保護命令の発令と面接交渉・・・
離婚の事案
夫と妻は、長男を出産し、同月に婚姻届出をした。
夫は、妻に対して、大声で怒鳴りつけ、暴力を振るうことがあった。
夫と妻は、別居し、妻は離婚調停の申立を行い、これが不調となったため、離婚訴訟を提起し、離婚、長男の親権者を妻と定める判決が言渡されたが、夫は、控訴、上告している。
妻の申立に基づき、夫に対して配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律に基づく保護命令が発令された。
夫は、面接交渉調停申立と長男に対する嫡出子否認調停申立をなし、面接交渉調停が本件審判に移行された。
夫は、長男と面会するため、突然保育園を訪問している。
離婚の判例
裁判所は、以下のように述べて、夫の申立を却下した。
一般に、父母が別居中の場合も、未成熟子が別居中の親と面接・交流の機会を持ち、親からの愛情を注がれることは、子の健全な成長、人格形成のために必要なことであり、面接交渉の実施が子の福祉を害する等の事情がない限り、面接交渉を行なうことが望ましい。
しかし、真に子の福祉に資するような面接交渉を実施するためには、父母の間の信頼・協力関係が必要である。
しかるに、本件においては、妻が夫の暴力等を理由に提起した離婚訴訟が継続しているのみならず、保護命令が発令されており、夫と妻は極めて深刻な紛争・緊張状態にあり、従来からの経緯に照らせば、このような深刻な対立状態が早期に解消されることは期待しがたいとみるのが相当である。
そうすると、未成年者はまだ2歳の幼児であるから、このような状況下で面接交渉を行なえば、父母間の緊張関係の渦中に巻き込まれた未成年者に精神的な動揺を与えることは避けられず、未成年の福祉を害するというべきである。
また、夫は、現実に、未成年者の通う保育園に出向いて面会を強行しているが、その態様は一方的で配慮を欠くものであったといわざるを得ず、未成年者も面会後精神的に不安定になるという反応を示している。
さらに、夫は、本件と同時に未成年者に対し嫡出子否認調停事件を申し立てており、父親としての純粋な愛情に基づく面接交渉の実施を期待できるのか疑問を抱かざるをえない。
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面接交渉調停の変更・・・
離婚の事案
妻と夫は、長男及び長女の親権者を妻と定めて協議離婚をした。
夫の申立による面接交渉調停において、妻は、夫に対し、夫が子らとそれぞれ毎月1回第2土曜日に面接交渉することを認め、特別な事情がない限り、夫は面接交渉の日時を変更してはならないこと等を内容とする調停が成立した。
夫から面接交渉が履行されていないとして、履行勧告の申立がされた。
妻は、子らの現在の状況や意向を反映した新しい面接交渉のルールを作りたいと主張して、面接交渉の調停申立をなし、本件審判に移行した。
離婚の判例
①原審判は、以下のように述べて、以下のように前調停を変更した。
夫は、平成16年3月31日までの間、子らと面接交渉をしてはならない。
同年4月1日以降、子らから夫に対して面接を希望する旨の連絡があった場合には、妻は、夫に対し、夫が子らと面接することを認める。
その具体的日時、場所及び方法等については、子の福祉に配慮して、当事者間で事前に協議して定める。
妻は、子らが夫に対して連絡することを妨げるようなことをしない。
妻と夫間の感情的対立が深刻であること、夫は、書面等を通じて述べる内容に照らしても、もっぱら、親権者である妻の監護方針を自己の方針に沿うように是正させるために面接交渉を求めていると認められること、本件調停等の手続き中においても、家庭裁判所調査官から指摘等があるにもかかわらず、自己の感情の赴くままに不適切な面接交渉を繰り返していること、夫は、面接交渉が子の福祉を図るためのものであるという、面接交渉を理解する上で最も重要な視点に欠けているといわざるを得ないことなどの諸点に照らせば、現状において夫に面接交渉を認めた場合、親権者である妻による監護養育を阻害し、子らの精神的安定に障害を与えるといわざるを得ず、子らの福祉のためには、前回調停の調停条項を変更して、当面の間夫による面接交渉を認めないこととするのが相当である。
そして、その具体的な期間等については、妻においても、適切に行なわれれば、子らの福祉上面接交渉は必要であり、子らが臆することなく十分に自己の意思を夫に対して表明できるような時期になれば、子らの情緒が不安定になることもなく面接交渉に臨めるであろうと考えていると認められるところ、子らの意向も考慮すれば、平成16年3月末日までの間面接交渉を一切認めないこととし、同年4月以降も、子らから夫に対して面接を希望する旨の連絡があった場合に限り、面接交渉を認めることとするべきであるが、面接に当たっては、事前に、その具体的方法等を当事者間で協議して決めるのが相当である。
②抗告審も以下のように述べて、原審判を維持した。
