特別養子縁組申立手続・・・
民法817条の2に基づく特別養子縁組に関する処分の申立は、甲類審判事項です。
民法第817条の2
1.家庭裁判所は、次条から第817条の7までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
2.前項に規定する請求をするには、第794条又は第798条の許可を得ることを要しない。
申立に際しては、申立の趣旨及び申立の実情のほかに、次の事項を明らかにしなければなりません。
①養子となる者の父母の同意の有無及びその同意がないときは、父母がその意思表示をすることができない事情又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由
②養親となる者による養子となる者の監護の開始の年月日、開始の経緯及び開始後の状況。
児童相談所又は民法法人もしくは社会福祉法により設立された法人のあっせんの有無並びにそのあっせんが行なわれたときは、当該児童相談所等の名称及び所在地。
①申立権者
養親となる者です。
②管轄
養親となる者の住所地の家庭裁判所です。
③添付書類
養親、養子、養子の実父母・法定代理人の戸籍謄本、住民票各1通。
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特別養子縁組審判前の保全処分・・・
家庭裁判所は、養子となるべき者の利益のために必要があるときは、養親となる者の申立により、特別養子縁組の成立に関する審判の効力が生ずるまでの間、申立人を養子となるべき者の監護者に選任し、又は養子となるべき者の親権者や未成年後見人の職務を停止し、若しくはその職務代行者を選任することができます。
家事審判規則第六十四条の五
1.特別養子縁組を成立させる審判の申立てがあつた場合において、養子となるべき者の利益のため必要があるときは、家庭裁判所は、当該申立てをした者の申立てにより、特別養子縁組の成立に関する審判の効力が生ずるまでの間、申立人を養子となるべき者の監護者に選任し、又は養子となるべき者の親権者若しくは未成年後見人の職務の執行を停止し、若しくはその職務代行者を選任することができる。
2.第三十二条第一項の規定は、前項の規定により選任された職務代行者について準用する。
この申立は、家事雑事件です。
保全処分の申立却下の審判に対し、申立人は、即時抗告をすることができます。
保全処分を命ずる審判に対しては、特別養子縁組を成立させる審判について即時抗告を有する者である養子となる者の後見人、養子となる者に対して親権を行なう者で父母以外の者及び成年に達した父母の成年後見人が、即時抗告をすることができます。
ただ、職務代行者選任に関する保全処分に対しては、即時抗告ができません。
家事審判規則第十五条の三
1.審判前の保全処分の申立人は、申立て(次に掲げる申立てを除く。)を却下する審判に対し、即時抗告をすることができる。
一 第二十三条第一項(第百六条第一項(第四十七条及び第四十八条第三項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)、第三十条第一項及び第三十条の八第一項の規定による保全処分の申立て
二 第六十四条の五第一項(第六十四条の十二において準用する場合を含む。)及び第七十四条第一項(第七十条、第七十二条、第八十六条、第九十二条第二項、第九十三条第三項及び第百二十六条第一項において準用する場合を含む。)の規定により職務代行者を選任する保全処分の申立て
2.本案の申立てを認める審判に対し即時抗告をすることができる者は、審判前の保全処分(前項各号に規定する保全処分を除く。)に対し、即時抗告をすることができる。
3.前項の規定により即時抗告が提起された場合において、原審判の取消しの原因となることが明らかな事情及び原審判の執行により回復の困難な損害が生ずべきことについて疎明があつたときは、高等裁判所は、申立てにより、即時抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせて、若しくは担保を立てることを条件として、若しくは担保を立てさせないで原審判の執行の停止を命じ、又は担保を立てさせて、若しくは担保を立てることを条件として既にした執行処分の取消しを命ずることができる。事件の記録が家庭裁判所に存する間は、家庭裁判所も、これらの処分を命ずることができる。
4.前条第二項及び第三項の規定は前項の疎明について、民事保全法(平成元年法律第九十一号)第四条の規定は前項の担保について準用する。
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特別養子縁組の審判手続・・・
特別養子縁組の審判手続きは、特別養子縁組成立の要件の有無が審理されます。
家庭裁判所は、縁組成立の審判をするには、養親となる者、養子となる者の父母、養子となる者の未成年後見人、養子となる者に対して親権を行なう者で父母以外のもの及び成年に達した父母の成年後見人の陳述を聴かなければなりません。
この場合において、養子となる者の父母の同意なくして縁組を成立させる審判をするときは、父母の陳述は、審判の期日において聴くものとされています。
家事審判規則第六十四条の七
