返済した借用書の公正証書の2度使用・・・

返済した借用書の公正証書の2度使用・・・

山田さんは、田中さんに100万円を貸し、裁判をしなくても強制執行できるように、その借用証書を公正証書にしました。

田中さんは1ヵ月後には、100万円と利息分を返してきました。

田中さんは、また山田さんは、もう一度同じ条件で100万円を貸してくれと言ってきました。

山田さんは、その申入れを承諾し、新しい公正証書を作ろうとしたのですが、田中さんは条件が同じだから、前の公正証書を利用すればよいと提案し、山田さんは手数も費用も省けると思い、前の公正証書を利用することにしました。

その後、山田さんは、返済が滞り始め、田中さんは強制執行をするため、公証役場に行って執行文をもらいました。

しかし、山田さんは、公正証書は無効だから、それに基づく執行は違法であるから裁判所に請求異議の訴えをしてきたのです。

公正証書は、金銭の受け渡しとこれを返すという約束と、返すことができないときには強制執行されても異議がないという条項を入れて作成されるものですが、まだ金銭の受け渡しがされていない場合には、その公正証書は有効に成立したとはいえません。

後日、金銭の受け渡しがあればその時に有効に成立します。

しかし、本件の場合は、全く性質が違います。

判例は、最初に作った公正証書は金銭の受け渡しがあり、有効に成立しているが、山田さんが返したときに、その公正証書は無効となってしまっており、このような場合には公正証書に執行力がないとしているのです。

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小額訴訟から通常訴訟へ債務者から移行・・・

山田さんは、田中さんに頼まれて、手書きの借用書を作って、5万円を貸したのですが返してくれません。

そこで、山田さんは正式に裁判を起すと時間も費用もかかるので、小額訴訟を起こすことにしました。

小額訴訟の申立をして、裁判所から裁判期日を知らせる呼出状が届き、当日裁判に出かけ、田中さんも出廷して、山田さんは借用書もあるから負けるはずがないと信じていました。

ところが、裁判に出席していた田中さんは、いきなり「通常訴訟にして欲しい」と言い出し、それを聞いた裁判官も「では、本事案は通常訴訟に移行します。」といって、訳もわからず呆然としている山田さんと関係なく、判決も出さずに閉廷する旨を告げました。

小額訴訟は、債務者が望めば、通常訴訟に移行することを知り、たった5万円のために正式裁判をしなければならなくなりました。

小額の借金を取り立てる場合など、60万円以下の金銭債権を請求するには、小額訴訟を申し立てることができ、費用も安く、手続きも簡単で、原則1回の審理で即日判決が出ます。

しかし、債務者が通常訴訟により争いたいと申述すると、自動的に小額訴訟から通常訴訟に移行してしまうのです。

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公正証書の捨て印・・・

山田さんは、田中さんから、100万円の借金の連帯保証人になるように頼まれ、毎月1万円の返済であったので、了解したのですが、債権者から公正証書を作るため、実印と印鑑証明を提出するように言われました。

不審に思い、公正証書の委任状を確認すると、強制執行らしい文言も書かれておらず、その委任状に印鑑を押して、さらに捨て印まで押して渡しました。

山田さんは、日常の書類で捨て印を度々押していたので、何の疑いも持たず、押したのです。

しかし、債権者は、最初から山田さんの捨て印を利用し、強制執行文言を記載するつもりだったのです。

公正証書や登記書類は、文字を直したり加除した場合には、その欄外に「何字訂正」「何時削除」と記載し、その上に捺印を使った印を押すことになっています。

訂正印がないと、公証人や登記所では、その書類を絶対に受け付けません。

改めて本人に訂正印をもらうしかないのです。

そんな不都合を避けるため、あらかじめ委任状や契約書の欄外に、一つ余分に印をおしてもらっておき、後から訂正加除の必要が生じた場合に、その印のところに「何行目何字訂正」「何字削除」などと書き込んで、そのまま訂正印として使います。

本件の場合、捨て印を押した委任状の文言に、「万一、月々の支払を1回でも怠った場合は、直ちに強制執行を受けても異議ありません。」と後から書き込まれていたのです。

その後、田中さんの返済が滞り、強制執行されると、月々1万円の支払が山田さんに請求されるのではなく、いきなり100万円の差押がされるのです。

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無断で妻子名義の不動産の抵当権・・・

山田さんは、田中さんに500万円の借金を頼んだが、田中さんは山田さんのギャンブル好きを知っていたので、貸すのを渋っていました。

しかし、山田さんが妻と息子の共有の時価3000万円ぐらいする建物があるから、これを担保にすることを条件に借金を頼んできたので、承諾し、抵当権設定登記をするため、建物の権利証と妻と息子の各代理委任状、印鑑証明証を使って登記しました。

山田さんは、返済期日になっても返済してくれず、連絡も取れなくなったので、抵当権の実行をしようとしていた矢先に、山田さんの妻と息子から抵当権の抹消請求の訴訟を起こしてきました。

その理由は、山田は、妻と息子に無断で勝手に抵当権を設定したいうことなのです。

この借金が日常の家事から生じた借金であるなら、妻はその借金を山田と連帯して支払わなければならなくなり、日常の家事について妻を代理することができますから、抵当権設定登記は、代理権を超える行為である表見代理が成立し、抵当権も有効になる可能性もあります。

(日常の家事に関する債務の連帯責任)
民法第761条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

(権限外の行為の表見代理)
民法第110条 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

しかし、息子の関係では、抵当権を有効とする可能性はゼロです。

息子は未成年であり、山田は親権者ですから、自分の借金のために建物に抵当権を設定するのは、利益が相反することは明らかで、このような場合には家庭裁判所から特別代理人を選任してもらわなければならず、山田には息子を代理する権限はないのです。

(利益相反行為)
民法第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

山田の行為は、無権代理となり、妻と息子が追認しない限り、抵当権設定の登記は効力がありません。

また、山田さんが妻と息子に無断でそのようなことをすれば、私文書偽造、詐欺罪に処せられます。

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