本件においては、前回調停において面接交渉の内容・回数等につき取り決めがされたにもかかわらず、現実には夫がこれを遵守せずに不規則な形で面接交渉が行なわれていたことに端を発し、また、主として長男の教育方針に関する妻と夫の見解の相違等から、両名の間の感情的対立が激化して深刻な軋轢を生じている状況にあり、このような両親の間の感情的対立が子らに過度の精神的ストレスを生じさせる欠陥なっているであろうことは容易に推認できるとことである。
また、夫が親として子らの教育に関して関心を抱き、相談に乗ったり意見を述べたりすること自体は問題とするには当たらないけれども、夫はそれのみにとどまらず、親権者である妻の監護教育方針が自己のそれと異なることに強い不満を抱き、妻の監護教育方針に格別不適切なところや問題視すべき点があるわけでもないのに、妻の監護教育方針を自己のそれに沿うようにさせようとして介入し、専らそのための手段として子らとの面接交渉を求めている傾向が窺えること、夫は、家庭裁判所調査官から、調停係属中に待ち伏せのような形で面接交渉を行なうことは不適切である旨の指摘があったにもかかわらず、これを無視して長男をバス停で待ち伏せるなどして面接交渉を繰り返していること、このことに加えて夫の審判手続での主張等からみると、夫は、面接交渉が子らの福祉に適うものでなければならないという基本的な視点に欠ける面があることが認められる。
これらの諸点に徴すれば、現状において夫と子らとの面接交渉を認めると、親権者である妻による有効適切な監護教育に支障が生じ、子らの精神的安定に害を及ぼす恐れが強いというべきであるから、子らの福祉のために、前回調停条項を変更し、当分の間は面接交渉を認めないことするのが相当である。
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宿泊つきの面接交渉の可否・・・
離婚の事案
妻と夫は、婚姻し、長男、長女が生まれた。
妻と夫は、子らの親権者を夫と定めて協議離婚をした。
協議離婚に際して、夫は、妻に対して、子らと面接交渉をすることを認めており、1ヶ月に1回、夫が妻の実家に子らを連れてきて、同所で子らを妻に引渡し、1泊した後、翌日の夕食後に、夫が迎えにくるという方法で面接交渉が行なわれていた。
夫は、面接交渉を拒否するようになった。
妻は、面接交渉の調停申立をなし、調停は不成立となり、本件審判に移行した。
妻と夫は、主に宿泊つきの面接交渉を認めるか否か等で意見が対立していた。
なお、原審判後、夫は他の女性と再婚し、女性は子らと養子縁組した。
離婚の判例
①原審は、月1回の面接交渉とそのうち年2回は宿泊つき面接交渉等を認める審判を下した。
②抗告審は、以下のように述べて、原審判を変更し、夫及び女性は下記の面接要領記載の内容で面接交渉させる義務があるとした。
なお、女性が子らと養子縁組したことにより、家事審判法12条により、職権で女性を利害関係人として審判に参加させた。
離婚後約10ヶ月間は、宿泊つきで面接交渉が実施されていたことは、上記のとおりであるが、現在においては、これまでとは事情が異なる。
すなわち、現在は、夫及び女性は、その共同親権の下で子らとの新しい家族関係を確立する途上にあるから、生活感覚やしつけの違いから、子らの心情や精神的安定に悪影響を及ぼす事態はできるだけ回避しなければならず、宿泊つきの面接交渉は、そのような危惧が否定できないというべきであるから、現段階においては避けるのが相当である。
土曜日には、子らを妻に引き渡す適切な者が見当たらず、また、従前の経緯からすれば、夫方で女性から妻に子らを引き渡す方法も相当でないという物理的な理由も考慮しなければならない。
今後、日帰りによる面接交渉が円滑に実施され、子らに新しい生活習慣が身に付き、上記の恐れが払拭された時点で、改めて、宿泊つきの面接交渉の実施の可否が検討されるべきである。
面接要領
1、面接回数、日時
(1)回数 平成18年2月から、毎月1回
(2)日時 第4日曜日の午前11時から同日午後4時の間(時間厳守)
2、子らの引渡し方法
夫及び女性は、上記面接開始時に、京都府****所在の**駐車場において、妻に子らを引き渡し、妻は、上記面接終了時に、同所において、子らを夫及び女性に引き渡す。
3、未成年者らに対するプレゼント
夫及び女性は、妻が、子らと面接交渉するに際し、誕生日、クリスマス、正月のプレゼントを渡すことを認めなければならない。
この場合におけるプレゼントの価格は、子らの年齢等に照らし、社会通念上相当な限度に留めるものとする。
4、面接日等の変更
当事者は、その協議により、面接実施の日時、子らの引渡し場所、面接の方法など必要な事項を変更することができる。
5、学校行事等への参加
妻は、子らに関する保育園や学校の行事に参加してはならない。
夫及び女性は、子ら上記行事に参加した場合において、その状況を撮影したビデオ、写真等があるときは、適宜、妻に提供するものとする。
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