遺産分割対象財産(有価証券)・・・
有価証券は、証券上権利が表章される財産権です。
権利の発生、移転、行使は証券によりされます。
無記名債権は、その発生、移転、行使が証券によりなされる債権です。
その権利を表章する無記名債券は債権者を表示せず、証券の正当な所持人が権利者となります。
無記名証券としては、株券、社債券、国債券、証券投資信託受益証券、小切手などがあります。
無記名債券は動産とみなされるので、判例は、無記名債権の譲渡を受けてもその引渡を受けていない以上第三者に対抗できないと解していますが、学説は証券の交付をもって譲渡の効力発生要件と解しています。
民法第86条
1. 土地及びその定着物は、不動産とする。
2. 不動産以外の物は、すべて動産とする。
3. 無記名債権は、動産とみなす。
学校法人が設備拡充資金の借入を目的とし、一般の起債の方法により作成、発行した学校債券が無記名証券たる有価証券であるとし、学校側の証拠証券ないしは免責証券にすぎないという主張を排斥した事例があります。
また、この証券上記載された「本債券はこれを質入することを禁ずる」の文言をもってしては、いまだ本件債券の譲渡その他の処分を禁止した趣旨と解することはできないとしています。
民法第907条
1 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
3 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。
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遺産分割対象財産(株式)・・・
家業を株式会社に法人化した際、父親は長男、長女を単なる名義株主とするために株式払込金を支出したのではなく、実質的株主を保有させるために株式の払込義務を同人らに代わって履行したとして、長男、長女の株主権存在を認めた事例があります。
株式は可分給付を目的とする債権とは解しがたいから、これについては共同相続が開始した場合、各共同相続人がその相続分に応じた数の株式を承継するとは断じ難く、相続財産たる株式は相続人全員に共同的に帰属し、共同相続人はこれにつき相続分に応じた持分を取得するにすぎません。
株式が2以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者1人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができません。
会社法第百六条
株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
旧商法203条2項は、株式が数人の共有に属するときは、共有者は、株主の権利を行使する者1人を定めることを要すると定めていましたが、同条項に定める会社に対する権利行使者の指定なくしてされた訴えに関し、次の判例があります。
旧商法第二百三条
1 共同シテ株式ヲ引受ケタル者ハ連帯シテ払込ヲ為ス義務ヲ負フ
2 株式ガ数人ノ共有ニ属スルトキハ共有者ハ株主ノ権利ヲ行使スベキ者一人ヲ定ムルコトヲ要ス
3 株主ノ権利ヲ行使スベキ者ナキトキハ共有者ニ対スル会社ノ通知又ハ催告ハ其ノ一人ニ対シテ之ヲ為スヲ以テ足ル
この場合、共同相続人は株主権を行使する者1人を定めて、これを会社に通知しなければならず、この者に限って会社に対する株主権を行使することができ、株主権行使者を定めず相続分に応じた持分を有するにすぎない相続人による株主総会決議取消の訴えは不適法とされます。
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親権者と子の利益相反行為・・・
親権を行なう父又は母とその子と利益が相反する行為については、親権を行なう者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。
民法第826条
1. 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2. 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
利益相反行為 (りえきそうはんこうい)とは、ある行為により、一方の利益になると同時に、他方への不利益になる行為である。
共同相続人である親権者と未成年者の子との間の遺産分割の協議は、利益相反行為に当たるか否かを当該行為の客観的性質で決すべきものとすると、相続人相互間に利害の対立を生ずるおそれのある行為というべきであるから、各別に選任された未成年者の特別代理人がその各人を代理して協議に加わることが必要であり、1人の親権者が数人の未成年者の法定代理人として代理行為をしたときは、被代理者全員につき民法826条に違反するものとされ、かかる代理行為によって成立した遺産分割の協議は、被代理者全員による追認がない限り無効と解しています。
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親権者と数名の子の利益相反行為・・・
親権者が数人の子に対して親権を行なう場合に、その1人と他の子との利益が相反する行為については、その一方の子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。
民法第826条
1. 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2. 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
利益相反行為 (りえきそうはんこうい)とは、ある行為により、一方の利益になると同時に、他方への不利益になる行為である。
民法826条所定の利益相反行為に当たるか否かは、当該行為の外形で決すべきであり、親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは、仮に親権者において数人の子のいずれに対しても衡平を欠く意図がなく、親権者の代理行為の結果数人の子の間に利害の対立が現実化されていなかったとしても、民法826条2項所定の利益相反行為に当たるから、親権者が共同相続人である数人の子を代理してした遺産分割の協議は、追認がない限り無効であるとされます。
また、共同相続人中の数人の未成年者が、相続権を有しない1人の親権者の親権に服するときは、未成年者らのうち当該親権者によって代理される1人の者を除くその余りの未成年者については、各別に選任された特別代理人がその各人を代理して遺産分割の協議に加わることを要し、1人の親権者が数人の未成年者を代理して成立した遺産分割の協議は、被代理人全員の追認がない限り無効です。
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