保全処分の担保取消決定申立・・・

保全処分の担保取消決定申立・・・

家事事件において供与された担保の取消決定申立事件は、家事雑事件です。

①申立権者

担保提供者です。

②管轄

担保の提供を命じた家庭裁判所です。

③添付書類

担保取消事由を証する書面

④審理手続

供託者が供託物を取り戻すには、その供託原因が消滅したことを証明しなければなりません。

審判前の保全処分事件の申立人が提供した担保の供託原因が消滅したことは、担保取消決定によって証明します。

仮執行宣言付判決に基づく強制執行が停止された後、判決確定前に債務者に破産宣告がされた場合において、強制執行停止のために立てた担保につき、破産宣告当時既に強制執行が完了していれば破産宣告により強制執行が遡って失効し、完了した強制執行を改めて失効させるということはないから、仮執行により債権を回収していたとすれば、その後に債務者に破産宣告があったとしても抗告人において回収したものを破産財団に返還すべき必要はないのであり、そうすると、仮執行停止がなければ、仮執行により回収し得る分は終局的に回収・満足を得たのであるから、抗告人において、仮執行停止によりその回収が遅延したという損害はなお発生し、消滅せず、その損害を填補すべき担保について、その事由は消滅しないとして、原裁判所がした担保取消決定を取消して、その申立を却下した事例があります。

担保取消しを求めることができる場合は、次の通りです。

本案審判が確定したとき又は被担保債権に対する損害賠償請求訴訟において担保権利者敗訴の判決が確定したときには、担保提供者が、右裁判の謄本及びその確定証明書によって、供託原因の消滅したことを証明します。

担保取消についてについて担保権利者が同意した場合には、同意書によってこれを証明します。

本案審判の申立が却下された場合又は申立人がその申立を取下げた場合、担保権利者の担保に対する賠償請求権の行使が可能な状態となっています。

このような場合に、担保提供者は、家庭裁判所に対して権利行使催告の申立をすることができます。

担保権利者が催告期間内に権利行使しなかったときは、担保取消に同意したものとみなされます。

権利行使催告の結果に基づいて担保の取消決定がされ、右期間経過後であっても、担保権利者が同決定の確定前に権利行使をして、これを証明した場合には、いったん担保取消に同意したものとみなされた効果は消滅すると解して、原決定を取消して、担保取消の申立を却下した事例があります。

担保の事由がやんだこと、又は担保権利者の同意があったことの証明が成立したとき、家庭裁判所は、担保取消決定をします。

担保提供者は、担保取消決定が確定した後、その正本及び確定証明書を供託書を供託所に提出して供託物の払い渡しを受けます。

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権利行使催告申立・・・

権利行使催告申立書は日記簿に登載して受付がされます。

①申立権者

担保提供者です。

②管轄

本案審判申立事件が係属した家庭裁判所です。

③催告手続

家庭裁判所は、本案審判申立事件が完結していると認めた場合、期間を定めて、その期間内に権利を行使すべき旨の催告書を担保権利者あてに送達します。

権利行使をすべき期間は、事案の内容、担保権利者の住所と裁判所の所在場所との遠近その他の事情を考慮して、家庭裁判所が相当の日数を定めます。

④権利の行使

担保権利者は、催告書の送達を受けたときは、催告期間内に担保権利者を相手として損害賠償などの請求をします。

この権利行使は、裁判上の請求であることを要します。

担保権利者が催告期間内に権利行使をしないときは、担保取消に同意したものとみなされ、家庭裁判所は、担保提供者の申立に基づき担保取消決定をします。

この場合、担保権利者は、担保取消決定に対して即時抗告することができません。

権利行使催告の結果に基づいて担保の取消決定がされ、右期間経過後であっても、担保権利者が同決定の確定前に権利行使をして、これを証明した場合には、いったん担保取消に同意したものとみなされた効果は消滅すると解して、原決定を取消して、担保取消の申立を却下した事例があります。

権利行使催告とは、担保提供者が担保権利者に対し「担保を取り下げたいんだけど,もし,損害が生じているんだったらそう言ってくださいね、権利を行使されるんなら早くしてね」と言うことです。

一定の期間(権利行使届出期間)が経過しても相手方から文句が出ない。

保全によって損害を被っていないので、損害賠償等を請求しない。

担保を積んでおく必要はないので、担保取消決定をしてください。

というようなことをいいます。

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解放金還付許可申立・・・

解放金還付許可の申立は、日記簿に登載して受付がされます。

①申立権者

審判前の保全処分の債務者です。

②管轄

審判前の保全処分申立事件が係属した家庭裁判所です。

仮差押等審判前の保全処分の債務者は、保全処分申立の取下げ、本案審判において債務者の申立が認容されたなどの場合、供託した執行取消しの解放金の還付を受けることができます。

