遺贈の対抗要件 債権・・・

遺贈の対抗要件 債権・・・

貸金債権の特定遺贈は、債権譲渡の場合と同様の対抗要件を備えなければ、受遺者はその権利を債務者に対抗できません。

譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人が右特約の存在を知り、又は重大な過失により右特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が右譲渡について承諾を与えたときは、右債権譲渡は譲渡の時に遡って有効となるが、民法116条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできず、債務者の債権譲渡の承諾が右債権に対する国の滞納処分後にされたときは、国に対して債権譲渡の効力を主張できないとされます。

(無権代理行為の追認)
民法第116条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

遺産分割による債権の取得につき自己の法定相続分を超えて取得した者が債務者に対してその履行を求めるには、債権譲渡についての対抗要件である債務者に対する通知、債務者の承諾を得ることが必要です。

受贈者が受贈建物の賃借人に対して、贈与前の延滞賃料等の支払を請求する場合、民法467条1項所定の通知又は承諾は、債権の譲受人が債務者に対して債権を行使するための積極的な要件ではなく、債務者において通知又は承諾の欠けていることを主張して譲受人の債権行使を阻止することができるにすぎないものと解するのが相当であり、賃借人は原審において右通知又は承諾の欠けていることを主張しなかったから、前記延滞賃料等について譲受人の請求を認容した原審の判断は正当としました。

(指名債権の譲渡の対抗要件)
民法第467条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

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停止条件的遺贈の遺言・・・

条件は、法律行為の効力の発生、消滅又は変更を将来の不確定の事実の成否にかからせた付款ですが、遺贈にも条件を付すことができます。

付款(ふかん)とは、法律行為又は行政行為の効果を制限するための定めで、民事実体法上は期限及び条件を指します。

遺贈の効力の発生を条件にかからせた場合に、その遺贈を停止条件付遺贈といいます。

停止条件付遺贈の受遺者は、遺言者が死亡したときに停止条件付の権利を取得します。

現実に、遺贈の履行を請求できるのは条件が成就した時です。

(遺言の効力の発生時期)
民法第985条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

自筆証書遺言の場合、それが停止条件付の遺言か否かは、遺言の要式性から考えて証書の記載内容自体のみに即して判断すべきものであると解して、遺言が丙に非行のあることを停止条件としていることは認められないとした事例があります。

停止条件付遺贈の受遺者がその条件成就前に死亡したときは、遺贈の効力を生じません。

この場合、遺言者がその遺言に別段の意思表示をしているときは、その遺言者の意思が優先します。

(受遺者の死亡による遺贈の失効)
民法第994条 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2 停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

遺言者の死亡前に条件が成就したときは、その停止条件付遺贈は、条件のついていない遺贈となります。

遺言者の死亡前に条件の成就しないことが確定しているときは、その停止条件付遺贈は無効となります。

(既成条件)
民法第131条 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
2 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。
3 前2項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第128条及び第129条の規定を準用する。

遺言者は、条件成就の効果をその条件成就前に遡及させる旨を遺言で定めることができますが、遺言者の死亡前に遡及させることは許されません。

(条件が成就した場合の効果)
民法第127条 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
3 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

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解除条件付遺贈の遺言 ・・・

遺贈の効力の消滅を条件にかからせた場合に、その遺贈を解除条件付遺贈といいます。

解除条件付遺贈の受遺者は、遺言者が死亡したときに解除条件付の権利を取得し、条件が成就したときに遺言は効力を失います。

(遺言の効力の発生時期)
民法第985条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

(条件が成就した場合の効果)
民法第127条 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
3 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

解除条件付遺贈の受遺者は、条件成就によって権利を取得する相続人の利益を害することができません。

(条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止)
民法第128条 条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。

(条件の成否未定の間における権利の処分等)
民法第129条 条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

不動産の遺贈の場合、相続人は、第三者に対抗するため、遺贈が解除条件付である旨の登記をしておくことが必要です。

遺言者の死亡前に条件が成就したときは、その解除条件付遺贈は無効となります。

(既成条件)
民法第131条 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
2 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。
3 前2項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第128条及び第129条の規定を準用する。

遺言者の死亡前に条件の成就しないことが確定しているときは、その解除条件付遺贈は、条件のついていない遺贈となります。

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期限付遺贈の遺言・・・

期限は、法律行為の効力の発生、消滅、又は債務の履行を将来発生することの確実な事実の発生にかからせた付款です。

遺贈にも期限をつけることができます。

しかし、推定相続人廃除の遺言などは、停止条件は付することはできますが、始期を付することはできません。

(遺言による推定相続人の廃除)
民法第893条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

期限となる事実は将来到来することの確実なものでなければなりません。

到来の時期が確実なものを確定期限といい、必ず到来はするがその時期の不確実な期限を不確定期限といいます。

遺贈の効力の発生又は遺贈義務の履行につき、期限を付した遺贈を始期付遺贈といいます。

この場合、受遺者は、遺言者が死亡した時に始期付の権利を取得しますが、遺贈の効力発生に始期が付されている場合にはその効果は直ちに発生しません。

また、遺贈義務の履行に始期を付されていている場合には期限到来まで履行を請求することができません。

(期限の到来の効果)
民法第135条 法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。
2 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。

始期付遺贈の受遺者については、停止条件付遺贈の受遺者と同様に民法128条、129条を類推適用されます。

(条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止)
民法第128条 条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。

(条件の成否未定の間における権利の処分等)
民法第129条 条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

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