家庭裁判所は、特別養子縁組の成立に関する審判をするには、養親となるべき者、養子となるべき者の父母、養子となるべき者の未成年後見人、養子となるべき者に対して親権を行う者で父母以外のもの及び成年に達した父母の成年後見人の陳述を聴かなければならない。この場合において、養子となるべき者の父母の同意なくして特別養子縁組を成立させる審判をするときは、父母の陳述は、審判の期日において聴くものとする。
家庭裁判所は、養子となる者の要保護性、養親となる者の適格性、両者の適合性等の審理のために、要保護児童に関して児童福祉の専門機関としての児童相談所等に対し、調査を嘱託し、その関与を求めることができます。
申立人を除く、養親となる者、養子となる者の父母、養子となる者の未成年後見人、養子となる者に対して親権を行なう者で父母以外のもの及び成年に達した父母の成年後見人は、特別養子縁組を成立させる審判に対し、申立人は、申立却下審判に対し、即時抗告することができます。
家事審判規則第六十四条の八
1.前条に掲げる者(養親となるべき者を除く。)は、特別養子縁組を成立させる審判に対し、即時抗告をすることができる。
2.第二十七条第二項の規定は、特別養子縁組を成立させる審判の申立てを却下する審判について準用する。
特別養子縁組を成立させる審判が確定したとき、裁判所書記官は、養親の本籍地の戸籍事務管掌者、縁組のあっせんをした児童相談所等及び家庭裁判所の嘱託に応じて調査を行なった児童相談所に対して、遅滞なく、その旨を通知します。
家事審判規則第六十四条の九
特別養子縁組を成立させる審判が確定したときは、裁判所書記官は、遅滞なく、養親の本籍地の戸籍事務を管掌する者に対し、その旨を通知しなければならない。
家事審判規則第六十四条の十
特別養子縁組の成立に関する審判が確定したときは、裁判所書記官は、遅滞なく、当該特別養子縁組のあつせんを行つた児童相談所等に対し、その旨を通知しなければならない。当該特別養子縁組について、家庭裁判所からの嘱託に応じて調査を行つた児童相談所に対しても、同様とする。
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特別養子縁組の戸籍届出・・・
申立人は、縁組の裁判が確定した日から10日以内に特別養子縁組届をします。
民法第68条
民法第797条の規定によつて縁組の承諾をする場合には、届出は、その承諾をする者がこれをしなければならない。
民法第68条の2
第63条第1項の規定は、縁組の裁判が確定した場合に準用する。
民法第63条
1.認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から10日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
2.訴えを提起した者が前項の規定による届出をしないときは、その相手方は、裁判の謄本を添付して、認知の裁判が確定した旨を届け出ることができる。この場合には、同項後段の規定を準用する。
届出書には審判書謄本及び審判の確定証明書を添付します。
この戸籍の届出により、養子は、実方の戸籍から除籍され、実方戸籍の本籍地に養親の氏で養子の単独戸籍が編成されます。
民法第20条の3
1.第68条の2の規定によつて縁組の届出があつたときは、まず養子について新戸籍を編製する。ただし、養子が養親の戸籍に在るときは、この限りではない。
2.第14条第3項の規定は、前項ただし書の場合に準用する。
民法第30条
1.届出事件によつて、届出人又は届出事件の本人が他の戸籍に入るべきときは、その戸籍の表示を、その者が従前の戸籍から除かれるべきときは、従前の戸籍の表示を、その者について新戸籍を編製すべきときは、その旨、新戸籍編製の原因及び新本籍を、届書に記載しなければならない。
2.届出事件によつて、届出人若しくは届出事件の本人でない者が他の戸籍に入り、又はその者について新戸籍を編製すべきときは、届書にその者の氏名、出生の年月日及び住所を記載する外、その者が他の戸籍に入るか又はその者について新戸籍を編製するかの区別に従つて、前項に掲げる事項を記載しなければならない。
3.届出人でない者について新戸籍を編製すべきときは、その者の従前の本籍と同一の場所を新本籍と定めたものとみなす。
この単独戸籍から養親の戸籍に入籍するとともに、養子の単独戸籍は除籍されます。
民法第18条
1.父母の氏を称する子は、父母の戸籍に入る。
2.前項の場合を除く外、父の氏を称する子は、父の戸籍に入り、母の氏を称する子は、母の戸籍に入る。
3.養子は、養親の戸籍に入る。
民法第23条
第16条乃至第21条の規定によつて、新戸籍を編製され、又は他の戸籍に入る者は、従前の戸籍から除籍される。死亡し、失踪の宣告を受け、又は国籍を失つた者も、同様である。
養子の戸籍における養子の戸籍の父母欄には、実父母の氏名は記載されず、養父母の氏名だけが記載されます。
続柄欄には嫡出子と同様、養親の「長男(長女)」「次男(次女)」等と記載されます。
養子の身分事項欄には、「民法817条による裁判確定により入籍」と記載されるだけで、「養子縁組」の文字が使用されることもありません。
民法第817条の2
1.家庭裁判所は、次条から第817条の7までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
2.前項に規定する請求をするには、第794条又は第798条の許可を得ることを要しない。
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