相続税の債務の控除・・・

相続税の債務の控除・・・

相続人が相続税の納税義務を負う場合、その相続により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額によるとされています。

①被相続人の債務で相続開始の際、現に存するもの

②被相続人に係る葬式費用

相続人の課税価格に算入する価額は、当該財産の価額から被相続人の債務、被相続人に係る葬儀費用を控除しますが、金額を控除すべき債務は確実と認められるものに限られます。

相続開始当時、主たる債務者らが弁済不能の状態にあり、主たる債務者らの債権者らから被相続人の連帯保証債務の履行、相続人の物上保証債務の履行が確実に求められていたとは認められず、右債務を履行した場合に、両者に対する求償が不可能であったとは認められないとして、「確実に認められる」債務に該当しないとした事例があります。

使用者の死亡によっても雇用関係は当然に消滅することなく、特段の事情のない限り雇用関係は相続人に承継されるものというべきであるが、被用者が使用者の相続人であるときは、その使用者の地位を承継することにより権利義務の混同を生じる範囲で雇用関係も終了するとして事例があります。

この場合、被相続人の原告に対する退職金債務が本件相続開始の際に発生して確定し、かつ、その履行が確実であると認められれば、右債務は被相続人と原告との雇用関係の終了を原因として相続人として同原告の負担において支払うべき被相続人の債務と解することができるから、相続財産から控除すべきこととなるとされます。

しかし、本件では、就業規則及び退職金規程が事業主の死亡を退職の事由として予定していないこと、退職金規程の解釈として被用者相続人が事業承継したことによる雇用関係の終了を退職金の支給事由としてると解する余地はなく、したがって、本件相続開始の際、原告の被相続人に対する退職金請求権の発生はなく、これに対応する退職金債務もその存在が確定していたということはできないので、相続財産から控除することはできないとしました。

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相続税の相続財産の評価方法・・・

相続税の課税価格となる相続財産の価額は、特別に定める場合を除き、当該財産の取得のときにおける時価によることになりますが、この時価とは、相続開始時における客観的な交換価値をいい、課税実務上は、財産の客観的な交換価値が必ずしも一義的に確定されないところから、相続財産の評価は相続財産評価の一般的基準が評価基本通達によって定められ、そこに定められた画一的な評価方法によってすることとされています。

しかし、経済的合理性なくして、被相続人によって相続開始直前に借り入れた資金で不動産を購入するという行為が行なわれた場合に、評価基本通達によってその不動産を評価すべきものとすると、右購入行為をしなかった場合に比べて相続税の課税価格に著しい差を生じ、当該不動産以外に多額の財産を保有している被相続人の場合には、結果としてその他の相続財産の課税価格が大幅に圧縮されることになり、この事態は、他に多額の財産を保有していないため、右のような方法により相続税負担の軽減という効果を享受する余地のない他の納税者との間での実質的な租税負担の公平を著しく害し、相続税の目的に反するから、このような場合、本件不動産の評価は評価基本通達によらないで、市場における客観的な交換価値によって評価することが許されるとした事例があります。

被相続人が死亡直前に購入資金を借り入れて購入した不動産につき、相続開始直後に相続人らが右不動産を売却し、その売却代金で右借入金債務を弁済した場合、右不動産の相続税課税価格を路線価によることなくその取得価額によって評価した相続税更正処分を適法とした事例があります。

相続により取得した財産の相続税の課税価格に算入すべき価額は、原則として
、相続により財産を取得した時における時価とされていますが、特例として、被相続人が相続開始3年以内に取得した不動産については、当該不動産の取得価額として政令で定めるものの金額を、相続税の課税価格に算入すべきものとされています。

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相続分譲渡の相続税・・・

相続若しくは包括遺贈により取得した財産について申告書を提出する場合、その財産が共同相続人によってまだ分割されていないときは、まだ分割されていない財産については各共同相続人が民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算します。

(未分割遺産に対する課税)
相続税法第55条 相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第32条の更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない。

この相続税法55条本文にいう「相続分」には共同相続人間の譲渡に係る相続分が含まれます。

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代納した相続税の清算・・・

共同相続人が他の相続分の相続税を申告、納税することがあります。

この場合、通常は、後日行われる遺産分割の時に清算しますが、申告が他の相続人に無断でされたとき、紛争を生ずることがあります。

甲が共同相続人乙名義で乙分の相続税を納付した後、乙に対して同額を不当利得として返還請求したところ、乙は、甲が乙名義で相続税を納付したとしても、それは甲が乙に全く無断で乙の名義を冒用し、三文判を押捺してした無効の申告に基づいて勝手に納付したものであり、事後的にも右申告納付を乙が承認したことはなく、甲は乙の納付すべき相続税を乙に代わって納付したものではなく、乙には何の利得もないと主張しました。

裁判所は、乙の申告としては適法有効でないことを認定したうえ、乙は相続税のことは知っていたと考えられるのに、相続税法に従い自らその相続税の申告、納付をすべき義務を履行せず、義務を尽くさなかったために税務署長が決定することもできず、乙が課税を免れ、甲も還付請求をすることができなくなった場合、甲が乙名義でした申告が適法有効であるかどうかにかかわりなく、乙は甲の損失により法律上の原因なく同額の利益を得たものとするのが相当であるとして、乙に対して不当利得の返還を命じました。

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