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利益配当と株主平等の原則・・・
最判昭和45年11月24日(贈与義務履行請求事件)
民集24巻12号1963頁、判時616号94頁、判夕256号127頁
<事実の概要>
Xは、昭和38年9月当時、自己又は家族の名義でY株式会社の株式20万6500株を有しており、Y社発行済株式総数の100分の3を超えていた。
Y社は、昭和38年3月決算期まで1割2分の利益配当を行ってきたが、同年9月決算期には株主に配当すべき利益を計上できない経理状況にあった。
そこで、同年11月30日開催予定の株主総会においては、株主に対する配当による利益金処分案を含まない計算書類を付議することとなった。
Y社は、当該総会において無配決算議案の承認を求めるにあたり、大株主から事前の了解をとりつけるべく、監査役をXのもとに派遣した。
Xは、他の大株主とは異なり、議案の承認を大いに不満とし、無配による損失を補ってほしい旨主張し、金員の支払等を要求した。
そこで総会前の同月20日、交渉が行なわれ、同月1日にさかのぼって月額金8万円、中元及び歳末に各金5万円をY社がXに支払う旨の合意に達し、Xは総会に出席しなかった。
そして、昭和39年2月に金員贈与の趣旨を表す書面が作成され、本件契約が成立した。
Y社は、その後社長が交代するまでしばらく金員を支払った。
Xは、昭和40年7月分以降の契約金支払を求めて訴えを提起した。
第1審、原審とも請求を棄却したため、Xが上告した。
<判決理由>上告棄却。
「本件贈与契約は右のように株主中上告人のみを特別に有利に待遇し、利益を与えるものであるから、株主平等の原則に違反し、商法293条本文の規定の趣旨に徹して無効である旨の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯でき、右認定の過程において採証法則違背は認められない。」
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議決権行使阻止工作と利益供与・・・
東京地判平成7年12月27日(利益供与返還請求事件)
判時1560号140頁、判夕912号238頁、金判992号43頁
<事実の概要>
上場会社であるX株式会社において、Aらのグループによる発行済株式の約42%の買占めに対抗し、X社代表取締役社長Bは同社の取締役兼経理部長Cに自社株の防戦買いを命じた。
Bらは、政財界に人脈を持ち株式問題の裏工作のベテランといわれていたYらに、Aからの株式買取を依頼し、その買取の経費及び報酬としてX社経理部が管理していたX社の簿外資金を子会社等の名義の銀行口座から引き出し、数回にわたり計11億7500万円余をYらに供与した。
X社よりYに対してこれらの金員の交付が平成15年改正前商法294条の2の株主の権利行使に関する利益供与にあたるとして返還請求の訴えを提起した。
<判決理由>請求認容。
「株式の譲渡それ自体は、商法294条の2第1項にいう「株主の権利の行使」とはいえないから、会社が株式譲渡の対価若しくは株式譲渡を断念する対価として利益を供与する行為又は株式の譲渡等について工作を行う者に利益を供与する行為は、直ちに株主の権利行使に関する利益の供与行為に当たるものではない。
しかし、右のような利益供与行為であっても、その意図・目的が、経営陣に敵対的な株主に対し株主総会において議決権の行使をさせないことにある場合には、権利行使を止めさせる究極的手段として行われたものであるから、「株主の権利の行使に関し」利益供与を行ったものということができ、商法294条の2に該当する。」
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会社の過失による名義書換の未了と株式譲渡人の地位・・・
最判昭和41年7月28日(株式引渡請求事件)
民集20巻6号1251頁、判時456号72頁、判夕195号83頁
<事実の概要>
Y株式会社は昭和34年12月2日の取締役会において、同会社の新株式発行につき、(1)新株式は昭和35年2月29日午後5時現在株主名簿に記載されている株主に対し、その所有株式1株につき新株2株の割合で割り当てる、(2)新株式の申込期間は同年4月25日より5月10日までとする、(3)払込期日は同年5月21日とする、(4)申込証拠金は1株につき金50円とし、払込期日に払込金に充当する旨を決議した。
Xは上記割当基準日以前の昭和35年1月28日にその有する旧株式500株をAに譲渡し、Aは同年2月16日Y社に対し株式名義書換の請求をしたが、Y社の過失により上記書換は行われず、上記基準日当時も依然としてXが500株の株主として株主名簿上記載されていた。
Y社は同年4月25日Xに1000株の新株割当の通知をなし、Xは1000株の申込をするとともに証拠金5万円の払い込みをした。
しかしY社より上記新株割当通知の撤回があり、申込証拠金の払戻もなされた。
Xより上記撤回の無効主張及び株式引渡請求をした。
第1審・原審ともにXが敗訴した。
Xは上告した。
上告理由は、以下のようなものであった。
株主に新株引受権を与えるか否かは取締役会の自由に決定しうるところであるが、一旦株主名簿上の株主に新株引受権を与えることとなった場合は、前商法280条の4の規定によって取締役会において任意勝手にこれを改廃することは許されない。
