担保不動産収益執行とは・・・
◇担保不動産収益執行とは
担保不動産収益執行とは、不動産から生ずる収益を被担保債権の弁済に充てる方法による不動産担保権の実行をいいます。
債務者が金銭債務を履行しない場合に、抵当権を有している債権者は、担保不動産競売によってその抵当権の目的となっている不動産を強制的に売却して返済を受けることができます。
しかし、不動産価格の下落などがあると、競売で回収できない場合もあります。
目的不動産にテナントなどが存在しているときは、その賃料債権に対して物上代位権を行使することによって賃料債権を差し押さえることが行われていきましたが、目的不動産の管理が不十分となり、問題がありました。
そのため、民事執行法の改正により、担保不動産収益執行が定められました。
担保不動産収益執行では、裁判所によって選任された管理人が、対象の不動産管理や賃料を受け取るなど収益の収取および換価をすることにより、対象不動産の収益を債権の弁済に充てることができます。
◇担保不動産収益執行の手続
担保不動産収益執行も不動産担保権の実行なので、民事執行法で定める文書の提出によって開始されます。
すでに、別の担保不動産による担保不動産収益執行の申立に基づき開始決定がなされていても、さらに担保不動産収益執行の申立を行うことができ、裁判所はさらに開始決定をすることになります。
これを二重開始決定といいます。
◇担保不動産競売との関係
担保不動産収益執行と担保不動産競売は、いずれも担保権の実行のための別々の手続です。
ですので、担保権の対象不動産について、担保不動産競売が行われている場合でも、担保不動産収益執行の申立を行うことができます。
また、すでに担保不動産収益執行の開始決定がなされている対象不動産について、担保不動産競売の申立をおこなうことができます。
担保不動産競売が進行し、買受人が代金を納付すると所有権が買受人に移転し、管理を妨げる事情が生じたことになりますので、担保不動産収益執行も取消されます。
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物上代位とは・・・
◇物上代位とは
優先弁済的効力を有する先取特権、質権、抵当権は、その目的物の売却、賃貸、滅失または損傷によって債務者が受け取るべき金銭その他の物、および目的物の上に設定した物権の対価からも優先的に弁済を受けることができます。
これを物上代位といいます。
民法は先取特権について物上代位を定め、質権と抵当権にもこれを準用しています。
◇物上代位と担保権実行
抵当権・根抵当権において大事なことは、抵当不動産の賃料債権について物上代位権を行使できることです。
抵当権者は、抵当権に基づいて抵当不動産の所有者が賃貸している賃料を差し押さえて債権の回収を図ることができます。
物上代位は、賃借権があり、抵当不動産の買受人が出てこないという担保不動産競売が困難な場合で、担保不動産収益執行における管理人による管理では費用倒れになる場合などに効果的です。
物上代位による差し押さえが行われている場合でも、その後に他の抵当権者から担保不動産収益執行の申し立てがなされ開始決定の効力が生じたときは、物上代位による差押さえをした人は、担保不動産収益執行の手続きにおいて配当を受けることができます。
◇物上代位権の行使方法
抵当権者が物上代位権を行使するには、債務名義は必要ありません。
物上代位権を行使するためには差押さえが必要になります。
◇物上代位の判例
①債権譲渡と物上代位
抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が具備された後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができます。
②一般債権者の差押と抵当権者の物上代位に基づく差押
債権について一般債権者の差押と抵当権者の物上代位権に基づく差押が競合した場合には、一般債権者の申し立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の時期の先後によって優劣を決めることとしました。
③物上代位と相殺
物上代位によって抵当権の効力が賃料債権に及ぶことが、抵当権設定登記により公示されていることを理由として、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押をした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権との相殺をすることで、抵当権者に対抗できないとしました。
ただし、敷金が授受された賃貸借契約における賃料債権について、抵当権者が物上代位権を行使してこれを差押えても、目的物の返還時に残っている賃料債権等は敷金が存在する限度で敷金の充当により当然に消滅することになるます。
ですので、その賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたときは、賃料債権は、敷金の充当によりその限度で消滅するとされています。
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詐害行為取消権とは・・・
詐害行為取消権とは、強制執行の対象となる債務者の財産を保全するために、これを不当に減少させる債務者の行為の効力を取り消して、債務者の一般財産から逸出したものを一般財産に取り戻す権利をいいます。
債権者取消権ともいい、これによって他の債権者による抜け駆け的な債権回収を是正して、債権者平等の原則のもとで強制執行をすることができます。
詐害行為取消権の要件は下記になります。
①債権者が詐害行為の前に金銭債権を有していたこと
②債務者と譲受人が売買、贈与、代物弁済などの法律行為を行い、債務者の財産が譲受人に移転したこと
③②の行為により債務者の一般財産が減少すること
④債務者が②の行為は他の債権者を害することを知っていたこと
⑤譲受人も②の行為により他の債権者を害することを知っていたこと
詐害行為の取消しは訴えを提起する方法によらなければなりません。
他人間の法律行為を取り消すという重大な行為を行うことになり、第三者に対する影響も大きいため、裁判所にゆだねることにしています。
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