離婚訴訟における養育費の附帯申立・・・

離婚訴訟における養育費の附帯申立・・・

離婚の事案

妻と夫は、長女の誕生と共に婚姻届をし、長男も生まれた。

夫は、職業が安定しなかったため、妻は、借金の返済と生活費を補うため夫の同意を得てキャバレーにホステスとして勤めたが、夫は、些細なことから妻に暴力を振るった。

妻は、再び暴力を振るったときは離婚することを夫に承諾させ離婚届を作成したが、夫はまた暴れたので、妻は家を出て、離婚届を提出した。

しかし、夫は、その1週間後に妻に無断で婚姻届を出すと共に、家庭裁判所に調停を申し立てた。

調停の結果、今後暴力を振るわない、暴行した場合は、離婚をすると約束して、妻は家に帰った。

二男が生まれ、夫の暴力が再発し、結局妻は子供3人を連れて家を出た。

なお、二男は、その後夫のもとに戻ったが、再度妻の下に戻った。

妻は、離婚、二男の親権者を妻と指定する、慰謝料として700万円、二男の養育費として月5万円等を請求する訴訟を提起した。

夫は、離婚、二男の親権者を夫と指定する、慰謝料として700万円を請求する反訴を提起した。

離婚の判例

①一審は、妻と夫の婚姻生活は、夫の妻に対する暴行、性交渉の強要、妻の行動に対する邪推、生活費を渡さないことにより破綻したと認定して、妻の請求をいずれも認めたが、慰謝料は300万円とした。

②控訴審も、一審判決を支持した。

そして、離婚訴訟と共に子の養育費の支払いを求める附帯請求についてもこれが適法であるとした。

③最高裁も以下のように述べて、離婚訴訟と共に子の養育費の支払を命ずることが適法であるとした。

人事訴訟手続法15条1項は、裁判上の離婚に際し、子の監護をすべき者その他子の監護につき必要な事項を定めるものとしている民法771条、766条1項の規定を受け、裁判所が、申立により離婚訴訟の判決で右の事項を定めることができるものとしている。

(協議上の離婚の規定の準用)
民法第771条 第766条から第769条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。

(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
民法第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
2 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。
3 前2項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

そして、民法の右条項は、子の監護をする父母の一方がその親権者に指定されると否とにかかわらず、父母の他方が子の監護に必要な費用を分担するなどの子の監護に必要な事項を定めることを規定しているものと解すべきである。

したがって、離婚訴訟において、裁判所は、離婚請求を認容するに際し、子を監護する当事者をその親権者に指定すると否とにかかわらず、申立により、子の監護に必要な事項として、離婚後この監護をする当事者に対する監護費用の支払を他方の当事者に命ずることができるものと解するのが相当である。

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調停成立後の養育費の事情変更・・・

離婚の事案

妻と夫は、婚姻し、長女、二女が生まれた。

妻と夫は、未成年者両名の親権者をいずれも妻と定めて調停離婚した。

この調停の際、夫は、無職で収入がなく、未成年者らの養育費を支払えないと主張したため、妻と夫は、今後相互に名目のいかんを問わず、金銭上、財産上の請求をしない旨を合意した。

妻は、夫に対して未成年者らの養育請求の調停申立をしたが、夫が期日に出頭せず調停不成立となり、本件審判に移行した。

夫は、離婚後トラック運転手として稼動していたが、入院した後、当時勤務していた会社を退職し、その後、他の会社に運転手として勤務している。

離婚の判例

裁判所は、以下のように述べて、夫に対して、昭和63年1月から未成年者がそれぞれ成年に達するまで1にんあたり1ヶ月3万4563円の養育費の支払いを命じた。

妻と夫は、前記離婚に際し、未成年者らの監護費用は妻において負担する旨合意したものと認めることができ、こうした合意も未成年者らの福祉を害する等特段の事情がない限り、法的に有効であるというべきである。

しかしながら、民法880条は、「扶養すべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。」と規定しており、同規定の趣旨からすれば、前記合意後に事情に変更を生じたときは、妻は夫にその内容の変更を求め、協議が調わないときはその変更を家庭裁判所に請求することができるといわなければならないとし、本件における事情変更の有無については、遅くとも本件申立後である昭和63年1月には夫は経済的に安定した状態となり、反面、妻には、同人と未成年者らの最低生活費をも下回る基礎収入しかなく、事情に変更を生じ、妻が夫に対して前記合意の変更を求めることができると判断した。

(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)
民法第880条 扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。

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養育費の私立高校入学費用の支払い・・・

離婚の事案

妻と夫は、婚姻し、双子の長女、二女と三女、四女が生まれた。

妻と夫は、4人の子の親権者をいずれも夫と定めて協議離婚した。

離婚後、4人の子は夫が監護養育していたが、本件未成年者は妻と暮らしたいとの気持ちから妻方に移り住み、妻がその監護養育に当たっている。

本件未成年者の養育費として、未成年者が中学生の間は月3万円、高校入学から高校卒業まで月4万円、高校入学に要した費用の内金として25万円の支払を求める調停申立をし本件審判に移行した。

離婚の判例

裁判所は、以下のように述べて、本件未成年者の私立高校の入学費用のうち4万8013円と、高校卒業時まで月4万円等の支払を認めた。

父母が離婚している場合に、親権者である母が未成年者に高等学校、あるいは大学等義務教育を超える教育を受けさせることを、費用負担者である父親に相談することなく一方的に決め、その費用を父親に請求することは当然には認められず、ただ、父親の資力、社会的地位等からみて、父親において未成年者のため義務教育を超える教育費を負担することが相当と認められる場合においてのみ、親権者である母はその費用を父親に対し請求しえるというべきである。

これを本件についてみるに、未成年者が私立高校に進学するにつき夫の同意を得ていなかったとはいえ、未成年者が公立高校に進学することは夫においてもこれを認めていたのであるから、夫は未成年者の高等学校入学に要した費用の1部を負担する義務があるというべきである。

そして、その負担額は、長女、二女ともに公立高等学校を卒業していること、前記認定の夫の収入からみて、未成年者を私立高校に進学させることは、夫にとってかなりの負担となること、妻は、夫が当初から未成年者を私立高校ではなく公立高校に進学させることを強く主張していたにもかかわらず、夫の意向を無視して私立高校に進学させたこと等を考慮すると、夫に対し、未成年者が公立高校に進学しておれば支出したであろう入学費用の額を基準にし、これを前記認定の妻と夫の各可処分所得割合によって算定した額を負担させるのが相当である。

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