これは、株主関係の画一的処理を目的とする名義書換制度を設け、株主名簿の備置、閲覧謄写等公示主義を徹底する以上、譲受人が名義書換請求をしたか否かによって解釈を異にすることは許されない。
その請求は会社と請求人との間ではあるいは明確であるかも知れないが、譲渡人その他第三者にとっては不明なことであり公示されないところであり、かかる不明確な事由により解釈を異にすることは法律関係の明確性・画一性を害する結果となる。
<判決理由>上告棄却。
「正当の事由なくして株式の名義書換請求を拒絶した会社は、その書換のないことを理由としてその譲渡を否認し得ないのであり(大審院昭和3年7月6日判決、民集7巻546頁参照)、従って、このような場合には、会社は株式譲受人から名義書換請求があったのにかかわらず、その書換をしなかったときにおいても、同様であると解すべきである。」
「今この見地に立って本件を見るに、AはXから譲り受けた株式につき、前記基準日以前に適法に名義書換をしたのにかかわらず、Y社は過失によってその書換をしなかったというのであるから、右株式について名義書換がなされていないけれども、Y社はAを株主として取り扱うことを要し、譲渡人たるXを株主として取扱い得ないことは明らかなところであり、従って、右基準日に株主であったことを前提として新株式の交付を求めるXの本訴請求を排斥した原審の判断は正当である。
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名義書換失念と新株引受権の帰属・・・
最判昭和35年9月15日(株券引渡請求事件)
民集14巻11号2146頁、判時239号27頁
<事実の概要>
Xは証券会社を通じて昭和23年2月末にY1名義の、同年8月初めにY2名義のA株式会社株式をそれぞれ所得した。
A社は同年7月初めの株主総会に基づき増資を行い、同年9月15日午後4時現在の株主に1株(親株)につき1、4株の割合で新株引受権を与えることとした。
Xは取得した株式につき新株引受権付与の期日までに名義書換を失念していたために、名簿上の株主であるY1・Y2が新株の引受・払込をしてこれを取得した。
XよりYらに対し、払込金額と引換えに上記増資新株の引渡請求(予備的に市場価格と払込金額との差額請求)。
第1審・原審共にXの請求棄却。
Xは上告した。
上告理由は、以下のようなものであった。
新株引受権付与の対象となる株主は、株主名簿上の株主ではなく、あくまで当事者間の株式自体の授受を基準にして決定されるべきであれば、譲渡当事者が新株の市場価格の騰落によって自己に有利な請求をすることになり(実質上の株主は価格上昇した場合にのみ新株引受権の行使・新株引渡を名簿上の株主に求め、逆に名簿上の株主は価格下落の場合に新株の引取りを実質上の株主に求める)、信義則・取引安全を害することになるとするが、親株の市場価格には相当のプレミアムが含まれている場合が常であり、価格下落の危険があれば新株の申込をしなければよいのであるから名簿上の株主である譲渡人に不測の損害を生ずるおそれはない。
<判決理由>上告棄却。
「新株引受についての商法の規定は如何というに昭和25年の改正後のことはともあれ、その改正前は法348条4号により定款に定めのないときは、新株引受権をあたうべき旨及びその権利の内容は株主総会の決議事項とされていた。」
「昭和23年9月15日午後4時現在の株主というは、その日時において実質上株主であるか否かを問わず会社が法的な立場において株主として所遇することのできる者、すなわち株主名簿に登録されていて会社に対抗できる株主という意味であることは疑を容れないところであるから、」「Xにおいて前示譲受株式について会社に右日時までに名義書替手続をすることを失念し遂にこれをしていなかったという以上は同人において右株式につき新株引受権を取得するに至らなかったものであること言をまたないところであり、そして一方前示のとおり右日時に株主名簿に登録されていて右新株を引受け払い込みを了したというYらはそれぞれ自己の権利として本件株式を取得したものと認めざるを得ない。」
「新株引受権はいわゆる株主の固有権に属するものではなく、前示商法の規定に基づき株主総会の決議によって発生する具体的権利に外ならずかかる具体的権利をどのような方法で株主に与えるやは前示商法の規定がある以上株主総会の任意に決定できるところであるから、その権利帰属者を前示のように一定日時において株主名簿に登録されている株主と限定することは差し支えなく会社の処置として固より適法であり、かかる適法な処置があった以上はXYらとの間に本件株式について前示のような譲渡行為があって、YらからXに対しいわゆる株主権が移転されたからといって、前示新株引受権もこれに随伴して移転したものと解すべきではない。」
「(なお、実質上株主権を取得した者と親株の名義人とが新株の市場価額の上昇又は低落により互に自己の有利な請求をすることを許すときは、信義則を紊(みだ)り、取引の安全を害するに至ることのあることは、原判決の是認した第1審判決の判示するとおりである)。」
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