特別縁故者 その他被相続人と特別の縁故があった者・・・
その被相続人と特別の縁故があった者とは、被相続人と自然的血縁関係は認められるが認知がないため相続権が認められない親、子、祖父母、孫、兄弟姉妹とか、もともと相続権はないが相続権者に次ぐ近親者である伯叔父母や従兄弟姉妹、恩師、友人などで被相続人が生前庇護を受けた者などを指すと解した事例があります。
被相続人の祭祀を主宰する者として、叔父につき、いとこにつき、いとこの配偶者につき分与を認めた事例があります。
被相続人の生前に財産管理をした者として、叔母につき、いとこにつき、分与を認めた事例があります。
相続開始後に財産管理をしている者として、叔父につき、いとこにつき、旧法中の場合、姪の子につき、五親等の血族につき、分与を認めた事例があります。
親族として継母につき、叔父につき、亡き妻の妹につき、五親等の親族につき、分与を認めた事例があります。
抗告人が被相続人(抗告人の父の従兄弟)の生前はその身の回りの世話をしたこと、今後も被相続人及びその親族の祭祀を怠りなく続けていく意向であることが認められ、また相続財産を抗告人に分与することが被相続人の意思にも合致することが推測される本件事案においては、抗告人は「被相続人と特別の縁故のあった者」に該当すると解するのが相当であるとして、申立を却下した原審判を取消し、清算後残存すべき相続財産の全部を抗告人に分与した事例があります。
認定事実によると、被相続人の叔母に当たる抗告人は、商売に失敗して上京してきた被相続人の父と被相続人を自宅に住まわせ生計を共にして面倒を見たほか、以来、一貫して必ずしも恵まれない境遇にあった両名に対し、多額の資金援助をしたり、無償で仕事を手伝うなど、通常親族がなし又はなすべき相互扶助の程度を超えて援助、協力してきたものというべきであるから、特別縁故者に該当すると解するのが相当であるとして、申立を却下した原審判を取消して差し戻した事例があります。
認定事実によると、申立人らは、いずれも被相続人の亡き妻の親族であること、申立人らと被相続人が親密な関係にあったとの資料は全く得られず、被相続人はその酒癖と性格から親戚関係の者から一定の距離をおいた付き合いをされ、いわゆる「独居老人」として孤独な生活をしていたと認められ、申立人らは、「生計を同じくしていた者」ではなく、被相続人死亡の直前転居手続を行なったにすぎないから「療養看護に務めた者」にも該当せず、「その他の特別の縁故関係」については、被相続人の妻の死後、被相続人と親密な交際があったとは認められず、むしろ疎遠になっていたことが認められ、また申立人らが被相続人との関係として述べる事情はいずれも親族としての通常の交際の範囲に止まるものにすぎないこと、ただ申立人らの被相続人の死亡直前から死後にわたる一連の措置については、かなり密接な交渉があったと認められるが、これらの事実のみをもって「特別縁故」に該当するとはいえないとし、申立人らが立て替えた費用は管理人において清算すべきことを付言して、申立を却下した事例があります。
相続放棄をした者もよほど特別の事情がある場合には、一応申立権はあると解されています。
相続人捜索公告期間後に現れた相続人も特別縁故者として相続財産の分与を受けることができると解されています。
しかし、単にいとこであるというだけの場合、伯叔父母その他の親族でも、親族としての交際があったにすぎない場合に分与を認めなかった事例があります。
受遺者も一応申立はできるが、遺言に示された被相続人の意思を相当に尊重し、また、実際に分与するかどうかは慎重に検討を要すると解されています。
法人は特別縁故者になる資格があります。
被相続人の菩提寺に分与した事例があります。
養老院に分与した事例があります。
被相続人は、**園に入所措置がとられ、死亡するまで同園で生活していたが、途中から衰弱が激しくなって歩行、入浴、排便等の介助が必要となり、同園の職員がその世話をし、死亡に際しては同園の職員が葬儀を行い、その後も遺骨を同園の納骨堂に安置し、その後の供養も行なっている法人格のない老人ホームを特別縁故者と認めて、これに相続財産を認めた事例があります。
地方公共団体(市町村)に分与した事例があります。
権利能力なき社団である大師堂に分与した事例があります。
被相続人経営の学校法人に分与した事例があります。
また、特別縁故関係は認められないが未完成の遺言書の案では大部分の財産が寄付されるはずであった被相続人の母校に分与した事例があります。
公益法人(更生保護事業)に分与した事例があります。
被相続人が永年勤務した社会福祉法人に分与した事例があります。
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特別縁故者の死後縁故等の判例・・・
被相続人と直接縁故関係がない場合でも、申立人の先代と被相続人との特別縁故関係を付加、総合して判断できるとした事例があります。
被相続人が放浪中に姉の遺産を相続後死亡した場合には、亡き姉と申立人間の特別縁故関係を考慮したり、又は、被相続人が父の遺産を相続して11ヵ月後に死亡した場合には亡き父と申立人の亡き夫間の特別縁故関係を考慮したりして、分与申立を認めた事例があります。
