができました。

この事故の原因が、パイロットのミスによるものであることは明らかですし、治療費の額や休業補償の額については示談できたのですが、墜落した際の「死の恐怖」に対する精神的損害について、各人500万円の支払を求めたのですが、航空機会社は応じませんでした。

航空機会社は、通常の交通事故並みに入院や後遺症についての慰謝料を払うのだから、恐怖の代償はそれでまかなわれるとして、訴訟となりました。

精神的損害の範囲は、特に限定されておらず、例えば、名誉を毀損された場合や、いわれのない侮辱を受けた場合、思い出のある写真をなくされた場合等、いずれも慰謝料請求権が発生します。

ただし、精神的苦痛とはいっても、個人的ないし主観的なものは、その全てが慰謝料の対象となるものではなく、例えば、異常に猫を可愛がっている人がいて、その人にとってその猫には実の子以上の愛着があったのに、それが車にひかれて死んでしまったような場合、その人が慰謝料として、実の子供がなくなったときの相場を要求したとしても、認められません。

本件の「死の恐怖」は、認められること自体は問題はないのですが、その金額については、2人についてはその恐怖が500万円であったかもしれませんが、通常は、そこまでは評価されず、また、パイロットが故意ではなく、過失であったので、判決では50万円とされました。

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箱ブランコの事故の損害賠償・・・

小学3年生の少女が友人と公園にある箱ブランコで遊んでいて転倒し、地面とブランコの底との間に足を挟んで骨折した事故があり、事故は箱ブランコの構造に欠陥があったからだとして、ブランコを製造したメーカーと公園の管理者である藤沢市を相手取り、約411万円の損害賠償を求めて訴えました。

第一審では、少女側の主張を認めて、市とメーカーに対し、約124万円の支払を命じていましたが、控訴審で逆転敗訴となりました。

控訴審は、遊具を利用する場合、児童や保護者が事故防止とその回避の責任を負い、仮に被害者の主張するような事故だったとしても、少女の当時の年齢からすれば、事故当時、その危険性の予測は可能だったとしたうえで、さらに事故が起きた箱ブランコには、通常あるべき安全性が備わっており、製造メーカーや市に違法はなかったと認め、一審判決を取消し、少女側の請求を棄却しました。

以降、箱ブランコの設置に際し、地面との間に隙間を開けるようにしているようです。

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いたずら電話で傷害罪の成立・・・

太郎さんは、かつて交際していた花子さんを忘れられず、よりを戻して欲しいと頼んだのですが、聞き入れてもらえず、自宅や勤務先、花子さんの家族の経営する喫茶店に電話を日に数十回入れるようになり、とうとう警察官が訪ねてきて、任意同行を求められました。

太郎さんは、注意か罰金かと思っていたのですが、軽い処分ではなかったのです。

事情聴取した警察は犯情悪質と逮捕し、検察庁に書類送検し、検察庁では花子さんに対する傷害罪と喫茶店に対する業務妨害罪で起訴しました。

傷害罪は、10年以下の懲役又は30万円以下の罰金又は科料、業務妨害罪は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

検察は、傷害罪適用の理由について、度重なる嫌がらせ電話により、花子さんにPTSD(心的外傷後ストレス障害)を負わせたことをあげ、裁判所も「一連の脅迫電話は外傷体験に該当する」と、嫌がらせ電話とPTSDとの因果関係を認めて有罪判決を言渡しました。

交際を拒否されたことに腹を立て、相手方に頻繁に嫌がらせ電話をかけたような場合、ストーカー規制法による警告や禁止命令を受けることがありますが、その回数や内容が度を越し、相手方に極度の恐怖心などを与えると、例え直接的な暴行行為がなくても、刑法の傷害罪で処罰されることもあるのです。

また、20代の女性会社員が、彼氏の昔の恋人に、自宅、職場、実家などへ3年半にわたって計1万2000回以上の嫌がらせ電話や無言電話をかけ、その結果、相手女性にPTSDを追わせた事件で、裁判所は傷害罪の成立を認めています。

この事件の被告女性は、当初被害者の母親が経営する美容院への業務妨害罪で起訴されていましたが、被害者は長期間、無言電話や脅迫電話を受けた結果、ベルの音に過剰に怯え、極度の恐怖心から情緒不安定に陥って、治療を必要とするPTSDを負ったとわかったため、検察は傷害罪と業務妨害罪に変更しました。

裁判所は、被告の一連の嫌がらせ電話や無言電話は、被害者に強い恐怖心を与えるもので、それによる精神的苦痛は外傷体験に該当すると判断し、嫌がらせ電話とPTSDとの因果関係を認めて、被告に懲役2年、執行猶予4年を言渡しました。

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酔っ払いをホームから転落死の正当防衛・・・

花子さんは、駅のホームで電車を待っていたところ、酔っ払いの男性にからまれ、周りの男性に助けを求めたのですが、誰も助けてはくれず、ただ見ているだけで、そのうちその酔っ払いの行為は、エスカレートし後頭部をつかんだり、コートを襟をつかんできたので、両手で酔っ払いの右肩あたりを突いたところ、酔っ払いは後ずさりし、ホームに落ちてしまい、そのとき丁度やってきた電車に轢かれて死んでしまいました。

花子さんの行為が法の上で正当防衛として認められるためには、酔った男の花子さんに対する行為が、「差し迫った危害」といえるかです。

また、自分の権利を防衛するために、「やむなくやった行為」であったかどうかです。

(正当防衛)
刑法第36条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

判決は、花子さんが襟のあたりを手でつかまれた強いからみの点で、男から何をされるのか不安になったこと、それから恐怖を感じたことは理解できるとしました。

次に、両手を前に出して突くという行為は、他人を離すための手立てとして通常見られるとし、花子さんの突き行為の力は、男を離すのに必要な限度を超えていたとは思われないとし、やむを得ない行為として、無罪としました。

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