家事審判法第15条の3 第9条の審判の申立てがあつた場合においては、家庭裁判所は、最高裁判所の定めるところにより、仮差押え、仮処分、財産の管理者の選任その他の必要な保全処分を命ずることができる。
2 前項の規定による審判(以下「審判前の保全処分」という。)が確定した後に、その理由が消滅し、その他事情が変更したときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
3 前2項の規定による審判は、疎明に基づいてする。
4 前項の審判は、これを受ける者に告知することによつてその効力を生ずる。
5 第9条に規定する審判事件が高等裁判所に係属する場合には、当該高等裁判所が、第3項の審判に代わる裁判を行う。
6 審判前の保全処分(前項の裁判を含む。次項において同じ。)の執行及び効力は、民事保全法(平成元年法律第91号)その他の仮差押え及び仮処分の執行及び効力に関する法令の規定に従う。この場合において、同法第45条中「仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所」とあるのは、「本案の審判事件が係属している家庭裁判所(その審判事件が高等裁判所に係属しているときは、原裁判所)」とする。
7 民事保全法第4条、第14条、第15条及び第20条から第24条までの規定は審判前の保全処分について、同法第33条及び第34条の規定は審判前の保全処分を取り消す審判について準用する。

(仮差押解放金)
民事保全法第22条 仮差押命令においては、仮差押えの執行の停止を得るため、又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めなければならない。
2 前項の金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。

供託事由の消滅原因が、保全処分申立の取下げの場合は、すでに取下げ済みのときを除いて債権者から交付を受けた保全処分申立の取下書を添付し、本案審判において債務者の申立が認容された場合は、審判書及び確定証明書を添付します。

裁判所の還付許可があった場合、申立人は供託原因消滅証明書の交付を受けて、解放金の取戻しを受けます。

仮差押解放金とは、債務者が、民事保全の仮差押の執行の停止又は取消を得るために供託する金銭のことで、この金額は、裁判所が決定します。

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財産管理者の権限外行為許可審判申立・・・

財産の管理者が民法103条に定めた権限を越える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得てこれをすることができます。

(権限の定めのない代理人の権限)
民法第103条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
1.保存行為
2.代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

財産の管理者が選任された場合も遺産分割事件の相続人は、自らの財産についての処分権を失わないものと解されています。

家庭裁判所に対する家事審判法15条の3、16条、民法28条に基づく財産の管理者の権限外行為の許可の申立は、家事雑事件です。

(管理人の権限)
民法第28条 管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

家事審判法第15条の3 第9条の審判の申立てがあつた場合においては、家庭裁判所は、最高裁判所の定めるところにより、仮差押え、仮処分、財産の管理者の選任その他の必要な保全処分を命ずることができる。
2 前項の規定による審判(以下「審判前の保全処分」という。)が確定した後に、その理由が消滅し、その他事情が変更したときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
3 前2項の規定による審判は、疎明に基づいてする。
4 前項の審判は、これを受ける者に告知することによつてその効力を生ずる。
5 第9条に規定する審判事件が高等裁判所に係属する場合には、当該高等裁判所が、第3項の審判に代わる裁判を行う。
6 審判前の保全処分(前項の裁判を含む。次項において同じ。)の執行及び効力は、民事保全法(平成元年法律第91号)その他の仮差押え及び仮処分の執行及び効力に関する法令の規定に従う。この場合において、同法第45条中「仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所」とあるのは、「本案の審判事件が係属している家庭裁判所(その審判事件が高等裁判所に係属しているときは、原裁判所)」とする。
7 民事保全法第4条、第14条、第15条及び第20条から第24条までの規定は審判前の保全処分について、同法第33条及び第34条の規定は審判前の保全処分を取り消す審判について準用する。

家事審判法第16条 民法第644条、第646条、第647条及び第650条の規定は、家庭裁判所が選任した財産の管理をする者について、同法第27条から第29条までの規定は、第15条の3第1項の規定による財産の管理者について準用する。

①申立権者

財産の管理者です。

②管轄

本案審判事件が係属している家庭裁判所です。

③添付書類

権限外行為となる事項を証明する資料

④審理手続

許可を求める事項が財産の管理者の権限を越えるものであるかどうか、及びその行為の必要性が審理されます。

権限外行為許可の審判は、財産の管理者に告知されることによって効力を生じます。

財産管理者の権限外行為許可の申立は、審判前の保全処分に付随する申立ですが、保全処分そのものの申立ではないから、この申立に関する審判に対しては不在者の財産管理人の権限外行為許可の申立に関する審判と同様に不服を申し立てることはできないとされます。

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