死後縁故について、肯定例として、被相続人の生存中未だ出生していなかったということは、被相続人の特別縁故者となることの妨げにならないと解した事例があります。
死後縁故を肯定する理由として、民法958条の3にいう特別縁故とは、被相続人の親族とか友人など単なる縁故に加えて被相続人に関連する客観的事実を要求しているのであって、被相続人の親族という縁故に加えて被相続人の祭祀や遺産を管理している者は特別縁故者にあたるとして、死後縁故を含まないと解する理由はないと解しました。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
民法第958条の3 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第958条の期間の満了後3箇月以内にしなければならない。
死後縁故を認めない立場は、民法958条の3にいう特別縁故とは、被相続人の生前に被相続人と縁故があった者に限り、被相続人の死後に事実上管理したり、被相続人の祭祀を行なってきたりした者を含むものではないと解します。
被相続人の死後、その葬儀、供養などを行なった事実は生前の特別縁故関係の存否程度を推測させる事情に止まり、それ自体は特別縁故性を具有するものではないと解した事例があります。
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特別縁故者の申立後の死亡 ・・・
特別縁故者の申立後の死亡について、肯定例として、被相続人と特別縁故関係にあった者が分与申立後に死亡した場合、その相続人が相続財産分与の申立をする地位を承継し、その分与を求めえると解した事例があります。
この場合、受継許可を得て、手続を承継します。
家事審判規則第十五条 申立人が死亡、資格の喪失その他の事由によつて手続を続行することができない場合には、法令によりその申立をする資格のある者は、手続の受継を申し立てることができる。
2 家庭裁判所は、前項の場合において必要があると認めるときは、その申立をする資格のある者に手続を受継させることができる。
特別縁故者の地位は、その者と被相続人との個人的な関係に基づくもので、相続財産分与申立をするか否かはその者の意思に委ねられており、一身専属性の強い地位であるが、いったん、その分与申立をすれば、申立人は相続財産の分与を受けることが現実的に期待できる地位を得ることになり、その地位は財産的性格を持つから、その後申立人が死亡した場合、その相続人は分与申立人の地位を承継すると解するのが相当であるとして、死亡した申立人及び抗告人両名が特別縁故者に該当するか否かを審理して、これを認め、原審判を取消して相続財産を分与した事例があります。
否定例として、申立人の地位ないし身分は、恩恵的に贈与を受ける特殊なものであって、それは一身専属性が強く、承継、譲渡に親しまず、申立人の死亡により事件は終了すると解した事例があります。
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特別縁故者の申立前の死亡・・・
特別縁故者の申立前の死亡について、否定例として、いったん相続財産分与の請求があれば、その請求者は分与に対する一種の期待権を有することになり、この期待権は相続の対象たりうると解する余地がないでもないが、分与の請求をすることなく死亡した場合には、相続すべき権利そのものが発生しないから、その相続ということはありえないとした事例があります。
分与の有資格者は被相続人の生前において被相続人と縁故関係があった者をいい、この資格は一身専属的であり、相続の対象となるものでなく、被相続人の死後に遺産を事実上管理したり、被相続人の祭祀を行なってきたりした申立人に相続財産を分与するのは相当でないとした事例、分与申立権を行使しないで死亡した場合には、原則として申立権を行使する意思がなかったものとして取り扱い、同人の特別縁故関係を相続人において承継又は採用することができないと解した事例があります。
特別縁故者に対する相続財産分与事件の即時抗告審において、特別縁故者として相続財産の分与を受ける可能性のある者も、現にその申立をしていない以上、相続財産に対し私法上の権利を有するものではなく、その者が相続財産分与事件の申立をする目的で、前提手続である相続財産管理人選任事件の申立をしていたとしても、直ちに特別縁故者ないしこれに準ずる者として相続財産に関し法律上保護すべき具体的な財産上の地位を有するものではないとした上、相続財産の分与を受ける可能性のある者が分与の申立をしないまま死亡した場合には、その相続人に特別縁故者としての地位が承継されることはないと解するのが相当であるとして、申立を却下した原審判に対する即時抗告を棄却した事例があります。
肯定例として、原則として、消極の立場をとりながら、申立権の行使に障害があったなど特別の事情がある場合には、相続人は承継又は援用できると解した事例があります。
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