私的実行としての所有権留保と譲渡担保・・・

私的実行としての所有権留保と譲渡担保・・・

所有権留保物の私的実行について、所有権は債権者にありますから、債務者がその物を利用できる権限がなくなったところで引揚げを実行します。

もちろん、清算義務はあります。

所有権留保物が債務者が占有していますので、強引に取り上げるような実力行使は認められていません。

債務者が自発的に引き渡さないような場合には、引渡請求訴訟を提起しなければならないのです。

次に、譲渡担保の私的実行について、不動産譲渡担保の私的実行では、すでに登記簿上は債権者の名義になっていますので、清算義務を果たすだけになります。

しかし、登記簿上の名義は債権者でも、現実には債務者が占有しています。

売却処分して金銭に換価するためには、債務者などの占有者を排除する必要があり、自主的に立ち退かないような場合には、やはり建物明渡請求訴訟などを提起しなければならなくなります。

動産譲渡担保の場合には、所有権留保物の引揚げと同じ方法で私的実行します。

債権譲渡担保の場合は、債務者が譲渡通知の発送に協力しないと単独で取立てをすることが不可能になります。

ですので、予め債権譲渡通知の書面を作成させて交付させておくことが必要です。

債権譲渡特例法によって債権譲渡通知の代わりに登記を用いている場合には、取立てを実行する前に第三債務者に対して債権譲渡登記の登記事項証明書を交付すると同時に債権譲渡通知をする必要があります。

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仮差押、仮処分の保全手続の流れ・・・

裁判手続は、訴えの提起から判決の確定や和解までに多くの手続と時間を要します。

決着がつくまでの間に債務者が資産を処分してしまったり、別の債権者が取得してしまった場合には、強制執行できるようになっても資産がありません。

そこで、将来、強制執行をかける財産を予め確保できるようにする保全手続があるのです。

保全手続には、仮差押と仮処分があります。

仮差押は、債務者の財産について、現状を維持させて将来の強制執行を保全する手段をいい、金銭債権を被保全債権として保全手続を行います。

仮処分は、特定の物に対しての給付請求権を保全するために、その物の現状を維持させる手続をいいます。

まずは、裁判所に仮差押命令の申立てをします。

保全手続の申立ては、書面審理が原則ですが、保証金の決定などで債権者と裁判所が協議しますので、債権者審尋が行われます。

裁判所が決定した仮差押・仮処分の保証金を納付したところで裁判所が仮差押決定を出し、あるいは決定が出された後に保証金を納めて仮差押執行・仮処分執行の申立てに移ります。

保証金の供託が後日でよい場合には、申し立てたその日のうちに決定がでることもあります。

保全の申立手続の流れ(裁判所HPより)

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仮差押する財産の注意点・・・

①不動産仮差押

すでに担保権が設定されている不動産の場合には、仮差押をしても担保権者が優先的に配当を受けることになります。

②動産仮差押

一般動産の場合は、動産が特定できていなくても「債務者所有の動産」として差押可能な動産の全てを仮差押することができます。

通常、執行場所の関係で一定の場所の動産に特定します。

個別に具体的な目的動産を特定することが可能です。

自動車の場合は、車両登録されている場合には、不動産の仮差押に近い手続きとなり強制執行は準不動産執行(強制競売)になります。

手形・小切手や株券などの有価証券は動産仮差押になります。

③債権仮差押

債権を仮差押するときには、必然的にその債権の債務者である第三債務者も当事者に加わります。

仮差押の執行に併せて、第三債務者に対して債務者に対する債務があるのか否かについての陳述催告の申立てをする必要があります。

売掛金の場合は、弁済期が到来したものから請求金額が満つるまでしか仮差押できませんし、売掛金債権が複数ある場合には、その中のどれなのかを特定しなければなりません。

通常は売掛金の発生日がいつからいつまでかを特定します。

請負代金の場合は、どの工事の代金なのかを特定する事が必要になります。

保証金の場合は、賃貸借契約の保証金や敷金は、契約が終了して明渡しをするまでは返還請求権が発生せず、賃料不払いがある場合には差し引かれた残りしか回収の引当になりません。

給料の場合は、債務者の生活保護の観点から、給料の仮差押は裁判所が容易には認めてくれません。

債権の存在について事実上証明し、仮差押する強度の必要性があることなども証明して初めて認められます。

その場合でも、1年程度に限定してしか認められないことになっています。

銀行預金の場合は、銀行預金払戻請求権の仮差押では、どの種類の預金から仮差押するのかを特定しなければならず、仮差押をする順序についても債務者に対して影響の少ないものからでなければ認められません。

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